幸せの日本論 日本人という謎を解く (角川新書)

著者 :
  • KADOKAWA/角川マガジンズ
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784040820231

作品紹介・あらすじ

脳科学・ロボット工学者で幸福学の第一人者による実用的日本人論。日本が持つ幸福の源泉や多様性を受容する日本人の特徴などを分析し、誰もが幸せになれる日本型システム、共生社会の未来について考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 日本のことを肯定的に捉えられる
    未来は明るいと信じたい。

  • いわゆる逆ギレ「日本ええじゃないか論」。それはそれで良い。しかし、「世界連邦運動の思想が日本国憲法第9条に書かれている」、それを「奇跡」という時、著者はやはり遊んでいる、いうことになる。思想や歴史に対して真剣ではない。やはり昨今大流行りの調子のいい「デスマス」新書。

  • 日本人を始めとする東洋の特性を、全体の調和を考える、メタ志向、システム志向とし、西洋の勝ち残る個を優先する行動や考え方と対比させながら、肯定的に日本を捉える論を展開している。
    後半は、理想論の展開が自分の理解の先に行きすぎ、置いてけぼりになったが、前半だけでも興味深い書。

  • 日本人は、中心に『無』がある文化を持っていて、どんな新しいことも矛盾なく受け入れ、やがて日本化する」

    自由意思は幻想です。  人々は自分の意識の上に自由意思が生き生きと湧き上がるように感じますが、これは幻想に過ぎない。

    諸法無我の「無我」とは「欲を捨てろ」だと解釈されることがありますが、これは間違いです。「欲があるように感じるかもしれないが、それの源は、我ならざるものである」

    日本の中心には、何もない。言い換えれば、無常、無我、無私がある。これが、中心に自由と愛を持つアメリカとは対照的である。そして、中心に、無常、無我、無私があるからこそ、どんな新しいものも受け入れ、そして自分化していくことができる。無限抱擁です。理論武装せず、無邪気かつ素朴に受け入れ、あるときは勘違いし、あるときは曲解して、自分のものにしてきました。

    「最初のアメリカ人(ネイティブアメリカン)は、謙虚な自尊心を持っていた。その性格にも教えにも霊的にも、傲慢さは見られなかった。言葉をみごとにあやつるものは、語らぬ被造物より優れている、などと考えたりはしなかった。それどころか、それは災いをもたらす才能と思われていた。最初のアメリカ人は、沈黙を深く信じていた。沈黙は、完全な平衡のあかしであるから」

    彼らの言葉では、「私の」と「あなたの」が同じ「ラウ」という言葉で表されるのに対し、ヨーロッパ人は「私の」と「あなたの」を区別する、と驚いて述べます。

  • 日本の組織は決断に時間がかかる構造になっている。

    米国の中心には愛と自由がある。日本の中心には無(無常、無我、無私)がある。

    紀元前5世紀頃のソクラテス、ブッダ、老子などが活躍した時代までは東西ともに中心は「無」である考えが普通だった。それが2,500年にわたって生きながらえてきたのが日本。

    論理は完全ではなく、むしろ世界の本質を厳密に記述するには不完全。だが、部分的な事柄を記述するには便利なもの。

    マンデルブロー集合をみてもあらゆる物事は我々の直感以上に密接に依存し合っている。

    哲学は「である」についての学問。倫理学は「べき」についての学問。

    日本システムの特徴は「結構」や「適当」などの二重性を持つ。

    各人が目標と夢を持ち、つながり合って前向きに自分らしく生きることが幸せの為に重要。機械的、モジュール的組織が徹底すると、人は個性を奪われ、与えられた仕事を与えられた分だけ行うような不幸に陥る。

    日本人のほぼ10人に1人は友達がいない。つながりは弱くてもいいので、誰もが助けを求められる協力的・相互依存的社会を創るべき。

    人間の本来の目的は、生きとし生けるものの幸福と平和。自分の仲間だけの救済ではない。「眼前の目的を追求した者が勝ち」という近代流の目的明確化しすぎずに、最終目的を問う事。「エネルゲイアとキーネーシス」

    問題解決の進め方は仮説を立てずにいろいろやってみる事。複雑系の社会において、計算しきる事は不可能。

    全体調和モデル推進派は、勝ち残りモデルも十分理解し、彼らの理解範囲も理解した上で、彼らに戦略的にメッセージを発する必要がある。それができるのはすでに両者を体験し、身につけている知的で真面目な日本人だけ。

    200年以上続いた会社数ランキング
    1位:日本3,113社
    2位:ドイツ1,563社
    3位:フランス331社
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    5位:オランダ292社

    長寿企業は、目先の利益ではなく、地域や社会とのつながりを重視し、社員の幸せを大事にし、社会全体が調和し共生する事を目指している。

    利益を第一優先に考えないからこそ、その姿勢自体が多くの者の共感と支持を集め、支援が得られる結果として利益がでる。

    近代西洋型ないし20世紀型パラダイムでは、金モノ地位を手にいれる事が幸せの近道と考えられていたが、幸福学の多くの研究結果はそれが間違いである事を示している。人は全体調和モデルで幸福になる。

    地域活性化を事業として行う場合、地域の課題は地域ごとに異なるので、自動車の大量生産のように画一化された形で対応できない。大企業型ではなく、森のようなネットワーク社会で多様な問題を多様なステークホルダーの協力によって解決する事。多品種少量生産を可能にする巨大で緻密なオンライン何でも屋マッチングサービスを創る。

    日本は「和」「美」「技」の国

    「各人が自分の為に勝手に生きていたら全体もきっと上手くいくだろう」という根拠なき楽観の時代は終わりにして、「みんながみんなの事を考える、安心で優しい世界」に転換する。

    「会社は株主のみならず社員や社会のため」という全体調和の視点を持てば今の社会経済システムのまま、新しい社会に対応できる。

    全体調和モデルの理想型を目指すならば、本質的な目的以外の市場の特徴を利用して儲けるのは詐欺だと見なすべき。社会になんら富をもたらしていない。

    市場経済の神の見えざる手は存在しない。格差の大きい社会では幸福度が下がる。

    幸せの総和は個々人の富の総和では計れない。

    みんなの幸せに資する事がよりよい社会経済システムである。

    全体が調和し、共生する世界の為に、世界でもっともサステイナブルな日本が世界を優しく包み込んで日本化する事。これが日本の運命。

  • 諸行無常とは、諸法無我とは?

  • 【感想(追記あり)】
     幸せについての著者の考えは面白い。この部分だけでもおすすめ。そして「中心に何もない」を説明していく上で、既存の種々の概念をアナロジーとして使ってまとめる手際が素晴らしい。また、よくある日本万歳系の本とは違い、他国への偏見・攻撃もほとんどないのも好印象。

     他方で日本人論としては、私は好きになれなかった。意図的とはいえ、やはり本質論的な主張に留まっているので。あと、褒める際に根拠レスになりがち。
     日本人論を漁っている人にとっては、本書を(額面通りに日本人論として受けとると)無難なリバイバルになりかねないので、むしろ日本人論を適度に紹介する本として受けとる方が自然かもしれない。

     なんにせよ、この日本人論〔日本論・日本文化論・国民性論……〕を受け入れ(そして実践につなげることができ[追記:2016.02.04])れば、「幸せ」になれそうだ。

     著者のブログから販売告知記事
    http://takashimaeno.blog.fc2.com/blog-entry-334.html

    【版元PR】
    脳科学・ロボット工学者で幸福学の第一人者による実用的日本人論。西洋と東洋を俯瞰しながら、多様性を受容する日本人の特徴などを分析し、誰もが幸せになれる日本型システム、共生社会の未来について考察する。
    http://www.kadokawa.co.jp/product/301502001293/

    【簡易目次】
    はじめに [003-012]
    目次 [013-020]

    第1章 これまでの日本論・日本人論・日本文化論 021
    第2章 日本人の十の特徴とは? 029
    第3章 日本は中心に無がある国 049
    第4章 東洋と西洋の二千五百年を俯瞰する 059
    第5章 世界の中の日本の二千年 087
    第6章 日本人の十の特徴は良い特徴である 125
    第7章 日本人は女性的か、男性的か? 149
    第8章 外国人に「日本人とは」を伝える方法 159
    第9章 日本はどれくらい特殊なのか? 173
    第10章 全体が調和し、共生する未来社会 191
    第11章 繁栄の時代がやって来る 213

    おわりに [246-251]
    「参考図書」二十四冊 [252-253]
    参考文献 [254-255]

  • 地味なタイトルだが、かなり意欲的な著作。主張のすべてが理解できたり納得できるということはないものの、読んでいてウキウキするような気分になったのは間違いない。

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著者プロフィール

慶應義塾大学SDM研究科教授・ウェルビーイングリサーチセンター長、一般社団法人ウェルビーイングデザイン代表理事。1962年山口県生まれ東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、キヤノン入社。カリフォルニア大学バークレー校Visiting Industrial Fellow、慶應義塾大学理工学部専任講師、同助教授、同教授を経て2008年より現職。『幸せのメカニズム―実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『幸せな職場の経営学』(小学館)、『ウェルビーイング』(前野マドカ氏との共著・日経文庫)など書著多数。

「2023年 『実践!ウェルビーイング診断』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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