わかりやすさの罪

著者 :
  • 朝日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784023318762

感想・レビュー・書評

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  • 他の方のレビューで「感想が書きにくい」とありましたが、確かにそうだと思います。なぜならこの本は要約された分かりやすい状態が人々に受け入れられすぎている現象を拒む一冊だからです。しかし私はこの本を読んだ感想をどうしても書きたいので、自身の感想のみをここに書き残そうと思います。

    現代に蔓延る分かりやすさに、私はどうも馴染めないと思っていました。テレビ番組はまろやかな分かりやすさを提供していますが、インターネットでは、分かりやすさを推進する分かりやすいコンテンツをいたるところで見かけます。これはインターネットの性質、インターネットのヘビーユーザーの性質上、こうならざるを得なかったという背景があるのではないでしょうか。テレビやラジオなどの音声メディアと比べて、インターネットは自ら調べ、選び、読むことを強制されます。しかし強制されている、強制するの関係はいつからか逆転し、ユーザーはインターネットより偉い存在となりました。使う者がいなければ、サービスは朽ちていくのだから当たり前だと思う方がいるかと思いますが、サービスがあって人々が集まる。この流れが本来だと私は思っています。

    この逆転が起きたことにより、インターネットでは簡単に、短時間で、誰にでも分かりやすく読めるものが好まれるようになりました。これは定性的なデータではなく、定量的データとしても見られる事実です。インターネット側の人間は、そこに金の臭いを嗅ぎつけました。ここから、誰にでもわかりやすくまとまっているものが好まれ、大量生産され、分かりやすさ至上主義の時代が到来し、人々の思考を塗り替えていく流れが生まれたのだと思っています。ここまで考えたところで、私はようやくこの本と出会いました。偶然に。

    大変失礼だとは思いながら、感想を書く前にあらかたの感想を拝読しました。低評価をつけている方の本棚をのぞき、高評価をつけている方の本棚ものぞきに行きました。もしかしたら分かりにくさを良いという人と、分かりやすさを良いという人では、読む本に違いがあるかと思ったのですが、別にそうではないことが分かりました。分かりやすさを好むか、分かりにくさを好むかは、行動にも、嗜好品にも表れない。おそらく一つひとつの物事に対して疑問を持つこと、本当にそうなのかということを考える習慣がついているかどうか、それだけなのだなと思いました。つまり、あらゆる事象に対して簡単に理解できることだけを抽出しない。面倒をあえてとるという姿勢。

  • ディベートはそれ自体でイデオロギー。

    多様性とは「わかる」をしないこと。

    「まるで偶然」はフィルターバブル。
    「本当の偶然」はリアル?

    有名人の自虐は他虐になりうる。

    システムを壊すのではなく抜け道で大声を上げてるだけの人(立花孝志)

  • 東2法経図・6F開架:914.6A/Ta59w//K

  • "選択肢を前にした時に、選択する前にすべきことがある。他に選択肢はないのかを考えることだ。"(p.13)


    "あらゆる場面において「 要するに 何が言いたいの?」に応える必要なんてない。「要するに」って、必ずしもコチラの仕事ではなく、オマエの仕事でもある。なぜ、いつもコチラがかいつまんで伝える必要があるのか。"(p.33)


    "理由がないことを、思ったままのことを、そのまま言い放ってしまえるというのは、子どもの特権の一つでもある。自分の感情に理由なんていらない。先生から理由を聞かれても、答えなくていいし、考えたって答えられないかもしれない。「なぜなら」の強制は、いわゆる「大人」にさせるための教育といてはベストなのだろうが、それは、理由なんてなくても構わないという、とっても大切な自由を手放している。"(p.161)


    "私たちはいつだって、どっちでもないはずなのだ。ある状況において、それは、今のところ、ただ、どっちかであるにすぎない。だからこそ、単純な選択肢をぶつけられている状況に置かれたら、その選択肢から疑い直すことが必要になる。"(p.262)

  • 会話が成り立たない。話者の説明が悪いのか、聞き手の理解力が足りないのか。お互い責め合うのはやめよう。何もやりとりしないよりはましではないか。まずはわからないままにしておこう。世の中白黒はっきりさせるべきことばかりではない。ここは治めて、時間がたてば何か得るものもあるだろう。要約してはいけなくて、「わかった」とも言ってはいけない。そんな本の感想で書き留められることはそんなこと。もやもや感残して誰もが納得しないがそれでいい。小田和正の「言葉にできない」。詞の中の主人公が「何も考えてない」とは思わない。

  • 結論に急ぐより、行間に感じるイラダチや違和感を読む

  • なんでもかんでもわかりやすくしてしまうことが、人から考える力を奪ってしまう。与えられた情報を疑うところから始めなければ。

  • わかったようなわからないような読後感
    何事にもわかりやすさを求めるのは無茶であり、わかりやすさを優先することで損なわれる(失われる)ものは大きいという主張が繰り返されていた印象

  • 武田砂鉄のめんどくさい人っぷりが存分に出ている、ラジオの声で文章が聞こえる。

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著者プロフィール

1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年よりライターに。近年ではラジオパーソナリティーも務める。
『紋切型社会――言葉で固まる現代社会を解きほぐす』(朝日出版社)で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞などを受賞。他の著書に『日本の気配』(晶文社、のちにちくま文庫)、『マチズモを削り取れ』(集英社)などがある。

「2022年 『べつに怒ってない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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