白いおうむの森: 童話集 (偕成社文庫 3261)

著者 :
  • 偕成社
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本棚登録 : 104
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784036526109

作品紹介・あらすじ

べつの世界…ものいうおうむがいて、屋台ではたらくたぬきがいて、木の精の洋服屋がいて、死んだはずのだれかも…そこでは、時間のながれかたまでちがうとか。ふだんはいつもの風景にとけこんでいて気がつかないけれど、なにかのひょうしにとつぜん、パタン!とびらがひらかれるのです。このあとの七つのふしぎな物語を読めば、もしかするととびらの見つけかたが、わかるかもしれません。安房直子第二短編集『白いおうむの森』完全収録。小学上級から。

感想・レビュー・書評

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  • 蜂飼耳さんの解説が、素敵だったので抜粋します。
     遠くの人を思うこと
     これら7つのそれぞれの物語には、共通することがあります。それは、どの物語も、離れた場所にある相手、簡単には会うことができない相手を思う、かなしみとよろこびをたっぷりとふくんでいるということです。

     この童話集を読むと、作者はどうしてこんなふうに、会えない距離というものにこだわって書きつづったのだろうか、と思います。会えないことは、くるしく、さびしい気持ちばかりを、波のように送りつづけます。とくに、死にへだてられた別れの場合、受け入れることのほか、どうしようもありません。 けれど、こんなふうにもいえるのではないでしょうか。 人間には、死をも超える想像力がそなわっているのだ、と。物理的にはなにもできなくても、心の奥でしずかに相手を思い描くことならできます。ニ度と目の前にあらわれることがないとわかっている相手のことも、いくらでも思い描けます。胸のなかで慈しみ大切にすることならできます。

     そして、そういう心の動きが、今度は生きている人間どうしのあいだでお互いに思いやるという心の動きを生んでいくのです。これらの童話を通して、作者が考えたこと、いいたかったことは、じつは、別れのかなしみや会えないくるしみではなく、それでも生きていく前向きな気持ちや想像する力の強さなのではないかと思います。かなしみやせつなさを描いた物語が読者の心へ運んでくるのは、生の芯をゆさぶる根源的な力です。

    読者の心の底にねむっている感情を、掘り起こすような、鋭さにも満ちています。安房直子が心をこめて描いた物語は、いまなお読まれるたびに、新しくよみがえります。


    7つの物語

    雪窓
    白いおうむの森
    鶴の家
    野ばらの帽子
    てまり
    ながい灰色のスカート
    野の音


    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      「蜂飼耳さんの解説が、素敵だったので」
      ホント、上手く表現されてますよね。

      『北風のわすれたハンカチ』もそうですが、思...
      りまのさん
      「蜂飼耳さんの解説が、素敵だったので」
      ホント、上手く表現されてますよね。

      『北風のわすれたハンカチ』もそうですが、思う力があれば淋しさを乗り越えられるよ。と仰言ってくださってるみたいで、、、
      でも『白いおうむの森』はチョッピリ怖いですよね。。。
      2020/12/11
    • りまのさん
      にゃんこまるさん
      白いおうむの森 天国?への道案内に、亡くなった、大勢の人々が、みずえとミーを、とりかこんで、「どうぞ、そのねこをください。...
      にゃんこまるさん
      白いおうむの森 天国?への道案内に、亡くなった、大勢の人々が、みずえとミーを、とりかこんで、「どうぞ、そのねこをください。」「道案内に、ください。」「ください。」「ください。」と、呼びかけるところ、 …………こわーい!、、、ホントに怖いシーンでした!
      2020/12/11
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      りまのさん
      思わず耳塞いじゃうヨ、、、
      りまのさん
      思わず耳塞いじゃうヨ、、、
      2020/12/11
  • 来年2023年は生誕80年、没後30年。。。

    白いおうむの森 | 偕成社 | 児童書出版社
    https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784036526109

    ーーーーーーーーーーーーーー
    安房直子のお話を読むと、後悔と共に生きていくしかないのだなぁとシミジミと思う、、、
    何か大切なモノを忘れていないか、先を急がず少し立ち止まって考えるとしよう。。。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ◆安房直子単行本未収録作品集1~7 発行のお知らせ - 安房直子記念〜ライラック通りの会
      https://lilac-dori.haten...
      ◆安房直子単行本未収録作品集1~7 発行のお知らせ - 安房直子記念〜ライラック通りの会
      https://lilac-dori.hatenablog.com/entry/2022/11/27/113054

      会員になろうかな(なれるのか???)
      2022/12/14
    • workmaさん
      安房直子さん、お名前は存じてましたが、未読でした!これを機会に読んでみたいと思います(*^^*)
      猫丸さんにブクログ本棚で紹介してい...
      安房直子さん、お名前は存じてましたが、未読でした!これを機会に読んでみたいと思います(*^^*)
      猫丸さんにブクログ本棚で紹介していただき、新たな読書の世界が拓けた気がします…!
      2022/12/14
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      workmaさん
      猫は知らないのですが、安房直子の作品は教科書にも載ったりしているそうです。
      甘口ではないファンタジー。でも優しい気持ち...
      workmaさん
      猫は知らないのですが、安房直子の作品は教科書にも載ったりしているそうです。
      甘口ではないファンタジー。でも優しい気持ちになれると思います。。。
      2022/12/14
  • 切なくて物悲しいストーリーと安房直子さんの優しい語りが混じり合いふわふわと不思議な世界へと連れてってくれた。

  • 『きつねの窓』を初めて読んだのは、小学校の教科書で。その幻想的な話にすっかり引き込まれてしまい、書店でも本を買ってしまった。
    久しぶりに安房直子さんの世界に浸りたいと思い、図書館で借りてきました。

    『雪窓』…幼い娘を亡くしたおでん屋台のおやじさんが、ある日、成長した自分の娘のような客が忘れていった片方の手袋を持ち、再会できるかもと、山を越え…。

    『白いおうむの森』…宝石屋にいる白いおうむに自分が生まれる前に亡くなった姉の名を教えて…。

    『鶴の家』…禁猟になっている丹頂鶴を誤って撃ち殺した男性。結婚したある夜、訪ねてきた丹頂鶴を思わせるような女性がお祝いに置いていったのは青い大きな皿。それに盛り付けると何でも美味しくなるが、家族がひとり、二人と亡くなるとそこに鶴の模様が現れて…。

    『野ばらの帽子』…山の別荘に家庭教師として招かれた男性は、家へ行く途中別荘を見つけられず、先を歩く女の子に聞こうと声をかけるが逃げられてしまい、追いかけるうちに…。

    『てまり』…お姫様には決められた遊び相手の子どもがいたが、はしかで来られず泣いているところ、鈴が中に入った綺麗な手まりをもった女の子が庭に入り込んできて、歌を歌いながら手まりをついた後、たもとに入れて除くとそこには不思議な世界が…。

    『ながい灰色のスカート』…川に流されたかも知れない弟を探すうちに、大きな長い灰色のスカートをはいた人に出会い、スカートのひだの間から弟の声が聞こえてきて…。

    『野の音』…服のボタン穴から不思議な音が聞こえてくるため、ボタン穴かがりを教えてもらいにその洋服店で洋裁師として働かせてもらいに訪ねて行く少女。それっきり帰ってくることなく、不審に思った兄が、妹を探しに洋裁店に働きに行くのですが…。

    どの話も、幻想的で、ドキドキして、少しサワッとするような怖さも感じたり。そのような二つが表裏一体のお話で、これぞ、安房直子作品!というものでした。
    お話を「書く」というより「描く」と表現する方がふさわしいと思える、情景が目の前に広がるお話ばかりでした。
    想像力の翼が広がって、どこにでも行けると、そう感じました。

  • これは復刻版なので、私が読んだのとは表紙が違うんですよね…。この「白いおうむの森」はそのイメージが脳内に凄く強く残っていて…。沢山の白いオウムの正体に気づいた時のあの総毛立つような感覚が忘れられません。

  • 雪窓は、たぬきの存在が温かい。野ばらの帽子、怖いわ~。野の音、社会派ね。

  • 子供の頃 大好きだった安房さんの作品が懐かしく、Kindleて購入しました。

  • 安房直子の童話集。
    異界とこちら側の境目でうろうろするようなお話。
    やっぱり物悲しい。

    うさぎ屋http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4265928366のサフランの物語あたりはエンデっぽかったけど、こちらはもっと日本風。
    昔風の文章にあまんきみこを連想した。教科書繋がりか。
    白いオウムの森は谷山浩子の電報配達人がやってくるを思い出した。

  • 購入日:2010/06/18
    読了日:2010/06/19
    2冊合わせて、どの話も極端に悲しいわけではないけど、楽しかったり、面白かったり、わくわくする話ではない。
    ちょっと怖いような話や、しんみりする話が多いように感じた。

    好きだったのは、「てまり」。
    最後にお姫さまが、てまりをくれた女の子がもう子どもとして遊ぶのを止めたこと気付いたところ。
    ちょっと違うけど、キキララの白鳥座のお姫さまがダダをこねて遊びに来ていた話と重なった。

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著者プロフィール

安房直子(あわ・なおこ)
1943年、東京都生まれ。日本女子大学国文科卒業。在学中より山室静氏に師事、「目白児童文学」「海賊」を中心に、かずかずの美しい物語を発表。『さんしょっ子』第3回日本児童文学者協会新人賞、『北風のわすれたハンカチ』第19回サンケイ児童出版文化賞推薦、『風と木の歌』第22回小学館文学賞、『遠い野ばらの村』第20回野間児童文芸賞、『山の童話 風のローラースケート』第3回新見南吉児童文学賞、『花豆の煮えるまで―小夜の物語』赤い鳥文学賞特別賞、受賞作多数。1993年永眠。

「2022年 『春の窓 安房直子ファンタジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安房直子の作品

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