鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041018897

感想・レビュー・書評

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  • 人の命の重さを問うた物語。
    設定は一昔前の中国周辺風。
    主人公ヴァンとホッサルの二次元の展開。
    黒幕が最後まで、取り落としにより全くわからない展開。
    病を武器に反乱を企むのと、それに巻き込まれながら阻止に向かう2人の主人公と取り巻き。人物も多く複雑な話で自分好みではあるが、児童文学にしては難しい。精霊のもりびとの方がわかりやすいけど、時間をかけて読むにはとてもいい。
    ユナもかわいい。サエも魅力的。
    なんだかんだで最後までゴンゴン読み進めてしまう上橋文学に脱帽です。
    一つ言いたいのは地図が欲しい。

  • 多くの方が書いているように、一度では把握しきれない情報量がある。しかしその難解さが気にならないほど、特に後半にかけての物語の加速度、二人の主人公の物語が重なった時からの展開は息をつく暇もないものだった。
    物語の原動力は全てが愛に満ちていた。肉親への愛、家族への愛、故郷への愛。この本に悪役は登場しない。愛がどのような形で現れるかが違うだけ。
    愛が憎しみを生み、進むべき道を誤った、そのような者に対してすら作者は哀しい者だと言葉を当てた。
    「知らない」ことは恐怖を生み、その負の感情は人を呑み込む。対して「知る」ことは愛を生み、それもまた人を呑み込む大きな感情となる。この作品の中で大きな役割を果たした病素は特にその「未知性」によって多くの者の恐怖を掻き立てた。
    私たちは病気のように自分のことですらわからないことが山のようにある。他人のことなんて全くわからないと言っても過言ではないだろう。それを知ろうと愛そうともがくか、はたまた全てを神の意志(自分の理解の範疇を超えたもの)として受け入れ続けるか、道は二択。自分は知るためにもがきたい。

  • 故郷を追われた民の悲哀は根無し草の現代人には理解できないかもしれない。土地と環境に適応した動植物との絆、世界との一体感、そこを断ち切られることの痛み。オタワルは土地を捨て、変化してでも生き延びる道を選んだ。アカファは意識せず同化する。人間社会のせめぎ合い、病原菌の戦略、自滅する命、生と死、全ての事柄が繋がっている。循環する命。生命にとって死は滅びではない、けれども、それはとても切ない。すべてを肯定し、けれどもそこに哀しみを確認する。一言で言い表せない、そんな物語だった。

  • 共に暮らしたトマたちと離れ、犬に噛まれたことによって起きた異変の使い途を教えられたヴァンと黒狼病とその背後の陰謀に巻き込まれるホッサル。
    病にかかるものとかからないものがいるのは、かかっても治るものと治らないものがいるのは何故か。全てではないとしても、一つの森のような、一つの国のような人の体がどうやって病と戦うのか、どうやって変わっていくのか。その説明だけでも面白かった。余韻の残るラストもよかった。ヴァンとその家族がまた幸せに暮らせるといい。

  • 近い将来起こりかねない、あるいはもうすでに闇社会では起こっているかもしれない病原菌を兵器とした戦争をファンタジーとして描いてしまうところがすごい。また多民族からなる国のあり方の難しさや、血のつながりの難しさまで描かれていて、手に収まる本の中で、私の中に収まりきれないほどの世界を作ってしまう著者の生み出す力と多岐にわたる知識には驚かされます。病を患うものと患わないものの間にある違いはなんなのか、命を繋ぐとはどういうことなのか、生と死とは。最近病を身近に感じている私にとっては、とても興味深いテーマでした。

    ひとつ、わからないことがあって。鹿の王は、悲しい才能なのか。鹿の王だと持ち上げる気持ちの裏にあるものがなんなのか。それを何度読んでも理解できないのは、まだまだ私も若い証拠でしょう。ヴァンくらいの年齢になったら、理解できるのかしら?

    ユナちゃんは、おちゃんに会えたかな。会えているといいな。

  • 病を祈りをもって退治する世界に、いわゆる現代医学(ただし発展途上)があったとしたらみんな幸せ──とはならず、国と部族と宗教とが入り乱れたややこしい事に。それらが人を翻弄させ、そしてどこに落ちるのか。気になりだしたら止まらなくなってエンディング。ラストの展開に賛否はありそうだけど個人的にはもう1、2話エピローグが欲しかったろころ。でもまぁこれはこれで。

  • 上巻はなかなか読むのが大変で、、かなりがんばって読みました。
    下巻は散らばっていたパズルのピースがどんどんはまっていく感じでイッキ読み。

    鹿の王の意味が分かり、ラストに向けて物語が加速する中、ヴァンの行動、ユナ、サエ、トマ達の思いに大号泣。
    その後のことは気になるけど、みんなで楽しく穏やかに暮らす姿をー、想像してます。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    不思議な犬たちと出会ってから、その身に異変が起きていたヴァン。何者かに攫われたユナを追うヴァンは、謎の病の背後にいた思いがけない存在と向き合うことになる。同じ頃、移住民だけが罹ると噂される病が広がる王幡領では、医術師ホッサルが懸命に、その治療法を探していた。ヴァンとホッサル。ふたりの男たちが、愛する人々を守るため、この地に生きる人々を救うために選んだ道は―!?

    ファンタジー冒険譚であり、医療小説でもあるという誠に稀有な本です。造語も沢山出てきながらもその世界に完全に入り込んで読んでいるので、異国の物語を読んでいるような違和感の無さで引き込まれます。群雄入り乱れ、その中で一人一人が感じている理不尽や絶望や希望。自分の信じる正義と相手にとっての正義。人間世界を大局から見たときの逃れられない運命や、世界と引き換えにしても守りたい命とのせめぎ合いなど、重厚かつスピード感あふれる物語がこれでもかと展開していきます。
    主人公以外にも魅力あふれる人物が沢山出てくるので、完全に誰かにシンパシーを抱くものではないですが、当然主人公ヴァンと、孤児の幼児ユナとの愛溢れる姿は涙ぐましくも微笑ましいのです。どうにか彼らに幸せになって欲しいと心から思いました。
    エンディングも含め素晴らしい本に巡り合えて感謝!

  • 鹿の王の意味やラストのシーンが味わい深いオトナのファンタジーだった。
    いろんな人が語るので、話を追うのが少し大変だったが、しみじみ2回読んでしまった。

  • 登場人物が多く、物語のスケールも大きいため、舞台の地図を巻頭に載せて欲しかった。ただ、情景や感情の描写は分かりやすく、且つ秀逸で、読みながらも自然と本の世界観に入っていく事ができる。主人公と一緒に旅をしながら、病や、様々な死生観に触れ、家族の有り難みを感じたい人に是非。

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著者プロフィール

作家、川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』でデビュー。著書に野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞ニッポン放送賞を受賞した『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、野間児童文芸賞を受賞した『狐笛のかなた』、「獣の奏者」シリーズなどがある。海外での評価も高く、2009年に英語版『精霊の守り人』で米国バチェルダー賞を受賞。14年には「小さなノーベル賞」ともいわれる国際アンデルセン賞〈作家賞〉を受賞。2015年『鹿の王』で本屋大賞、第四回日本医療小説大賞を受賞。

「2020年 『鹿の王 4』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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