ウホッホ探険隊 (朝日文庫 ひ 3-2)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022642233

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  • 表題作「ウホッホ探検隊」のほか「プラネタリウム」「幾何学街の四日月」「月曜日の兄弟たち」の4編を収載。もともとは別々の単行本に収められていたものから、離婚家族を描いたものを再編したということかな。
    いずれも時代は1980年代。今や離婚は珍しくないと言われるけれど、当時はまだまだそういうわけにもいかなかったのだろうか。男女雇用機会均等法だって施行前後だし、世の中のジェンダーバイアスはもっと男性優位に寄っていたと思う。しかし、そのなかで離婚を選んで生きる女たちのしなやかでたくましいこと。何より責任を負って生きている感じが美しい。
    言ってみれば著者をはじめ1980年代に30~40歳代だった人たちは、いわゆる団塊の世代であり、ものごころついた頃に民主主義や男女平等の風を受け、その後も安保反対デモ、学生運動など自ら行動してきた世代。だから、何かに頼ったり、楽な道を選ばないという矜持があったのだと思う。それを表すような場面が「月曜日の兄弟たち」のなかにあった。 「私」が富田に望まずキスをされた場面。
    ――逃げるなら今だと知っていたが、私は、見せようとしている彼に拮抗しなければならない、そうしないと私は、頭の先から手指足指の先まで私である私ではなくなる、彼に犯されたことになる、という気がして彼の背中を見つめた。
    また、「幾何学街の四日月」には男性に向ける同情ともつかない眼差しも。学生時代の男友だちに対する次のような思い。
    ――みんな疲れている。哲理氏やプラグマ氏はその疲労の代償として何を得たのだろう。私は、女は、一つ一つの疲労が自分に何かをもたらしてくれたと思う。女にかんする定説神話を一つ一つ自分の中で噛みしめて、自分なりの考えで生きる力にした。それはたぶん女には職場を与えられない未開地だったからできたことだ。たぶん彼らにはその自由がなかったのだ、固く固く踏み固められた男の道を試しに耕してみる自分の時間とか自由な思考という鍬も、どこかの管理事務所に奪われてしまっていたのだ。
    今から25年くらい古い時代の、自らすくりと立つ美しさを4編すべてから感じた。昔のほうがやっぱり人は大人だったな。今の人たちって、責任をとろうとせず他力本願で生きることばかり求めているような気がする。

  • 当時の離婚に対する世間の目がうかがえて面白い。
    文章は淡々としている。太郎・次郎の話し方が年相応じゃなくて会話文は不思議な雰囲気に包まれる。

    (レポート書くのに、この作品で分析したから思い入れある)

  • 子供のときにFM放送でこの作品のラジオ劇場があったような記憶をあるのを思い出した。頭の中にその時の放送の声優さんのセリフが残っているのですが、本当かどうかを確かめようと思って読んでみることにしました。その後、調べた結果、頭の中にセリフは別のラジオ劇場のものだということがわかった。ラジオ劇場は1985年11月11日~15日にNHKのFM局で放送されていた。どうやら高校2年生のときにFMラジオで登場聞いていたのは確かでした。小説を読んだら、内容はすっかり覚えていませんでしたね。今読むとちょうどその時代を感じさせるものが出てくるのでタイムスリップするような感覚が僕にはありました。”離婚”いう出来事をきっかけに”結婚”とは?人と人とのつながりとは?ということを小学生の子供たちが考え、模索する様が”探検隊”という表現になるのでしょうかね。

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著者プロフィール

1943年、東京生まれ。早稲田大学政経学部中退。1982年に海燕新人文学賞、85年に芸術選奨新人賞などを受賞。著書に『樹下の家族』『ゆっくり東京女子マラソン』『黄色い髪』など多数。1992年逝去。

「2017年 『ウホッホ探険隊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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