リベラルアーツの学び――理系的思考のすすめ (岩波ジュニア新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005008711

感想・レビュー・書評

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  • Liberal artsのリベラルとは「自由」、アーツとは「学芸」のこと。ローマ時代の紀元前1世紀にリベラルアーツ教育は確立したそうで、語源はギリシャ語のエンキュクリオス(円環的)・パイディア(自由人)。
    本書の表紙の絵で示されている通り、自由7科として語系3学(文法・論理・修辞)と数学系4学(算術・幾何・天文・音楽)が円形状に構成され、各分野を広く網羅して学ぶのがリベラルアーツ。

    本書の副題にもあるが、「理系的思考のすすめ」として、数学を軸にリベラルアーツについて紹介されていた。リベラルアーツらしい、広く網羅して学ぶという観点を期待して本書を読むと内容にズレがある。
    (※本書中に載っていた「羅生門」の国語の試験問題をどこかで読んだことがあるなと思っていたら、同じ著者の「論理的に考え、書く力」の内容と被っていた。こちらの本も題名と中身がズレていた。)

    本書の主な感想は、以下の2点。
    ①日本の受験のように暗記や解答に導くためのテクニックを身につけるのではなく、じっくりと論理的に考える思考が大切とのこと。
    個人的な意見だか、フランス人は理屈っぽく思考を巡らすのが好きな印象がある。バカロレアの論述試験で、思考を確立している影響かもしれない。従来の日本の受験はインプットが主軸であり、自分なりの答えを出すアウトプットの教育がこれからの社会を生き残るのに重要だと思った。

    ②数学好きと数学嫌いな学生が友人になるような、価値観の異なる学生同士が出会う場が提供されるのが、リベラルアーツの利点。
    同じ学部の学生は、思考が似ている者同士が集まってしまうので、広く分野を網羅するリベラルアーツの思想に私は賛成。
    私自身、大学ではデザイン専攻でデザインの授業ばかりだったが、社会人になると経済学(マーケティング)や工学(製造の工法)など分野外の知識が求められ、文理の垣根を超えた教育の必要性を感じている。将来、どの知識が役に立つか分からないし、初めから絞るのは勿体ないので、学生さんには是非幅広く学んでもらいたい。

  • 世界共通のツールは数学と言えるのかもしれません。数学的素養をそれなりに習得したならば、著者の話についていくのに難儀はしなかったのかもしれないなぁ。
    まだまだ、修行が足りない自分を恥じる。

  • リベラルアーツに置ける数学の視点。絶妙に小難しい内容で、ギリギリ理解できた。

    久しぶりに数学脳を使った感じで、読後の疲労が凄まじいが、使っていなかった脳みそに乳酸が溜まり、変な達成感と幸福感もある。

    数学系の書物も面白いかも、と思う。
    この分野も少しずつ読み進めていこう。

  • リベラルアーツとは何か、リベラルアーツ教育はどうあるべきか、どのように教えるかを具体的な事例を盛り込みつつ、数学を専門とする著者が語るジュニア新書。
    数学が苦手な自分でも理解できるような丁寧な説明がとても好ましかった。必要条件十分条件、帰納法、背理法、図解。学生時代に学んだ数学は、日常生活でこんな風に役立つし、賢く生きていくために(騙されたり曲解しないために)必要な知恵だったのだなと今更気づいた。
    コロナ禍でいろんな人がいろんな立場でいろんなことを言っている中で、舵を取る立場の人に、それを支える人に、リベラルアーツの思考がものすごく必要なんだと、これを読むと強く実感。多面的に観て考えて決断していく、そんな人を育てるリベラルアーツ教育はもっと注目されていい。

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  • 日経朝刊にも、著者芳沢光雄氏が取り上げられ、たまたま塾の国語でも取り上げられていたタイムリーな作品。新聞では、速さの公式を丸暗記(「は、じ、き」)は、円グラフの位置を間違えるとありえないミスを大学生でもする危険性を指摘。
    やり方に頼るのではなく、理解に頼る方法で学ことを、推奨しているが、たしかに、仕事でも同様のことがいえる。
    あみだくじの理論では、奇数と偶数の意義を意識する、とのこと。例えば2本の直線であみだくじを作ってゴールをめざすことを、あみだくじを知らない幼児に説明すると、3本の直線であみだくじを実施すると誤った方向に進んでしまうことがわかり、例示を3本の子は誤らずすすめた点がとても興味深い。

  • 数学を専門とする著者が桜美林大学のゼミ等で行ってきた、数学的視点でのリベラルーアーツ教育。著者の興味関心が広範かつ柔軟で、実社会の出来事(AKB48のじゃんけん大会やナンバーズ4など)と結びつけて解説している点が親しみやすく岩波ジュニア新書の一冊としてふさわしい。
     <メモ>「例」の分類: (1)集合の要素を列挙する「例」
                (2)存在例や反例を上げる「例」
                 (3)比喩のような「例」
                (4)主題を取り替えるときの「例」

  • 書いている先生が主に数学を教えている先生だったからか、数学の話が割と多く、すこし抵抗感があったが、それでも生きていく上で数学が不要になることは無いということを思いっきり突き付けられた。ここで取り上げられている話は、高校レベルでの見込める話ばかりで、恐らく著者も随分と噛み砕いて説明しているのだろうけれど、ところどころ難しく理解しずらいところもあったので、このレベルの話は理解できるようになりたいと思った。しかし、例えば数字の一番先頭に来やすい数字があるという法則だったり、アリバイが背理法の考えを用いたりしている、ということを知り、日常の中にある数学って面白いなと少し思えた。
    また、今リベラルアーツ教育に興味を持っているけれど、そのためには今から科目を捨てたりしていたらダメだと思うし、文系に進んで受験で使わないとしても数学的思考は持っていないとお話にならないだろうし、今後の勉強に対する姿勢を変えていこうと思った。

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著者プロフィール

芳沢 光雄(よしざわ・みつお):1953年東京都生まれ。東京理科大学理学部教授、桜美林大学リベラルアーツ学群教授などを歴任し、現在は桜美林大学名誉教授。理学博士。国家公務員採用I種試験専門委員(判断・数的推理分野)、日本数学会評議員、日本数学教育学会理事も歴任。著書に『新体系・大学数学入門の教科書』『新体系・高校数学の教科書』『新体系・中学数学の教科書』(各上下)(講談社ブルーバックス)『中学生から大人まで楽しめる 算数・数学間違い探し』(講談社+α新書)『AI時代に生きる数学力の鍛え方』(東洋経済新報社)など多数。

「2024年 『数学の苦手が好きに変わるとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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