- Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022506740
感想・レビュー・書評
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渋滞学の祖である西成氏の仕事本。
渋滞が起きる原因を仕事の詰まりに応用し分析している。
全部で3部構成となっており、第1部は個人の仕事、第2部は部内の仕事、第3部は社内の仕事の詰まりの解消法を論じている。
個人の仕事の詰まりは、日程を窮屈に詰め込み過ぎている事が原因であり、これがまさに車間距離が短く渋滞が起きやすい状況と酷似している。これを解消するためには、リードタイムを予定表上きちんと設けることが大切である。力の入れ方としても常々肩肘張って取り組むのではなく7割程度の力で取り組みゆとりを持つことの重要性が強調されている。
部内の仕事の詰まりは、適切にコミュニケーションが行われないことに起因している。ある程度の自由度を持って仕事をさせつつも、野放しにするのではなくきちんと話し合い・コミュニケーションの時間は確保することが重要と述べる。ここら辺は、リモートワークが普通になってきた今においては特に重要な点になると思われる。
社内の仕事の詰まりについては、仕事という枠組みを超えて、社会に対してどう価値を提供するか・どう関わり合っていくか、ということが述べられていた。当パートは仕事に取り組むにあたっての心構えを説いている部分と言える。
最近は、仕事の進め方が難しくなってきたところもあったので読んでみたが、どのようにゆとりを意識的に組み込むか、その上でどう仕事と向き合うか、ひいてはその結果としてどのように社会と関わっていくかということを細かい視点から大きな視点まで幅広な視点で描かれていて面白かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
一番ぐっときたのは「ほとんどの人にとって「いい」と思える政策こそが非常に危険である。」というもの。
たとえば、「自転車に乗るときにはヘルメットを着用しましょう」などという安全のための政策を否定する人はなかなかいません。しかしフタを開けたら「自転車に乗るときにヘルメット着用を義務づけたことで、死亡事故が増えた」例もでてきました。なぜなら「運転手は、ヘルメットをつけている自転車を見かけると安全だと思い込んでしまって、より自転車の近くをすりぬけるようになったから」とわかりました。 -
仕事をスムーズに進めるためのコツを著した本.車間が詰まりすぎるから渋滞する,車間を適切にあければ渋滞は解消するということのアナロジーで,仕事の間隔を詰めすぎない,7 割程度の力で仕事をする,成功を譲り合う,など,具体的な方策が語られている.
最後は「全体最適」に向けた筆者の考え (妄想) が書かれているが,全体最適って難しいな,と改めて実感した. -
後半にちょこっとある著者の自分の過去の話(貧乏話)が人間臭くて良い。こんなに若くて東大卒業で一流雑誌に論文も掲載されるような人が就職に苦労する日本って変だよな。
<b>個人は社会の問題を解決しなければ社会につながれないのです</b> (P224)
実感がこもっているな? -
図書館
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112:「渋滞学」の第一人者としてテレビ等でもお馴染みの西成先生の本。テレビで見た「車間距離を開けると渋滞が解決していく様子」が衝撃的で、飛びつくように本を読みました。どのビジネス書にも言えることですが、本の内容があてはまる職種とそうでない職種があるでしょうが、私の職種ではかなり当てはまりますし、自分が無意識にしていたことにも「流れ」の観点から解説がなされていて、なるほどと唸らされました。仕事だけでなく、勉強や趣味にも応用できることだと思うので、ご興味がある方はぜひ。
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こういう類の本にしては、アプローチが理系で興味深い。結局は同じところに落ち着いていくが納得感はある。
個人、部門、会社に分けて語っているが、最後の会社の部分は何が言いたいかわからなかった。
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いいんですが、中身がうすいかな。
渋滞学の応用編で、仕事の滞りを無くすには?無駄を無くすには?ということにスポットを当てています。
結局、余裕を持つこと、全体の利益のために使う時間を設けるということでした。
理屈はわかるし、納得もしてますが、どれだけ成果が上がったかのデータがないので、もう一つ凄さを感じないかな。
後半は、研究テーマの見つけ方という自慢話になっちゃったので、それを実際の企業の成果報告としてくれたら★4つでした。
あくまでも概念や手法という所で終わってしまったのが残念です。
ただ、全力で仕事をしているのに、成果が出ない組織の方は一読の価値有りだと思いますよ。
まぁまぁオススメです。 -
渋滞学の専門家による、
「仕事の渋滞をなくすための思考法と実践法」を
個人→部内→社内の3段階にブレークダウンして伝える一冊。
ちょうど、本書を読む少し前に、
エイドリアン・ベジャンの「流れとかたち」を読んだあとだったので
その考え方に通じるものが非常にあるなと思って、大いに納得した。
ベジャンは、自然の原理とは「流れをよくするように形作られる」と
打ち出し、自然現象から社会分析まであらゆるものにその原理が
生きていることを示してみせた。
本書の著者、西成氏は、「なぜ良き流れにならず詰まるのか?」という
視点から、道路渋滞から組織論までの渋滞のメカニズムをひもとき、
それに実戦的な解決策を打ち出してくれる。
そういう意味では、相補的な捉え方をすると、実に良いなと思った。
本書で一番面白いのは、著者が自分の学生時代から
不遇(?)の研究者の駆け出しの時代を語る部分であった。
そこで著者は「社会の誰からも必要とされない密室の研究」に
打ち込むことの空しさを噛み締め、「社会の難問解決」へと
研究、そして生き方の舵を切っていくことになる。
様々な科学分野を横断的につなげながら、
独自性を打ち出し、かつ世の役に立つ研究に取り組むという
スタイルを確立していくのである。
ここのエピソードの本音感が、苦労を感じさせるとともに
とても示唆に富んでいると思うのである。
これだけ「無駄とり」の研究を重ねている人は、
さぞ生き方に無駄がないのかと思うと、著者はむしろそういう
「勉強」(=他の誰かによって踏み固められた安定的な道)に
留まることには否定的で(少なくとも社会に出たあとには)、
それこそ悪戦苦闘して渋滞の中を前進していくことこそ「仕事」で
あると強く主張している点は、
よく理解しておくべきことである
(というか、本書のようなスマートな題名を見せられたら、
そう思ってしまうリスクがあるんじゃないかなぁ…笑)
とりあえず渋滞を起こさないコツだけメモっておこう。
渋滞は、自分だけが早く着こうという利己の姿勢から
車間距離をつめすぎてしまうことから起こる。
他者の動きを良く見て、広めに車間距離をとれば、先行車が
ブレーキをしても、その影響を吸収することができる。
結局のところ、利己意識を抑えて、余裕を持つことが
自分も周りも結果トクをすることになるというのは、
工学が道徳に科学的根拠を与えるとも言えて、なるほど、すばらしい。