- Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022601124
感想・レビュー・書評
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(2015.10.23読了)(2015.10.15借入)
朝日新聞社のこのシリーズでは、『荘子』は、「内篇」「外篇」(上・中・下)「雑篇」(上・下)と全六冊になっています。全部読もうと思って取り掛かったのですが、結構歯ごたえがあるので、この一冊だけで、終わりにしようと思います。
Eテレの「100分de名著」取り上げられたので、番組テキストを読み、さらに買ってあった「荘子物語」諸橋轍次著、を読んで、この本に取り掛かったのですが、『荘子物語』ぐらいで僕には十分だったようです。『荘子物語』で、ポイントとなるところは、十分取り上げられていたようです。
この本では、原文が書いてあり、読み下し分が書いてあり、解説が書いてあります。
時間をかけて、二度・三度と読み返せば理解が進みそうですが、ちょっと今は心理的余裕がありません。また縁があれば、出会うこともあるでしょう。今回はとりあえず、一通り目を通して終わりにします。
『荘子』は、中国古代の思想家の文章としては、非常に文学的な表現に満ちているようです。
【目次】
内篇解説
逍遙遊篇 第一
斉物論篇 第二
養生主篇 第三
人間世篇 第四
徳充符篇 第五
大宗師篇 第六
応帝王篇 第七
あとがき
●内篇・外篇・雑篇(9頁)
「内篇」が最も古く、したがって荘子の思想を最もよく伝えているのに対して、「外編」及び「雑篇」は、「内篇」の思想を解釈したものであるか、もしくは荘子の思想の流れを汲む人々が後から加えた二次的著作である。つまり、「内篇」が『荘子』の最も本質的な部分であるのに対して、「外編」「雑篇」はその派生的な部分なのである。
●荘周(10頁)
『荘子』の著者、すなわち荘子(子は尊称)は名を周といった。
荘周は西暦前三七〇年ごろ―三〇〇ごろの約七、八十年の生涯をこの世で過ごした(11頁)
●老子・荘子(19頁)
老子の思想がより多く処世の智恵であるのに対して、荘子の思想はより多く解脱の智恵であったということができよう。老子の思想がより多く現世的な生を問題としているのに対して、荘子の思想は、より多く絶対的な生を問題としているということができよう。
●超越者(33頁)
地上の世界には人間精神の無限の飛躍を地上に引きずり落とす無気力と妥協と自慰と耽溺がある。人間の健康な生命を息苦しく締め付ける価値と規範の重々しい威嚇がある。人間を未来の予想にたじろがせ、過去の記憶におびえあがらせる蒼白い思惟の陥穽がある。超越者はこの人間の溌剌たる生命の高揚と健康な精神の飛躍を妨げ、人間を地上に縛り付ける一切のものから超越する。荘子においては高き超越者のみが人間を解放し、人間の世界に美と輝きと調和をもたらすのである。
●無為(43頁)
老荘において無為というのは何もしないということではなくて、人間が本来あるところのものに還るということである。人間が本来あるところのものに還るために「己」が否定され、「功」が否定され、「名」が否定されるのである。
●無限のメロディ(90頁)
昭文というのは、昔の琴の名手である。彼が琴をかきならせば、そこには確かに妙なるメロディが成立する。しかし彼の手に成立するメロディの背後には、彼の手に成立しない無限のメロディが存在し、彼のメロディはその無限なるメロディの一つに過ぎないのである。彼がいかに努力しようとも、彼の手には常にかきならし切れない無限のメロディが残されている。
●人間・泥鰌・猿(114頁)
人間はじめじめした場所に住んでいると、腰の病気や半身不随の中気などわずらうが、泥鰌はしょっちゅう泥の中に棲みながら平気だ。また人間は木の上におるとおっかなびっくり、ぶるぶるとふるえて生きた心地もないが、猿は木から気を飛び回って平気だ。この人間と泥鰌と猿と、三者のうち果たしてどれが本当に正しい住み処を知っているのであろうか。
●混沌(137頁)
生きたる混沌のなかでは、是と非、可と不可、美と醜、大と小、長と短など、あらゆる価値対立が一つであるばかりでなく、そこでは夢もまた現実であり、人間もまた胡蝶(自然物)である。
●木の実・草の実(202頁)
そもそも人間どもの珍重する柤(こぼけ)・梨・橘・柚などの「果蓏」すなわち木の実、草の実は、その珍重されるが故に実が熟すればもぎとられ、あらぬ辱めを加えられる。
●情無し(248頁)
僕が「聖人に情無し」というのは、情そのものが存在しないというのではなくて、情にとらわれない、すなわち喜怒・哀楽・好悪・是非の情に心を乱され自己を傷つけることがなく、常に自然の道理に身を任せて、人間の分別で生命の自然を助長しないという意味だ。
●「死生は命なり」(264頁)
人間が生まれるのも死ぬのも「命」すなわち自然の理法であって、それは夜が旦(朝)となり、旦が夜となる天体の規則正しい運行が、天―自然の理法―であるのと同じである。
●生きる(288頁)
人間が生きるということは苦しむことにほかならず、死は永劫の憩いでもあるが、その苦しき生を与えられた自己の生として生き抜いてゆくものだけが、死もまた自己に与えられた憩いとして安らかに死んでゆくことができるのだ。
☆関連図書(既読)
「孔子『論語』」佐久協著、NHK出版、2011.05.01
「論語」貝塚茂樹著、講談社現代新書、1964.08.16
「論語の読み方」山本七平著、祥伝社、1981.11.30
「老子」蜂屋邦夫著、NHK出版、2013.05.01
「老子」小川環樹訳、中公文庫、1997.03.18
「タオ 老子」加島祥造著、筑摩書房、2000.03.25
「孫子」湯浅邦弘著、NHK出版、2014.03.01
「兵法・孫子」大橋武夫著、マネジメント社、1980.10.25
「洪自誠『菜根譚』」湯浅邦弘著、NHK出版、2014.11.01
「菜根譚」洪自誠著・今井宇三郎訳、ワイド版岩波文庫、1991.01.24
「『荘子』」玄侑宗久著、NHK出版、2015.04.25
「荘子物語」諸橋轍次著、講談社学術文庫、1988.10.10
(「BOOK」データベースより)amazon
自由無碍の境地を語る「鵬鯤」の物語、一切肯定を謳う「荘周夢に胡蝶となる」―。老子とともに道教の始祖とされる、中国が生んだ鬼才・荘子が遺し、後世に多大な影響を与えた、無為自然を基とし人為を拒絶する思想とはなにか。荘子自身の手によるとされる「内篇」を、老荘思想研究の泰斗が実存主義的に解釈、荘子の思想の精髄に迫った古典的名著。詳細をみるコメント0件をすべて表示