子の無い人生

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 491
感想 : 54
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041015568

作品紹介・あらすじ

酒井順子、はたと気づく。
独身で子供がいない私は、誰に看取られる?
『負け犬の遠吠え』から12年、未産女性の今とこれから。

30代は既婚女性と未婚女性の間に大きな壁がありました。
結婚していなければ単なる「負け犬」と思っていた酒井順子は、40代になり悟ります。
人生を左右するのは「結婚しているか、いないか」ではない、「子供がいるか、いないか」なんだと。
期せずして子の無い人生を歩む著者が、ママ社会、世間の目、自身の老後から沖縄の墓事情まで、子がいないことで生じるあれこれを真正面から斬る!

感想・レビュー・書評

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  • 【307冊目】負け犬の遠吠えで一役有名になったエッセイスト・酒井順子さん。

    「負け犬」とは、未婚・子なし・三十代以上と定義したが、読者の声で、結婚しているのに子どもがいない人について思いを馳せたそう。

    酒井さん曰く、出産が婚姻と強く結びつく日本では、結婚それ自体では結婚が完成したとはみなされず、1人産んでも「2人目は?」とのプレッシャーにさらされ、2人産んでようやく結婚が完成したとされるのだそう。

    以降、子の写真入り年賀状から入り、沖縄伝統文化における独身女性の立ち位置、女性政治家、不妊、養子縁組、子なし男性などなど、様々な角度から子なし族のことを考えている。

    気になる話題だったので手に取ったが、エッセイをきちんと読むのは入試問題以来じゃないだろうか笑。ひとつの話題が7ページぐらいなので、さくさく読めるし、文体もどちらかというと話し言葉に近く、こりゃあハマりそう。

    ただ、未婚とは異なり、子なしは生殖能力などのデリケートな問題にもかかわってくるので、当事者の方々が本書をどう読むのかは少し気懸り。筆者は危ういラインを歩みつつも、最後には子なしを肯定するのでまぁ誰も傷付けていないのかな…?

    1つ気になったのは、子なし族の看取りを誰がするのかというテーマが全編を通してちょくちょく登場すること。筆者の世代や年齢(1966年生まれ)がそうさせるのかもしれないが、自分が子なし族のとき、そんなことは考えたこともなかった。介護が必要ならお金で解決すればいいし、死んだ後自分の墓がどうなるのかなんて気にしたって詮無い。筆者は、自分の姪が筆者の看取りを嫌々担うのだろうと書いているが、私の場合親戚の縁が薄いせいか、その発想は全くなかった。

    あと、やっぱり「子ナシ男性の場合」の項がおもしろかった。筆者も同じ子なしなのにどうしてここまで分かるのだろうか笑。「子供を持つことに積極的にならない男性というのはすなわち、自分の中の、ロマンチックな部分やナイーブな部分を大切にしたい男性なのでしょう。女性は妊娠することによって、子供に自分の領域が侵食される実感を身体で得るわけですが、男性はそれが不可能。頭でのみ考えていると、どんどん怖くなるのではないか。それを別の言い方で言うのであれば、『自分好き』ということなのです。」
    いやぁ、心当たりあるわぁ…苦笑。自分のことが好き、自分のしたいことをしたいというのは当然の感情であり、それを捨て去れという方が無理な話。私の場合、子供ができてみて初めて、自分以外の個体を自分以上に大切にするという感覚が理解できたわけです。ただ、いわば自己愛からの離脱というのは、冷静な頭じゃ難しいかもなぁ。

    もうひとつ印象に残ったのは、若い時は自分だけのために生きることができるが、歳を取ると誰かのために生きたいという願望が生まれるということ。それを理由として子を産むのはエゴであるも筆者自身認めているが、その年齢になると感じる埋め難い空虚な気持ちがあるんだろうなぁ。

  • 子どもの仕事は、親の最期を看取ること。自分だけの領域を、子どもによって荒らされたくない。「可愛い子ども」しか可愛いと思えない。

    子どもを持つことに前向きになれない人に読んでほしい。共感する項目も多いです。

  • 初めての作家さんだけど、とても深イイ作品だった。子の無い人生を初めのうちは面白おかしく論評しているけど、半ば以降はまさに正論をきちんと問題提起提案していて勿論 面白おかしい調子はそのままになかなかのエッセイが続く!総合評点が高くないので如何なものか と思いつつ読み始めたがアタリの作品でした♪

  • 結婚してなお酒井順子さんのお世話になろうとは…。
    女性を左右するのは、既婚未婚ではなく、子どもがいるかいないかなのだと本当に思う。
    そして、だからこそ今は「子どもは貴重品、アクセサリー」なのだという意見に心の底から納得してしまった。

  • 『セックス・アンド・ザ・シティ』の主人公のキャリー・ブラッドショーという人の職業がコラムニストだったから、こういう感じのコラム(エッセイ?)を読むと、キャリーのことをたまに思い出すんだけど、酒井順子本人も自らをキャリーに重ねて心強く思っていたんだなあ。
     
    “戦中・戦後は、今とは比べものにならないほど、皆が貧しかった。それでも人々は結婚していたのであり、我々が今結婚しないのは、経済的理由だけではない。決して、「結婚できないのは社会が悪いから」と、責任転嫁はできない状況です。”(p.122)と書いてあったけど、今は「皆が」貧しくないから経済的理由になったりするんだと思う。
    皆が貧しかったらそれを理由に忌避されたり自信喪失につながらなさそうだけど(貧しいのが「普通」だから。)、正規・非正規とか分かりやすい身分格差になるとけっこうそれが効いてる人も多いと思う。

  • 「子アリ族」
    「既婚子ナシ族」
    「未婚子ナシ族」

    分類されちゃう。
    それぞれが思い当り、「うんうん」とうなずきながら読む。

    少子高齢化が問題になっている今、「子ナシ族」は肩身が狭い。結婚自体のハードルが上がったり、まだまだ未婚で子供だけを産む世の中ではなかったり、晩婚から「子産み」適齢期を過ぎ、子宝に恵まれなかったり、経済的な問題があったりで「既婚子ナシ族」にもそれなりの理由がある。

    「子ナシ族」には老後の心配も待っている。
    介護、死後の弔い…。
    職場のご老人たちは私に、「一人くらい産んでおけばよかったのに」と言う。でも、
    今後少子化が進めば、こういったことも社会で面倒見てくれるのが当たり前になってゆくのだろう。

    -「子ナシ族」が老いていくにあたり、状況は刻々と変化していくと思われます。
    「子ナシ族」の中でも、情報収集能力、コミュニケーション能力、経済力などの違いによって「子ナシでよかった」と思いながら死ぬ人と、「子供がいれば」と後悔の中で死ぬ人に分かれるという、「子ナシ族」格差が生まれることでしょう。

    うわぁ~、怖い、怖い。

  • 独身で子供を持たなかった酒井さんの目線で書かれたエッセイ。「親が死んだ時のために子供は存在する」と書かれていたけど、ほぼ同意。介護、看取りなど自分の親じゃなければできないと思うこともしばしば。それにしても女性は男性と比べて未婚か既婚か、子供がいるかいないかで比べられるから面倒。日本だけかな。

  • ★断絶を消したいのか作りたいのか★子の有無が良し悪しではないと分かっているし、そう思うこともないが、なぜかこうした本を読むと余計に断絶を感じてしまう。沖縄で結婚しなかった女性は家の墓に入れないくだりが最も興味深い。民俗は思わぬ事象を浮かび上がらせてくれる。

  • 【由来】
    ・calilトップページ

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

  • 子がいても「看取り要員」にすらならない家族もいるので、子あり人生は安泰かというとそうでもない。
    まぁそれでも、子がいるいないに関わらず、「一人でも安心して死ねる社会」ってのは理想ですね。
    センシティブな話題なのに、ユーモアを交えた軽妙な文章で書かれていて、ところどころクスッと笑わせられたり。普段から深くよく考えておられる人なんだなぁと。

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著者プロフィール

エッセイスト

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

酒井順子の作品

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