ふたりの距離の概算 (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003251

感想・レビュー・書評

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  • 相変わらず爽やかな青春ものとは言いがたい少しほろ苦い
    物語。このほろ苦さは青春物の青臭さとは真逆の老成と言ってもいいぐらいのものから出てきている気がする。相変わらず物事に諦観している主人公。言い換えれば爺むさい。

    こんな閑寂枯淡な高校生活を描いた作品はそうそうないだろうなぁ。

    読んでいる間はアニメシリーズを見ていたのでイメージし易かった。今作品もアニメになること希望。
    そして古典部シリーズの続刊も希望。

  • なんとも切ない話ですね。
    この本の名前が、距離が、色んなところにちりばめられていました。
    マラソンの距離とか人との距離感とか。
    ほんと『ふたりの距離の概算』

    最後ははっきり終わらされてないけども、切ない終わり方でよかったな。



    @手持ち本

  • 雛がとてもかわいらしかったので少しびっくりしましたが、ほかのも確かにこんなしょっぱさでしたね。
    でもやっぱり、クドまでに比べると、お話がとってもかわいい。
    そして折木さんの変化に驚きが隠せません。
    最初、大日向が折木さんのことが好きで、千反田さんがどう見ても好きそうに見えるのに、応援するみたいなこと言われて怒ったのかな、そんなんだったら嫌だなと思っていたのですが、幸いに見当はずれでした。よかった(笑)

  • いつもクールな奉太郎が、大日向の入部取りやめについて真剣に推理します。
    しかも、マラソン大会中に!
    「ただ走るには長すぎる…」と、20キロのマラソン中に走ったり、歩いたりしながら関係者が追いついてくるのを待ちつつ、独自の理論を展開していきます。

    省エネの持論通り、ただ走るより考える時間にしたいと…。
    なかなか面白いヤツです。

    そろそろ恋愛ムードもでてくるかと思いきや、相変わらずの雰囲気。
    のんびり待ちましょう^^v

  • 古典部シリーズ5作目。
    このシリーズを読む度に思うこと…
    奉太郎も里志も何故こんなに頭がいい、賢いのだろうか? と。
    自分が高校生だった頃に、こんなふうに考えることはなかったなと。
    自分と比較してしまうことが間違ってるだろうし、
    彼らが単に頭がいい、賢いだけなのかもしれないし、
    そもそもフィクションの世界なんだものね。

    もうひとつ思うのが、摩耶花の奉太郎への態度。
    この原因は描かれていなかったよね?
    今後描かれることはあるのだろうか?

    作品としては、ひとりの女子生徒の心変わりの理由を
    推測するという物語を、何か大きな事件があるわけではなく、
    一冊の作品として描いているのだが、
    よく一冊もたせられるな…
    というのが感想でした。

  • シリーズを読んで。
    ミステリーの謎解きは、正直…と思う部分もありました。私個人としては、キャラクターが織りなす人間模様や、いい具合に隠し味の利いた会話に魅力を感じた作品です。

    今とてもホータローにエールを贈りたい!

    もし次回作があるならばぜひ読みたいですね。

  • 『ふたりの距離の概算』は、例の古典部シリーズの最新作です。まだアニメ化もされていません。

     なにしろ古典部シリーズなので、物語は例によって地味です。しかし構成は凝りに凝っています。

     内容は、校内のマラソン大会の最中に、主人公が延々と推理を巡らせながら走るというもの。彼に与えられた謎はこうです――「古典部に入部しようとしていた女子生徒は、なぜ、ある日突然に入部を拒否し立ち去ったのか」。

     主人公はこの謎を解こうとします。それまでの、その女子生徒との会話や言動をひたすら回想し、そしてそれら回想シーンの中から、手がかりを解答を導き出していくのです。そこに犯罪めいた要素はほとんどなく、いわゆる「日常の謎」の積み重ねとなっていきます。

     こうした推理の果てに立ち現われてくる真相には、驚かされるというよりも感心してしまいました。散りばめられた手がかりと伏線が丁寧かつ巧妙に、まるで網のように張り巡らされ、最後にはその網でガバッと物語全体がすくい取られます。

     この作品を例えるなら、精巧なからくり細工といったところでしょうか。よくここまで精密に作ったものだと思います。

     またその他にも、物語の舞台をマラソン大会という場所に設定したことに、作者のセンスを感じます。それはなぜか。

     まず「日常の謎」には、ある難点があります。日常的な情景の中に手がかりがさり気なく散りばめられており、それを元に謎が解かれる……という展開においては、時として、殺人や凶悪犯罪を取り扱うミステリよりもご都合主義的になることがあります。

     どういうことかというと、主人公がたまたまその手がかりを見聞きしていたり、その主人公の話を聞いただけのはずの探偵役が、まるで自身の実体験のようにその話を語り出したりすることがあるのです。そのあたりが、僕には「日常の謎」ものの難点というかご都合主義的に見えるのです。

    『ふたりの距離の概算』は、そうした難点に対するひとつの解決法を示していると思うのです。

     この作品では、探偵役は、すでに全ての手がかりと伏線を体験しています。ですから彼は、自分自身のセンスに任せて、謎の解決に関係ありそうな手がかりだけを記憶の中から抜き出せばいいわけです。言うなれば、先に書いたご都合主義を先回りしているんですね。ですから違和感をおぼえません。

     さらに、舞台をマラソン大会の場に設定することで「推理」と「行動」とが並行しており、読者を飽きさせません。またそこに、人間同士の距離感というテーマも盛り込んであるので、文学的な色香も感じます。

     こうした工夫が、僕の目にはとても魅力的なものとして映ります。

     ただ、探偵役が自分の記憶の中から手がかりと伏線を抜き出してくるという書き方は、ある意味でとても危険です。

     なぜなら、必要最低限の手がかりが示されることになるので、読者がすぐに真相に気付くかも知れないからです。

     そこで今度は、読者に真相を悟らせないための工夫も必要になってきます。『ふたりの距離の概算』にはそれがあります。決して派手で長大な作品ではありませんが、小振りなサイズの中に信じられないほどの精妙な細工が込められているのです。

     僕の好みで言えば、この『ふたりの距離の概算』は、一連の古典部シリーズの中でも一番好きかも知れません(二番目は「心あたりのある者は」、三番目は『愚者のエンドロール』)。

  • 面白かった!買ってしばらく暖めてしまいましたが報われました。
    でもちょっとなんか物足りないような。若干淡白すぎたかも。

  • 古典部シリーズ第5巻です。前巻の"遠まわりする雛"が1年生最後だったようで、本巻から奉太郎達の学年が1つ上がって2年生になっています。古典部も新しい仲間を迎えて、順風満帆な滑り出しとなるでしょうか。本巻は、まず"ふたりの距離の概算"というタイトルがいいですね。この本の内容をとても上手に表現しています。これ以上的確な言葉はないですね。また、今までと異なり、奉太郎が積極的に事件というか厄介事に関わっていきます。えるへの気持ちに気づいたからでしょうか。これを気に素直になってくれると良いのですが。

  • 米澤先生はキングの「死のロングウォーク」を意識なさったと後書きに書いていらしたけど、私はどちらかというとカズオ・イシグロの「日の名残り(The Remains of the Day)」を思い出す。行程の途中の主人公が過去を振り返りながら進んでいく物語。まあ、奉太郎はスティーヴンスほど「あてにならない語り手」ではないけれど。

    そのカズオ・イシグロを思い出す方式が私は好きです。話の展開も謎解きも申し分ない。

    ただ不満があるとすれば、極寒の雪降る中マラソン大会を3年間やらされた身としては、途中ショートカットの上おだんご食べるなんてズルイ(私怨です)!
    ……まあ、うちのマラソン大会はさすがに20キロも走らなかったけどね。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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