- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004317272
感想・レビュー・書評
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岩波新書 梯久美子
原民喜 の作家人生を 死、愛、孤独をキーワードとしてまとめた評伝
「原民喜は死によって生きる作家」幼少期における家族の死、愛する妻の死、広島での被爆経験が基調となっているとのこと
この本に書いてある原民喜像と「孤独」が結びつかない。自死の数ヶ月前から友人たちを訪ねたり、17名の人に遺書を書いたり、20才以上年下の祐子との清々しい関係や遠藤周作との親交など 孤独とは無縁に感じる
自死の原因については、明示していない。遺稿「死について」や「永遠のみどり」を読むかぎり、未来に希望を持っているように読める。被爆後遺症やptsdなど精神的な障害はなかったのか?
遠藤周作の日記「原さんさようなら。ぼくは生きます。しかし貴方の死は何てきれいなんだ。貴方の生は何てきれいなんだ」
イエスのみじめな死が弟子たちの胸に突き刺さり、彼らの人生を変えていく〜遠藤周作は、原民喜の死をイエスと重ねていた
原民喜は社会に対して声を上げることをしなかった。細かくかすかな声で、死者のための歌を歌い続けた
個人の発する弱く小さな声が、意外なほど遠くまで届くこと〜それこそが文学のもつ力である
「永遠のみどり」
ヒロシマのデルタに 若葉うづまけ〜ヒロシマのデルタに青葉したたれ
遺稿「死について」
殆どその生存を壁際まで押しやられて〜目も眩むばかりの美しい幻想や清澄な雰囲気が微笑みかけてくる
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某所読書会課題図書: 被爆の現状を作家の立場で詳細に記載した文書は、当初は「原子爆弾」という題名だったが、GHQによる検閲を考慮して「夏の花」と変更されている.さらに俳句の連作もあり、貴重な資料となっている.遠藤周作との交流が原にとって非常に貴重な体験だったと推測するが、祖田祐子さんも含めた行動は荒んだ気持ちをいくらかでも和らげたのではないかと推測する.素晴らしい才能を持った人材が自死によって失われることは非常に残念なことだが、関係した文人たちが彼のことをあらゆる機会に追想しているのは、羨ましくもあり素晴らしいことだと感じた.
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ふむ
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/711793 -
2021年12月24日 夫からのプレゼント。
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20190430 不幸な作家が現実を受け止め、生きさせてもらった人たちのために、詩作を続け、自分の判断で人生を終わらせた。著作に付いては読まないかも知れないが名前は忘れないと思う。
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原民喜の存在感と遠藤周作の存在感。
自死を選びながらも、残された人や未来に明るい希望を確信し託した原民喜。
原民喜として、その生を全うしたのだと思います。
イエスがイエスの生を生き、十字架にかかったように。
久しぶりに一気読みした一冊。
余計な解釈を加える事なく、最後に
「現在の世相と安易に重ねることもまた慎むべきであろうが、
悲しみを十分に悲しみつくさず、嘆きを置き去りにして前に進むことが、社会にも、個人の精神にも、ある空洞を生んでしまうことに、大きな震災をへて私たちはようやく気づきはじめているように思う。
個人の発する弱く小さな声が、意外なほど遠くまで届くこと、そしてそれこそが文学のもつ力であることを、原の作品と人生を通して教わった気がしている。」
と記し、謝辞をもって締めくくっているが、
非常に静かながらも力強く印象深い評伝であった。
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原民喜と遠藤周作の交流について知ることができ、興味深く読んだ。遠藤周作の描いたイエス像と原民喜の姿の重なり合いについての指摘にはなるほどと思わされた。
「うん、見ようかね」と、少女が差し出した絵を長い間じっと見つめる、ありし日の原民喜の姿。その姿を回想する遠藤周作。
また、喫茶店でのエピソード。 -
恥ずかしながら、この歳になるまでというかこの新書を本屋さんで手に取るまで、この作家について知らなかった。読み終えて、そのことをとても恥ずかしいと思った。そして、この作家の作品をきちんと読んでみようと思うようになった。非常に洗練された評伝になっていると思います。
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栗林中将の本がよかったので、本書を手に取る。
冒頭から話が重すぎて暗すぎて、読み進めるのがほんとうに辛いのだが、遠藤周作さんやタイピストのお嬢さんが登場してくる最後の章あたりから、モノクロのトーンだった話が急にカラーへと変わるように生き生きとしてくる。
私情を盛り込んだり、事実をことさら美化したりしないで書く著者ではあると思うが、あとがきには大きな震災をへて現代に生きる我々に向けたメッセージが伝わってきます。