誰がJ-POPを救えるか? マスコミが語れない業界盛衰記

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023311572

作品紹介・あらすじ

なぜソニーはアップルに無条件降伏したのか?K‐POPはなぜ売れ続けたのか?AKB・モー娘。、初音ミクからJASRACまで、エンタメ界の生き証人が音楽業界を斬りまくる。

感想・レビュー・書評

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  • 麻生さんが野口五郎「針葉樹」の作詞をした人ということだけは知っていたが、評論家に転身していたとは。
    舌鋒鋭く「J-POPが何故死んだか」を検証していく。ヒット曲を持つ作詞家時代のエピソードがいちいち面白く、邦楽業界の腐敗ぶりにただの暴露本ではない説得力がある(困ったことに)。東大文学部出身と知りびっくりした。分析がしっかりしているのも道理だ。2012年末に出たやや古い本だが、予言の幾つかは当たっている。米津玄師みたいなヒットメイカーがニコニコ動画から出現することとか。

  • ちょっと期待外れ。J-Popの歴史をおさらいした感じ。

  •  昔『日経エンタテインメント!』を毎号買っていた時期があって、著者の名はそこで知った。巻末の連載コラムを持つなど、同誌のメインライターだったからである。
     「エンタメ業界全般にやたらとくわしい人だな」という印象を抱いたが、元作詞家だということは本書を読んで初めて知った。

     作詞家からエンタテインメント・ジャーナリストに転じた著者は、J-POPの歴史を肌で知る生き証人であり、本書のような本を書くのにうってつけといえる。

     つい20年ほど前まではミリオンセラー・アルバムが連発され、一世を風靡したJ-POPの世界が、いまや惨憺たる状況にある。
     そうした苦境を招いた要因は何なのかを、本書をはさまざまな角度から解き明かしていく。過去数十年の業界盛衰史をふまえ、当事者たちの証言をちりばめて……。
     章立ては以下のようになっている。

    第一章 ソニーがJ-POPを殺した
    第二章 韓流がJ-POPを殺した
    第三章 つんくがJ-POPを殺した
    第四章 音楽著作権がJーPOPを殺した
    第五章 歌番組がJ-POPを殺した
    第六章 圧縮技術がJーPOPを殺した
    第七章 スマホがJーPOPを殺した
    第八章 世界の不況がJ-POPを殺した
    第九章 マスコミがなくなる、がJ-POPを殺した
    第十章 平成10年代生まれがJーPOPを救う

     この章立てが示すとおり、書名こそ『誰がJ-POPを救えるか?』だが、実質上は「誰がJ-POPを殺したか?」が分析されている本だ。

     書名に沿った内容なのは終章の「平成10年代生まれがJーPOPを救う」だけだが、この章がなんともスッカスカ。“従来の常識にとらわれない平成10年代生まれが、何か新しい突破口を探してくれるのではないか”という無根拠な期待が語られるだけなのだ。
     要は、この書名にするために無理やりつけた蛇足でしかない。

     ま、いまもエンタメ業界に身を置く著者としては、ストレートに「もうJ-POPは滅びるだけだ」と主張する本にはしづらかったのだろう。
     そのへんの中途半端さといい、フィクション仕立てにして逃げを打っている(人物名の多くが仮名)点といい、腰の引けた感じが読んでいて不快だった。

     とはいえ、JーPOP凋落の要因についての分析はどれも得心のいくものだし、目からウロコのトピックもちりばめられていて、音楽好きなら一読の価値はある。

  • ここ最近の日本音楽業界が衰退していることは誰もが知っている。ヒットチャートはAKBとジャニーズだけ。かつてのミリオンセラー連発の時代とは明らかに異なっている。なぜこうなってしまったのか、そのことをマスコミは明確にしないし、分析もしない。まるで音楽業界の現状を語ることはタブーのような状況。

    J-POPバブル時代から音楽業界を含めたエンタメ界を評論し続けた著者は、あえてそんなタブーに挑み、音楽業界の諸行無常を分析する。ソニー、韓流、MP3、アップル、スマホ、レコード会社上層部など、J-POPをダメにしたと思われる容疑者を取り上げ、彼らの罪を暴いていく。

    と、勇ましく吠えてはいるが、著者もその音楽業界に身を置く立場。関係者と一戦を交えるような暴露本にはせず、匿名人物が登場する小説っぽい評論にしてしまったのは分別ある配慮なのだろう。そのおかげでイマイチ、パンチの弱い本になってしまったのは残念だ。

    結局のところ、J-POP関係者は現状に合わせて変化しようとぜず、昔からの音楽の作り方に固執し、自らゆるやかな死を選んでいるということなのだろう。

  • 雑誌のコラムのように、1つの章が短く読み易い。
    どうして今のJ-POPの状況になってしまったのかをいろんな面から記載。
    このまま廃れずに音楽業界に復活して欲しいと感じた。

  • 2012年度現在のJ-POP=日本の音楽業界についてまとめた本。
    時事的ネタを判り易く、ちょっと扇情的に紹介すると言う点で「こち亀」に似ている。

    「カスラック」「マスゴミ」といった言葉を使う人には自説を肯定してくれるので心地よいだろうが、そういう言葉に眉をひそめる人には読むだけ無駄だろう。つまり、何ら目新しいオピニオンはない。

    ただ、日本のレコード会社、マスコミにもジェネラリスト傾向が強まってすぐ配置転換されるようになり「引継ぎ」が行われないことが業界の衰退に繋がっているという意見は著者の実体験もあって「なるほど、その通りだ」と思わせた。

  • 地元の図書館で読む。違和感が残ります。つんくは休むべきだった。そうかもしれない。でも、今はそうではないでしょう。

  • とりあえず初版の日付を見てから読んだ。
    作詞家デビューののち、雑誌で音楽・映画・演劇・テレビなどの
    エンタテイメントの全ジャンルを担当して20年、の人にしか書けない本だと思う。
    あらゆる局面から、今のJ-POPが置かれてる状況を分析していて面白い。
    この前に読んでいた著作権の本を思い出しつつ読むと、
    今生きている人にとっては、音楽著作権って
    まだまだ大きな収入源でビジネスなのだと分かる。
    ネットでタダで見る前提になると(K-POPの例を引きつつ)
    音楽はどの部分を聴いても耳に残る単純でキャッチーなものになるしかない、
    というのが怖い。
    ツイッターやらヤフーニュースなどのテキストだけでなく、
    音楽も短くて分かりやすくてすぐ楽しめないと、聴いてももらえない。
    1枚のアルバムを最初から最後まで順番に聴くなんて
    まどろっこしいことはもう出来ない。
    ハードの変化、環境の変化、社会の変化で、好みも傾向も変容していく。
    流れる情報は膨大になり儲けはすぐに出さなきゃいけなくなり
    後任を育てるなんて悠長なことをやってるヒマも旨味もない。
    過去から引き継がれる知識と経験とセンスが必要なジャンルなのに
    あらゆる場所で受け渡しが行われずに放っておかれて断絶が起る。
    エンタテイメントの使命は「感動の伝言ゲーム」
    文化=豊か=余剰で切り捨てていたら、
    人間が生きていくのに必要な力もわいてこない。
    スピードが肝のネットって何だろう、目先の金儲けってそんなに大事か?
    なんてことをこの手の本を読むと毎度毎度思う。

    そういえば、かなり前にこの人の『ブレイク進化論』というのを読んだな。
    これも音楽やエンタメの当時の状況を俯瞰した面白い本でした。

  • フィクション部分やカッコの多様など、文体がメチャクチャなので読み難いんだが、なるほどと思うネタはおもしろい。

  • 身につまされるエピソードと分析の数々。本文にある、感動の伝言ゲームこそがエンタテインメントの第一条というのは至言。ことにここ数年、肌で感じていること。

  • 誰もが幼い頃から耳にするJ-POP。古くは歌謡曲、演歌等とも呼ばれ、最近では日本で現代作られ、売られ、歌われる楽曲はたぶんほとんどJ-POPとひとくくりにされるのだろう。この業界の歴史、裏話を盛り込みながら話が進む。私の青春時代の曲等も語られ興味深い。CDが売れないという。ここ10年ほどの間にパソコン、ネット、スマートフォン等、世の中の趨勢が著しく変わった。CDばかりではない。「すべてのこと、もの」がITで動いているといっても過言ではないだろう。この急激な変化についていけない分野は衰退していく。まさにJ-POPもいまやその域に入ってしまっている。
    しかしこの本の著者は嘆いてばかりはいない。平成10年以後に生まれた世代は生まれたときからこのようなIT環境にあり、日本は世界のナンバーワンではないが、飢えも戦争もなく、穏やかな人々にあふれている。国内では高齢化社会、低成長社会といわれているが、世界的に(特にアフリカ等から)見ればこれほど平和で穏やかな国はないと認識されている。平成10年以後の世代はこの内外のギャップに気づき、きっと先に進んでいけると希望を述べている。そのために我々は下の世代に社会の大切なルールや敬意、尊厳、歴史を「引き継ぎ」することが今、必要だと説いている。
    この著はJ-POPという比較的軽いテーマを扱いながら、今日本人が下の世代に大切なことをを引き継がなければ次の日本の繁栄はないといっている。

  • ビジネス本とも言い難く、サブカル本でもない感じ。でも両方の要素が入ってる。「仮名」による論旨の運び方は好き嫌いがあるかもだけど(私はちょっと苦手)とっつきの良さという意味でこの形式はありなのかも。
    これまで断片的な情報しか得られずもやもやしてたものの全容がなんとなくわかった感じ。この本が扱うトピックに興味がある人なら買って読む価値はあると思う。

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