乱反射 (朝日文庫)

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (600ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784022646385

感想・レビュー・書評

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  • 人間が生まれながらにして持つ罪・原罪。
    これは社会全体が慢性的に持つ小さな罪の物語。糾弾や断罪でなく、ただただ読者に気付きを与える物語。
    少しだけなら、今回だけなら、自分だけなら、誰もが持ちうる考え。それこそが罪なのか。
    楽園を追い出され、社会を作った人間が得てしまったのは、そんな小さな罪の積み重なり。

  • たった二歳の幼児が巻き込まれた事故は、実は殺人だった…
    この小説の登場人物は、ほとんどがその犯人と言っていいのかも。
    一見ばらばらで普通の人たちの「ちょっとくらいいいや」という身勝手な部分が繋がり連鎖すると、最悪の結果が生まれてしまうということです。
    街路樹の伐採反対、犬の散歩、夜間診療、、、などなど、これらがどうやって連鎖するのかは読んでからのお楽しみ。
    個人的には、車庫入れに苦戦する克子に共感してしまいました^^;

    日頃の行いは大切に。ルール、マナーは守ろう。
    そういう教訓になりました。

  • どきっとした。これを読んでどきっとしない人はいないと思う。なぜなら、出てくる人は皆善良な一市民。普通に働き、家族がいて、社会生活を送っている。犯罪になるようなことはしないが、自分が損すること、回避できる面倒は避け、自分にとって最適になるように意識的にも無意識的にも行動している。自分の利己的な振るまいが、誰かの人生を損なっているかもしれないとは露とも思わない。そんな人々と自分を重ね合わせてぞっとした。物語の冒頭にイギリスの推理小説で出てくる人全てが犯人というものがあるという話が出てくるが、この小説もそれに近い。しかし出てくる人は一般的にどこにでもいそうな人で、行動は誰しもが、ちょっとだけ、これくらいなら大丈夫と思ってしそうなことばかり。ある事故で亡くなった2歳の男の子の父親(新聞記者)が事故の真相を探るうちに、出会う人々の自分は悪くないという姿勢に打ちのめされ、そしてはたと自分にも同じところがあることに気がついてピリオド。最後の南の島へ行くくだりは余分な気もするけど、絶望から再生へ、という意味では救いのあるラストといえるかな。インパクトでは父親が愕然とするところで終わる方があると思うけど。やはり貫井さんは面白い! 

  • 貫井徳郎は、不思議な作家だ。定型のスタイルがなく、全く違った印象を与える作品を出してくる。
    乱反射は、日常のほんのささいな不道徳が、いくつも重なり、その結果として2歳の子供が事故で死んでしまうもの。描かれている人物が、本当の意味で“普通に生活している人”であり、その犯した行為も誰でも一度はやったことのある些細なことである。
    極めて読みやすい文体でありながら、人物描写といい、ストーリー展開といい、読み応えあり!!

  • 小さな偶然が幾つも結びついてひとつの悲劇が起こる。
    その過程を丁寧に描いていて、やるせない気持ちになった。
    全日本人がこの作品を読んで心に刻んだらいいと思う。

  • 文庫で600ページある長編。
    ある家族の幼い子供が、不運なことに命を落としてしまう。

    この本の3分の2くらいまでは、どこの町にでもあるごく平凡な日常が、色々な立場の人間を追って描かれている。

    肝心の子供の死に辿り着くまで400ページくらいも同じ調子で続くし、何やこの話はー!?と、だらだら読んでいましたが、肝心なところは子供の死ではなく、死を作り出した色々な人のごくあたりまえな日常の一コマの積み重ねだという事が見えてきたあたりから、ものすごく深い話になった!

    些細な事の積み重ねが、真綿で首をじわじわ絞めるように不幸な結果に繋がっていく。

    劇的なトリックも奇抜な演出も何もないからこそ、恐怖だった。

    それと共に、社会的な問題も見事に描き出されている。

    このような、不運としか言いようのないことの当事者、又は関係者になったとき、人はどう反応すれば、区切りがつくのだろうね。
    答えがない問題です。

  • 大好きな作品「慟哭」の著書、貫井徳郎の作品。最近、文庫化されたので購入した。
    内容は、老若男女いろいろな境遇の登場人物の目線で展開される、秀逸な群像劇だった。こういう群像劇は、終盤でバラバラの登場人物が接触し合う、点と点がつながって線になる瞬間が面白い。
    物語は「‐44章」から始まって「0章」である事件が起こる。その事件の原因は、それぞれの登場人物が犯した誰にでも心当たりがある些細な罪の連鎖。
    事件が起こった当事者は、事後に真相を調査して知った結果があまりにもやるせない結果で、「そういうことか!」と唸ってしまった。

  • 面白かった。力作である。風が吹けば桶屋がもうかる的なお話を、それぞれの人の感情部分を詳細に語ることでぐいぐい読ませる。貫井さんのことは以前から個人的に「小市民の観察者」と勝手に名づけていたが、ここでもその手腕は見事に発揮され、どこにでもいる人たちのどこにでもある感情の積み重ねは、読んでいる間中「ああ、あるある。」と感じさせられた。
    人間が誰しも持っている怠惰な部分や自分勝手な部分やちょっとした悪意や、悪意のない偽善などがこれでもかっ!と描かれているため、人によっては読むことに嫌悪感を感じる人もいるかもしれない。だが、これは他人事ではない。紛れもなく自分のことである。たくさんの人が読まなければならない。と思う。
    ただ、展開がやさしすぎてインパクトに欠ける。衝撃度を考えれば、一見何の関係もなさそうな人たちの連続殺人事件の元を辿っていったら実は。。。っていう展開のほうが面白かったかも。あれ?それってアメリカのスリラーみたいになっちゃうかな?w

  • いやーなストーリーだったけど面白かった。まったく関係性が見えない人たちの群像劇で視点を変えながら進んでいく

    読み進めていく中でこういう展開が来るだろうなぁと分かってしまうその瞬間鳥肌が立つ。そして分かりきった結末に対して読み進めないと行かないつらさ。

    因果応報という言葉が似合う。

  • 悪いこともいいことも、全部自分に返ってくる、神様は見てるネ。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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