炎上する君 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041005675

作品紹介・あらすじ

散歩中に拾った、自分と同じ機種の携帯電話。その携帯に届いたメールに何の気なしに返信した私は、返ってきた温かいメールに励まされ、やがて毎日やりとりを始める-(「空を待つ」)。我々は足が炎上している男の噂話ばかりしていた。ある日、銭湯にその男が現れて-(「炎上する君」)。何かにとらわれ動けなくなってしまった私たちに訪れる、小さいけれど大きな変化。奔放な想像力がつむぎだす愛らしい物語。

感想・レビュー・書評

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  • 偶然、家の本棚にあり、手に取った小説。もともと西加奈子さんは好きなので、読んでみた。

    情景がころころ変わっていく、まるでSFのような短編集。その中でも、タイトル「空を待つ」の「ひとりだと嘆いても、手を伸ばしても、私の体は世界から抜け出すことはない、死ぬまで。私は分かっている。分かっている。」というフレーズが印象的だった。孤独が重なって、自分が何者か分からなくなる、そんな感覚を違和感なく文章に落とし込んでいて、読みながらいつか見た東京の人混みを思い出したりした。切なさが良い。

    最終話「ある風船の落下」の「何かを望み、欲し、それが得られなかったり、それに裏切られたりして、傷つくことを避けるために、僕たちは望みを捨てるのですか。そのために、地上を捨てたんでしょうか」という言葉は、ずっと大事にしたいと思う言葉だ。
    全体を通して難しい表現もあるけれど、自分に自信を失いかけた時、失敗が怖くなった時、手に取りたい小説です。

  • 久しぶりの短編集&西加奈子先生の作品を初めて読む。

    8つの短編集を読んで、僕には理解が少し難しい作品が
    いくつかあって、読解力や想像力が乏しいと思ったのが
    読み終えての印象です。

    1作品あたり僅か20ページ。
    少ないページ数の中、物語と不思議な世界観が出来て
    "世にも奇妙な物語"風なテイスト?と思っていた。

    しかし、ピースの又吉直樹さんが作品毎に解説で
    この作品のテーマ性が見えてきて
    その"テーマ"に沿って思い返すと納得が行きます。
    改めて又吉直樹さんの読解力に脱帽です(笑)

    他、短編も女性の視点からコミカルに書かれており
    不思議な西加奈子先生の世界観を味わうでしょう!
    個人的に読んで面白いと思った短編は以下2つです。

    ・私のお尻
     相当な魅力あるお尻。触ってみたいと思った(笑)
     最後に"部屋に預ける"という斬新さに喝。

    ・ある風船の落下
     こちらは読んでいくと理解できました。
     ストーリーも面白いので、現代の問題にも関わる話。

    絶望するのは、まだ早いかもね(笑)

  • 好きな作家、西加奈子という事が今更ながら誇らしくなる。
    そして巻末又吉さんのコメント。
    『絶望するな。僕達には西加奈子がいる。』

    今まで読んできた作品とはまた種類が違い、
    あ、これはファンタジー系なんだ〜と呑気に読んでいたが、一気に西加奈子が描く世界と、いつもの心強さで埋め尽くされていく。

    ぶっ飛んだ設定もまるで映像を見るように、リアルに感じることができるのはなぜか。
    感情移入してしまうのはなぜか、そして最後はエネルギーをもらって、気がついたら読了。

    またいつか読みたいと思う。

  • この作風の西さんもっと読みたい!!
    表題作の「炎上する君」女たちのエネルギー、すり減り方がよかった!!「ある風船の落下」憂鬱さとユーモアのバランスが好き。

  • 感情移入する前に物語が終わってしまう(気がする)のと、頭の切り替えに苦労するのとで「短編集」にニガテ意識がある。
    西加奈子の今作も8遍から成る短編集ということで読むかどうか迷ったが、ストレスなく一気に読了できた。

  • 短編8話。
    不思議なのに、リアルで、ちょっと
    切なくて。
    太宰治がでてきてにやけた。

    又吉の解説の最後の、
    絶望するな。僕達には西加奈子がいる。
    で泣きそうになった
    ほんとそうだと思った。

    どうです?
    エクレアでもすごく見つめませんか?

  • 「炎上する君」「ある風船の落下」が好き。

  • 又吉直樹さんの「第2図書係補佐」での紹介のお陰でこういう作品に出会えた事を感謝する。
    自分だけでは絶対に手を出さない作品だ。
    だって、わからない、何が言いたいのか!
    いや、言いたい事がハッキリ分からないのだが、作品を読んでいると自分の内面を探り始め、同期していくような思いがしてくる。
    そして全作を通じて感じることは「自己の存在意義」に関する不安と探求なのだろうかと思った。
    「舟の町」では現実生活に打たれすぎて苦しんだ末にその苦悩から救い出してくれる町にたどり着く。
    これなどは疲れた人間が欲して止まない「許し」の溢れる自分のための社会なのではないだろうか?


    巻末の解説で又吉さんが
    「尊敬する作家の素晴らしい作品」
    と絶賛し「気がつくと自分が芸人であることさえ忘れ笑っている」などとも記している。
    どうもそこまで辿り着けない私はとても不安なのだ。
    いったい自分の読書理解力というのはどんなものなのだ。
    このままの状態でほんを読み続けて意味があるのだろうか。

    とはいえ、自分の好みの作品ばかり追いかけていては読書の幅も人間も広がらないだろうから、わたしには意味のわからないそんな作品に首を突っ込む機会を得てありがたい。

  • 収録されてる短編に通ずるのは、人は簡単に孤独になる(特に都市においては)し、何の為に生きているのか?みたいな自問自答状態に陥りがちで、人と繋がりたい繋がっていたいと願ってる生き物だということ。

    「空を待つ」や「舟の街」は都会で1人何か頑張ってるけど、うまくいかなくて、先が見えなかったり、孤独を感じてるような時に読むとグサグサーッと心に刺さってきそうな内容だった。しかもクスクス笑ける。
    昔、長らく暮らしてた街や通りの名前が作中にちょいちょい出てきてとても懐かしい気持ちになって、自分があの通りを歩いてた時の情景が目の前に浮かんだりもした。
    表題作の「炎上する君」も良かった。不器用すぎて意固地を通り越したおひとり様女子が2名。結局、恋に落ちて女性になった。

    「ある風船の落下」や「トロフィーワイフ」なんてどう思いついてどう書き始めたらこんなお話が生み出せるのやら。引き出しの広さ?がすごい。面白いなぁ。

  • 生きることは人と関わり合うこと。
    人と関わり合うことは傷つくこと。
    それでも誰か一人でも理解者がいれば強くなれるということ。
    そんなメッセージを受け取った気がする。

    読むと元気が出る物語。

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著者プロフィール

1977年イラン・テヘラン生まれ。2004年『あおい』で、デビュー。07年『通天閣』で「織田作之助賞」、13年『ふくわらい』で「河合隼雄賞」を、15年『サラバ!』で「直木賞」を受賞した。その他著書に、『さくら』『漁港の肉子ちゃん』『舞台』『まく子』『i』などがある。23年に刊行した初のノンフィクション『くもをさがす』が話題となった。

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