選書939 超高齢社会の法律、何が問題 (朝日選書)

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  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022630391

作品紹介・あらすじ

人には頼りになる人とならない人がいる。実は法律も同じ。たとえば成年後見制度。時間と費用をかけて成年後見を任命しても、独居老人が急病のとき、役に立たない。たとえばリビング・ウィル(終末期医療に関する事前指示書)。本人が慎重にせっかく書いたものでも、法律上は無視しても構わない。たとえば遺言。相続争いを避けるために作成した遺言が効力をもたないとされる場合がある。たとえば高齢者虐待。もっと早く発見する法制度が実はできていない。要するに、法律制度が「若年社会」仕様で、「高齢社会」のものになっていないのだ。著者は高齢者法の第一人者で、東大での講義をもとに、わが国の法律のどこに問題があり、それをいかに改めるかのヒントをわかりやすく説明する。すでに3300万人以上いる高齢者と、もうすぐ高齢者になる人たちが、老後の安心を得るための格好の書。

感想・レビュー・書評

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  • 『情報は守られたが、高齢者は死んでしまった』
    『法を守って人が死ぬ』

  • 超高齢社会において、法律視点での問題点をあげた本
    この視点はあまりみかけなかったが、非常におもしろい
    著者の専門がアメリカのため、アメリカとの比較が多いのも
    特徴の一つ。アメリカよりも日本の高齢率の方が圧倒的に
    高いが、総人口で考えると高齢者が多いのはアメリカだ。
    そう考えると、なるほど参考になる、とも思える
    ただ法律が絡んでくるので、解決案は法律改正が伴う
    ものが多くなっている。すぐに解決できる、というものでは
    ない

    ●ポイント
    ・高齢者の電車事故。その損害請求を遺族、配偶者へ
     91歳の夫を85歳の妻がどこまで責任を持つのか?
     単身高齢者が増えた場合、どうするのか?
     生活の面倒を見ている人へ責任を求めるならばあ
     生活をみるひとは減る。
     各国の学生の意見
     韓国は長男、アメリカは本人(遺産より支払い
     ※アメリカは裁判が多いが、救済を得られない
      ケースが多い。自分のことは自分で守る必要がある
    ・法律家のありかた
     家族と本人が相談。これは誰が依頼人?
     高齢者が依頼人の場合、何が優先されるか
     本人も判断できない可能性がある
    ・成年後見制度
     日本では医療に対して後見人は権限を持たない
     単身高齢者はどうしていくのか
    ・CCRC
     継続的ケア付き退職者コミュニティ
     健康な状態から住み、介護が必要になっても
     同じ場所で生活できる施設の複合体
     入居時リスク、倒産リスク、上乗せ介護費用
     といったリスクがある
    ・日本の高齢者は年金頼み
     年金頼みからの脱却、ただし投資のプロに全員
     なれない。専門家が必要
    ・死亡後の財産
     死亡後は家族もお金をおろせない
     遺言を作成しても遺留分がある
     遺言は手がき(この時代に)
     遺言の検認を家庭裁判所に持って行っても
     有効性を確認してくれない
     日本では遺言を残さないが、アメリカでは残すことが
     多い。死後の財産処分を法律が決めるのは、自分の
     人生を失敗と認めている感覚がある。形見分け、
     寄付などをしていることが多い模様
    ・遺産
     事業や不動産を家族で分ける場合、売却が発生する
     ことがある。信託財産が認められれば、誰かが利用、
     それをほかの家族へ賃料を払う、という選択肢もある
     こういったアドバイスを弁護士ができるようにしな
     ければならない
    ・法を守って人が死ぬ
     老人虐待があっても個人情報なので提供不可のケース
    ・知縁
     高齢者には縁が重要。血縁、地縁、社縁、知縁
     知縁は著者の造語。テーマに感心を持った人々が
     あつまるコミュニティ
    ・ワンストップでのリーガルサービス
     様々な相談事に答えれるサービスがそれぞれの地域に
     存在する基盤が必要となる
     

     

     

  • 社会保障の専門家だけではなく、法律家や公務員など、様々な主体が協力して、高齢社会を乗り越えていくことが大切だと思った。

    ヨシタケシンスケさんの絵が可愛い!

  • 高齢社会、知らないこと知らないといけないこと色々ある、金融機関職員として考えないといけないことも色々ある

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著者プロフィール

武蔵野大学法学部特任教授・東京大学名誉教授。1974年東京大学法学部を卒業し、助手となる。1978年学習院大学法学部専任講師、助教授、教授、1992年東京大学大学院法学政治学研究科教授を経て、2017年定年退職し、同年から現職。専門分野は英米法。主著は『超高齢社会の法律、何が問題なのか』(朝日新聞出版・2015年)、『アメリカ高齢者法』(弘文堂・2019年)、『アメリカ家族法』(弘文堂・2021年)、『アメリカ契約法[第三版]』(弘文堂・2022年)など。

「2024年 『しあわせの高齢者学 2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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