- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784006033415
作品紹介・あらすじ
地味でパッとしないカタツムリだが、生物進化の研究においては欠くべからざる華だった。偶然と必然、連続と不連続……。木村資生やグールドらによる論争の歴史をたどりつつ、行きつ戻りつする研究の営みとカタツムリの進化を重ねて描き、らせん状の壮大な歴史絵巻を織り上げる。第71回毎日出版文化賞受賞作。解説=河田雅圭
感想・レビュー・書評
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進化論の歴史における 選択か偶然かの一進一退の論争をカタツムリを軸に描き出す。進化論の進化の歴史というべきか。読んでいて、わかったようなわからないような気分になる。適応主義陣営も遺伝的浮動がまったくないとは言っておらず、中立説陣営も自然選択の存在を認めていないわけではない。ワタクシの理解では程度問題の話をしているのである。なのに(またはそれゆえに)この激しい議論。
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生物学に関する知識も、カタツムリに関する知識もほぼ無で読んだため、また、私の記憶力にかなり問題があるため、次々と登場する学者名と、学説をほとんど覚えられないまま読んでしまい、学術的な意味では全く身にならなかったが、それでもなお、学者間での論争や、師弟関係や、繰り返される適応主義と、浮動説の攻防は、とてもドラマティックで、普段全く関わりのない世界の裏側が見られたようで、面白かった。
また、ダーウィンの進化論についてや、メンデルの法則について、自分がかなり間違った解釈をしているということが理解できた。
私が学んだ時はまだ、優性遺伝、劣性遺伝と言っていた(まだそうなのかな?)こともあり、どうしても、遺伝子には優劣があるというイメージや、進化に際して、環境に適応できたものだけ、強いものだけが生き残ったのではないか、というイメージを持ってしまっていたが、実際には、今日言われているように、遺伝されやすい=顕れやすいだけで、遺伝形質に優劣はない(今は表記も顕性/潜性が推奨されている)こと、また、進化において適応だけが全てではない、という論争は繰り返し起きており、また、環境適応や、捕食者と非捕食者の関係においても、絶対的な強者というものは存在せず、バランスの取れた生態系が育まれるのだ、ということが理解できた。
またそうした、バランスの取れた生態系が、人間の介入によって簡単に崩壊してしまうことも、示されている。
この本を読んで、現代これだけ技術が発達した世界にあっても、まだ生物それぞれの進化について、完全に解き明かすことはできていないこと、また、生物の生態系の複雑さは、捕食、非捕食、環境など、解き明かしきれないほど多くの要素によって形作られており、どれだけの計算を尽くそうと、そこに手を加えて一種を取り除こうとしたり、他の場所に持ち出したりすれば、必ず計算外のことが起きてしまう、それだけ、絶妙なバランスが働いているのだということも頭に叩き込まれた。
何度となく繰り返される失敗に加担することのないよう、この複雑な自然と、そこに生きるすべての生命に対する敬意だけは、忘れずにいたい。 -
カタツムリを通した生物進化の研究史を物語風に描く。
生物進化の研究においてカタツムリがこんなにカギとなる動物だったことも初めて知るなど、本書の内容は知らないことだらけで、知的な面白さに満ちていた。進化の研究史において、木村資生など日本人研究者も大きな役割を果たしていたことも初耳だった。
文章もウィットに富んでいて読みやすかったが、やはり専門的な遺伝学等の話は十分に理解できなかったところもあった。 -
東2法経図・6F開架:B1/8-2/341/K
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https://opac.hama-med.ac.jp/opac/volume/477202 -
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