楠の実が熟すまで (角川文庫)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 81
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041003886

作品紹介・あらすじ

将軍家治の安永年間、京の禁裏での出費が異常に膨らみ、経費を負担する幕府は公家たちに不正があるのではないかと睨む。密命が下り、御徒目付の姪・利津が女隠密として下級公家のもとへ嫁ぐ。闘いが始まる!

感想・レビュー・書評

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  • 禁裏での出費増大疑惑を探索するため、女隠密が下級公家の家に嫁として潜り込むなんて、アニメや映画ドラマの世界の話かと思っていたが、史実としてあったそうだ。
    著者はその史実に基づき、作家の創造力を駆使し、時代ミステリーに仕上げた。
    その探索も、楠の実が熟すまでと期限が設定され、タイムリミットサスペンスともいえるし、公家の家に幽閉されている主の弟とは何者なのかとの謎もある。
    何にも増して、ヒロイン利津が、嫁いだ公家の康昆に次第に心を寄せることになり、隠密仕事との狭間で苦悩する様に恋愛小説の面もあり、見事なエンターテイメントになっている。
    映画化やドラマ化すれば、きっとヒットするのではないか。その場合のヒロイン役は・・・

  • 公家の改ざん帳簿を追いかける公儀隠密が不振の死をとげる。次に内偵に入った隠密は公儀の姪、武家との婚約を相手の不慮の死によって不意にされたという経緯のある利発な美女…。こんな時代ミステリーの設定良く考えるなぁ。

    と思ったら、史実にもある事件らしい。勿論ものすごく脚色されているということだが。

    ミステリーとしての出来も良く、構成もキチっとはまっているし、キャラ設定も立っている。大傑作!には今一つパンチが足らないようにも思うが、まとまっていて良い作品。さすがの諸田ブランド!

    余談ながら、これ読んでる時偶然、樟葉(作中の楠葉)を通りかかってるねんなぁ。駅内の楠の木(京阪電車沿線ののちょっとした名物です)を通り過ぎた時は非常に感慨深かった。

  • (2015-12-27L)(2016-01-24L)(2016-02-14L)

  • 幕府の目を巧妙に掻い潜り不正を行う公家に『公儀隠密』として輿入れした利津の物語。時代エンターテイメント創作?然に非ず。史実を元にした時代小説。ミステリ性の高さもさることんながら利津の心模様を色情豊かに描き切った素晴らしい作品。想いの強い主人公が己を突き通す物語って本当に素晴らしい。

  • 武家と公家の争いの中、武家の縁戚の娘が公家へ嫁入りし、潜入捜査をする…という物語。
    時代ミステリーだなぁと思ったら、実話を元に描かれたそうで、同材で平岩弓枝さんも短編を書かれているとか。こちらもチェックしなくては。
    正直潜入捜査(裏表紙あらすじ談)というには言いすぎのような?という雰囲気。
    なにせ素人探偵より素人。それでもがんばった主人公なのでした。
    旦那さんの方の視点でも物語が知りたかったかも。

  • L
    諸田ワールド。
    どこかでこの手の話を読んだことがあるような?女を妻女として送り込むのは良くある話なのか。
    不覚にも最後はほっこり。だれが刺客なのか?のミステリー感も味わえる。

  • まるで時代劇版女007である。いや、活劇アクションもなければ新兵器もボンドガール(ボーイ)も出ないけれど。
    禁裏の口向役人、御賄方の不正出費を暴くため京、西町奉行として遣わされた御目付山村信濃守のもと、放った密偵は尽くが殺害された。
    最後の手段として隠密御用として公家御取次衆高屋家へ嫁入りし内偵捜査をすることに。期限は初冬、楠の実が熟すまで。主人公利津は、役目を果たし、謎を解いて御用を全うできるのか。
    緊張感あるタイムリミットサスペンス。

  • 冒頭の得体の知れぬものの恐ろしさを描く様子からぐっと入り込む。
    謎に迫っていく場面と、屋敷の人々と密になっていく場面での
    主人公・利津の張りつめた心情が揺れる様から目が離せない。

  • 史実を中々興味深く料理できた小説だと思った。

  • 120

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著者プロフィール

諸田玲子
静岡県生まれ。上智大学文学部英文科卒。一九九六年『眩惑』でデビュー。二〇〇三年『其の一日』で吉川英治文学新人賞、〇七年『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞、一八年『今ひとたびの、和泉式部』で親鸞賞を受賞。著書に『お鳥見女房』『あくじゃれ瓢六』『きりきり舞い』シリーズのほか、『四十八人目の忠臣』『波止場浪漫』『帰蝶』『女だてら』『尼子姫十勇士』『しのぶ恋』など多数。

「2023年 『其の一日 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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