自由民権運動――〈デモクラシー〉の夢と挫折 (岩波新書)

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著者 : 松沢裕作
  • 岩波書店 (2016年6月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316091

自由民権運動――〈デモクラシー〉の夢と挫折 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

  • 自由民権運動について全く詳しくなかったが、戊辰戦争で活躍した、これまで支配層ではなかった人たちが政治や支配層(という言い方が適切かわからないが)に「割りこむ運動」であった、というのは面白かった。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  戊辰戦後デモクラシー
    第2章  建白と結社
    第3章  「私立国会」への道
    第4章  与えられた舞台
    第5章  暴力の行方
    終章   自由民権運動の終焉

    <内容>
    「おわりに」に著者が書くように、大変クールな自由民権運動の本。ただ教科書よりもリアルな話がうまく盛り込まれていて、読んでいて違和感を感じなかった。板垣退助や後藤象二郎の民権運動への目論見(「わりこむ運動」と表記)。博徒や下層民の民権運動への幻想(「終章」の最後に書かれた秋田県のエピソードが哀しい…)。江戸時代からわずか10年程度しかたっていない中、今の我々が考えるような「民主主義」が日本に根付いていたわけがなく、農民層は農民層の士族層は士族層の、淡い憧れから民権運動は動いていた感じがよくわかった。これを授業に組み込むのはなかなか難しいが、少しずつ反映させられたらいいかな?!

  •  自由民権運動の研究は1980年代の「民権百年」運動をピークに長らく停滞している(とあえて断言してしまう)が、本書はそうした停滞を打ち破る可能性を感じる労作である。戊辰戦争による近世身分社会の解体に起因する人びとの帰属不安や承認欲求を原動力とする社会変革運動とみなす視点は、明らかに今日の新自由主義下の社会混迷(高度成長期に形成された社会システムの崩壊、貧困・格差の拡大)を投影しているが(氷河期世代の著者の問題意識が垣間見える)、自由民権運動を把握する際にこれまでネックとなった「復古」的要素や「堕落」・「逸脱」と評されがちな事象をも正当に評価する意義を有している。秩父事件を運動の終点とし、大同団結運動以降の動向と切り離している点には異論もありえようが、自由民権運動を狭義の政治運動ではなく、近世近代移行期の社会流動による諸潮流の結節点とみる本書の視点に従えば当然の帰結であろう。

  • 近代史を復習できた。自由民権運動は全共闘運動や、国会前デモに通じるようなところがあるなと思った。

  •  「自由民権運動」は、学校で習うイメージで言えば、西南戦争の後に言論の力で戦い、議会開設という民主主義の果実を得たという、現代的な、崇高なもののように思える。とりわけ、昭和に入って戦争に突き進んだ歴史を闇とすれば光として描かれやすい歴史である。
     しかし、実際はどうか。著者は、板垣・星といった運動エリートではなく、地方で展開された集会の議論をベースにこのような民権運動像を描き出す。そもそも著者は、民主化・近代化に果たした自由民権運動の役割をそれほど評価していない。あくまで、政府の必要というかなりドライな見方をする。そして、著者は、運動の中に先進的な思想ではなく、身分制度復活という復古理想的なものを取りだす。自由民権運動に関わった人々はごろつきであり、暴動を一つの手段として、経済的利益を求めたのである。
     運動とは理想の元に一枚岩なのではなく、むしろ現世的な利害のもとでより多くの人をどう巻き込んでいくかにかかっていることを示す一冊。

  • 長らく停滞していた自由民権運動研究に新風を吹き込む一書。ポスト身分制社会をめぐる、新しい社会構想をめぐる闘争として民権運動を読み解くというのは、実に魅力的な歴史像である。

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