悪人(下) (朝日文庫 よ 16-2)

著者 :
  • 朝日新聞出版
3.77
  • (636)
  • (1224)
  • (912)
  • (157)
  • (27)
本棚登録 : 7767
感想 : 900
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022645241

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  峠で女性の遺体が見つかった。容疑者は女性がその夜会う約束があると言っていた大学生。しかし実際に女性と会う約束をしていたのは、別の男だった。事件の真相とはなんなのか。本当の悪人とは誰なのか。

     映画のあらすじを先に知っていたので、勝手に逃避行メインのストーリーだと思っていたが、まさかこんな話だなんて!
     どんな事件にも理由があって、いろんな側面があって、読んでてなんだか「正義の反対は別の正義」という言葉を思い出した。
     吉田さんの本は初めて読んだが、細部を丁寧に書く印象を受けた。映像化しやすいわけだなあ。

     それにしても、祐一惚れやすすぎだろう……。

  • 切なさともどかしさで心臓がきゅっとする。
    最後の方は泣けた。もともと家族エピソードに弱いし。

  • せつない恋愛小説。
    吉田修一はどの作品もぐんぐん読ませるが、読後感がひどくつらい。
    大学生の描写など、ちょっと周りの人が怖くなり、想像力がひどくびりびりと刺激を受けている感じ。
    ものすごくリアリティにせまる文章と構成力で、一気に世界に引き込まれ、自分の意識していない扉が開かれてしまう感じ。
    それがつらく感じる、私は。

  • 『・・・でもさ、どっちも被害者にはなれんたい』

    出会ってしまった二人。馬込光代と清水祐一。
    男女の関係。そして、祐一から衝撃の告白。

    それでも自首しようとする祐一を引きとめ一緒に逃げようとする光代。
    何が彼女を駆り立てるのか・・・

    誰が悪人なのか?
    善とは何なのか?
    正義はどこにあるのか?

    殺人。それはもちろん悪だ。
    しかしその背後にあった真実は何なのか?

    様々な疑問を投げかけてくる小説です。

    『あの人は悪人やったんですよね?ねぇ?そうなんですよね?』

  • 悪人とは‥?作者はその判断を
    読み手それぞれの解釈でよいととれる帰結をしている。
    私たちが一つの事件をニュースとして知る時、
    それは報道による情報から得た一面的なイメージでしか
    犯罪者を捉えることはできない。
    殺人を犯した悪人が、実は心やさしい善人であったとしても、
    犯罪に至るまでの過程や犯罪時の心理、
    そして生育歴や背景が詳細に伝わらない限り、
    殺人犯に情状酌量の余地はない。

    作者はそこに焦点を当てたのだと思う。
    犯罪者の周囲にいた者を正確に描くことで、
    また、犯罪者の人間像を背景を丁寧に描くことで、
    読み手の中の「悪人」の定義に揺さぶりをかける。
    そして“最も悪いヤツ”をあぶり出す。
    さらに、悪人も、最も悪いヤツも、周囲にいる善意ある人びとに
    支えられているということに気づかせてくれる。
    犯罪者を愛した光代、そして見守り続けた祖母の房枝、
    被害者の父親や彼を助けた大学生の鶴田のように
    まっとうな人びとの良心に支えられていたのではないか。

    かつて推理小説の巨匠松本清張氏を、田宮虎彦氏が解説した時、
    「松本清張氏の用いた手法は人間の影の落ちている周囲から描き
    中心にあるものを際立させる」と解説した言葉をふと思いだす。
    だからこそ映画になり、TVドラマに起用されるのだろう。
    清張作品に通ずるこの「悪人」も然り。読み応えのある秀作。

    《第34回大佛次郎賞》《第61回毎日出版文化賞》

  • 大切な人や大切なものがあると
    強くもなるし弱くもなるけど
    なにもないよりは優しくなり得るとおもう。

    シチュエーションにすこし『溺れゆく女』を思い出した。

  • 小悪党レベルの雑魚キャラならいるけど
    悪人って誰のこと?と、
    途中までずっと疑問に思っていました。
    最後まで読んで、ああそういうことかぁと納得。
    「どっちも被害者にはなれんたい」
    この言葉が優しくて、
    優しすぎて、切なくなりました。

    しかし、映画の配役はちょっとイメージと違う。
    祐一、妻夫木くん???
    はたして金髪にするのでしょうかねぇ。

  • ちくわ
    悪とは

  • 「2008本屋大賞 4位」
    九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/723243

  • うわあー切ないよ辛いよ悲しいよお。
    早く続きが読みたくてしょうがないのに切なくて悲しくて読み進めたくなかった。。
    真面目で不器用な主人公が人を殺してしまい、守りたい善の為に悪の真似事をする。報われない。。
    本来なら更に切なさを加えてくれるはずの光代のストーリーは特に感情移入できず。別によくいる頭の回転遅めが故に不幸気質な女かなって。(悪口)
    被害者の女の子、佳乃が悪く描写されてたから彼女に対する感情はあまり感じさせないでくれたことが救い。きっとわざとそう書いてるんだろうな。この女うざ!とは思うけどじゃあこの子が悪人か?と言われたらそうとも言い切れない。
    可哀想で仕方なかったのは被害者の両親と加害者のおばあちゃん。。この2つのサイドのストーリーを読んでしまうと誰も悪人なんて言えない。
    増尾くんはただただうざいし唯一の悪人だと思うけど一切罪には問われないし。
    誰が悪人か。被害者なら善人?加害者なら悪人?みんな何か事情があって悪いところがあって、誰の主観で見るかによって抱く感情が全然違う。すごく複雑で重くて胸が締め付けられる小説でした

全900件中 71 - 80件を表示

著者プロフィール

1968年長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。1997年『最後の息子』で「文學界新人賞」を受賞し、デビュー。2002年『パーク・ライフ』で「芥川賞」を受賞。07年『悪人』で「毎日出版文化賞」、10年『横道世之介』で「柴田錬三郎」、19年『国宝』で「芸術選奨文部科学大臣賞」「中央公論文芸賞」を受賞する。その他著書に、『パレード』『悪人』『さよなら渓谷』『路』『怒り』『森は知っている』『太陽は動かない』『湖の女たち』等がある。

吉田修一の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×