ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー (朝日文庫 ふ 19-1)
- 朝日新聞出版 (2001年12月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
- / ISBN・EAN: 9784022613615
作品紹介・あらすじ
郵便局でただでドーナッツがもらえる。通りの向かいの本屋に車がないと行けない。一日千人以上が枕で怪我をしている(どうやって?)。社会保障局はたまに電話がつながっても染みの抜き方しか教えてくれない…ぜーんぶあの国の真実の話。ベストセラー・コラムニストの爆笑最新刊。
感想・レビュー・書評
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20年ほど前にタイトルに惹かれて「読みたい本リスト」にのっけてた本を、ようやく読みました。
アメリカ人の著者はイギリスでジャーナリストになり、20年ぶりにアメリカに帰ってきます。
そして愛する故郷を、懐かしく、または冷静に観察し、イギリスにコラムとしてその様子を書き送ります。
基本的に話は盛ってありますし、毒も多分に含まれていますが、日本人が見るアメリカとは違うアメリカは大変興味深いものがありました。
ずっと諸外国に比べて日本人は視野が狭く、択一的で、ヒステリックなところがあると思っていましたが、この本を読む限りでは20年前のアメリカもそんな感じでした。
”現代の旅行者が人生に不確かさを求めないのは明らかで、みなどこへ行っても同じ場所に宿泊し、同じものを食べ、同じテレビを見ようとする。”
今の日本のことかと思ってしまいます。
”物があればあるだけ、人はもっと欲しいと思うもので、もっと欲しいと思うと、そう、もっともっと欲しくなってしまうからだ。”
選択肢が多すぎるカフェでのやりとりのあとに書かれた文章ですが、これまた現代日本にも言える気がします。
そして私も選択肢の多すぎるカフェで途方に暮れるタイプです。
便利を目指して進んできた結果、古き良き文化を懐かしむ傾向というのも書かれていました。
融通の利かないお役所仕事については、日本ばかりではないのか、という驚きとともに、イギリスの、利用者の都合を考慮した大人の対応に感心しました。
まあそれも、人口の違いなのだと思いますが。
移民についてのアメリカの対応についても、「先進国の中で一番移民の割合の少ないアメリカ」という評価なのですね。
それより断トツに少ない日本という国は、まだ未開の国なのでしょうね。
”「大学へ行くために家を出たら、子供たちはもう本当の意味では戻ってこないのよ」と同じように二人の息子を旅立たせた隣人が先日物思いに沈みながら言っていた。(中略)今は私が完全に間違っていたことがわかる。息子はいていないようなものではなく、そう、いなくてもいたのだ。そして今、息子はもういない。”
必要なことしか喋らなくて、ほとんど自室で勉強ばっかりしていた息子でも、一緒に暮らしているというのと家を出て暮らしているのは大違いだと私も思いました。
こんなことなら家から通える大学に行けといえばよかった…と。
少々文章がウザ…くど…過剰ですし、何しろ20年前ですから前世紀の話で、スマホなんてまだなかった頃の出来事ですから、話半分で聞くべきなのでしょうが、読んでよかった。
面白かったです。
あ、ドーナッツをくれる郵便局というのは、年に一回のお客様感謝デーの時の郵便局です。
お役所がそんなサービスをするなんて!という驚きをもって書かれたエッセイですが、わたしは日常的にドーナッツをくれる郵便局があるのかと思って20年間この本のタイトルを眺めていたので、ちょっと肩透かしでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
時代を感じさせる(60年代に書かれた)エッセイ。「ドーナツ」と「ダイナー」というタイトルに惑わされたが、結局その2つがかかれているのはほんの少ししかない。ネット創成期で、911も起こっていない時代の皮肉やユーモアは、懐かしいと言うよりも「現代では口に出してはいけない老人の戯言」であった。
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30ページ目でもう大笑い。
面白いわー。 -
作者の別の本を読むための肩慣らしに読んだ。カバーかわいー。ユーモラスなコラムなんだろうけど、感心するような(けどすぐ忘れてしまうような)情報も多かった。知的過ぎて私にはピンとこないネタも。
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すこし奥田英朗のエッセイっぽいかもしれない。
示唆に富んだ馬鹿馬鹿しく愉快で笑わずにはいられないものとなっている。しかし、馬鹿馬鹿しいと片付けるのはあまりにもったいない。
著者の視点と考察が子供っぽさを感じてしまう性格と混ざって、思わず「そういえば」と、いままで気にもとめなかったことに気づいた。たとえば、アメリカでは毎日何千人もの人が枕で怪我をしているという。少し考えたがわけがわからない。胸にアイロンの火傷を負って「服を着たままだったら便利だと思った」という。なんてバカなと思うが、掘り下げるとぼくもその発想がなかっただけだ。その発想があればぼくもやったかもしれない。(そんなこともないか。)
欠点は多いが憎めない陽気なアメリカに一度は住んでみたいな、と思うコラムだった。
なにか人生で大事なものを教えてくれたような気がするのは気のせいではあるまいし、言い過ぎでもあるまい。
なにより衝撃だったのは表紙の紳士がブライソン氏ではないということだ。この表紙の紳士が気に入って買ったのにもかかわらず。よくよく考えるとこの毛髪量では髪の毛はパーティは開けないか。 -
他人を揶揄したり蔑んだり落としたりすることなく、人を笑わせるって、ものすごく知力を要する。ものすごく高度で、ものすごく難しい。
日本だと土屋賢二が近い感じだけど、土屋よりこっちのほうがかなりサイケでポップ(?)。
電車の中で読んではいけません。
突然吹いてしまい、「へんな人」になってしまうこと請け合います。 -
20年間のイギリス生活ののちアメリカに帰ってきた著者から見たアメリカの疑問点などを綴ったコラム集。アメリカ人の視点からアメリカという国を客観的に捕らえていて読んでてあきません。新聞だか雑誌だかに掲載されていたコラムなので1つ1つがすごく短いので寝る前に1つ取りあげて読んでいくのもいいかも。
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やっぱりキャラ勝ちのおじさん。ぜひ日本を旅行して欲しい。
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20年ぶりにイギリスからアメリカに帰ってきた著者。すっかり変貌してしまった祖国をちょっと英国流のブラックなユーモアで笑い飛ばす、爆笑コラム。