一私小説書きの日乗 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041020456

作品紹介・あらすじ

2011年3月から2012年5月までを綴った、平成無頼の私小説家・西村賢太の虚飾無き日々の記録。賢太氏は何を書き、何を飲み食いし、何に怒っているのか。あけすけな筆致で綴る、ファン待望の異色の日記文学、第一弾。

感想・レビュー・書評

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  • 最近は西村賢太ばかり読んでいます。
    もう、西村賢太にあらずんば作家にあらず―というくらい。
    今年になってから小説を4冊読んで、手元にはまだ2冊あります。
    いずれ全著作を読破するつもり。
    密やかな愉しみです。
    ただ、新作が出ることは、もう二度とありません。
    云うまでもなく、西村賢太は今年2月に亡くなったから。
    読み切ったら繰り返し読むしかないでしょう。
    ところで、小説だけでなく、随筆も読んでみたい―と、取り寄せたのが本書。
    ファンの間で「日乗シリーズ」と呼ばれる作品群の第1弾です。
    西村賢太の日記。
    毎日、どこへ行き、何を見て、誰と会い、何をどれだけ食べて飲んだのかが記されています。
    まず、興味を引いたのが、その食いっぷり、飲みっぷり。
    たとえばある日の夜(というか深更)のメニューは次の通りです。
    缶ビール2本、宝1本、冷凍食品の牛皿とレトルトカレー、ウインナー缶、オリジンの白飯。
    「宝1本」というのは、宝焼酎の720ml瓶のこと。
    これを毎晩、ほぼ1本空けるのです。
    しかも大量の食べ物と共に。
    これでは体を壊すというもの。
    でも、西村賢太には、そんな世間の常識なぞ関心の埒外。
    ファンにとっても、そうした不健康な生活があって、傑作の数々が生み出されたとあっては、積極的に支持しないまでも、看過するほかありません。
    結句、死んでしまったわけですが…。
    日記にはその他、編集者との諍いや芸能活動、もちろん創作についても語られます。
    規格外の作家の日常に触れられる貴重な日乗です。

  • 寝る前につらつらと読んでいた日記。1ヶ月ほどかけて読了。

  •  昨年突然の訃報を目にして結構ショックだった著者の日記本があると知って読んだ。「苦役列車」と「小銭を数える」くらいしか読んだことなかったけど、これからたくさん著者の小説を読もう!と決意させられるくらいに魅力的な日記だった。
     芥川賞を受賞した後の2011年3月から日記は始まる。あの311が起こったまさに真っ只中である。しかし彼は地震や原発に関してほとんど書いていない。あれだけのことがあって日記にそれを書かない選択をしている点に作家の矜持を感じた。彼が書いているのは基本的に自分の身の回りのことのみであり、他者に言及したとしても自分の周辺人物のことのみ。SNSを中心として各種インターネットの発達に伴い、色んなことに言及できるようになったけど、昔は自分の半径5mくらいしか見ていなかったのかもなと改めて気付かされた。そんな中で出版社の方々が実名で登場、特に新潮社の方々がとても魅力的に見える。祝杯をあげたり、仕事のことで喧嘩して絶交したのち飲んで和解する流れなど、最後の方はそういったものを期待している自分がいた。
     日記を書くと言っても、どこまで書くか?のラインは各人で異なる。彼の場合、仕事と飲酒を含む食事の二つが中心になっている。前者については芥川賞受賞バブルの中、毎日のように原稿を書きまくり締切と格闘する姿が興味深かった。怒りやすく根に持つタイプでありながら情に厚いところもあったり、自分の尊敬する対象への畏敬の念の抱き方がオタクのそれなので親近感があった。後者は明らかにToo muchな分量を毎日淡々と摂取している様子がとにかくオモシロい。よくこれだけ食べて飲んで逆に54歳まで生きれたな〜と思う。藤澤清造の没後弟子を自ら名乗り古書への造詣が深いからか言葉使いが特徴的でそれが読んでいるうちに癖になった。本著で知った「深更」は今後使っていきたい日本語だ。日記本だけで6冊もあるので隙間時間でどんどん読んでいきたい。

  • 図書館借り出し

    すごいなぁ。
    こんな日常。
    やっぱり芥川賞作家ってすごい。

  • 夜、買淫。喜多方ラーメン大盛り。

  • 日記の面白さに気づく一冊だった。
    書いてあることといえば、主に朝から晩までの行動についてだけ。何時に起床、入浴し、一日こういう仕事を行い、食べた物の記録があり、明け方に酒を呑み一日を終える。時々、尊敬する人物への熱い思いが綴ってあり、編集者との喧嘩や愚痴も書いてある。
    でも日記として気楽に楽しめる範囲の事しか書かれていない。3.11の時は平静でいられない日々が続いたと思うが、それについての記述がほぼ無いことから、何を書いて何を書かないかというのが徹底しているように感じた。この日記を読んでいて不思議と癒しを覚えるのは、その取捨選択が絶妙だからなのかもしれない。
    まだ『苦役列車』しか読んだことがないが、その時に感じた面白みを本書でも得られたのが良かった。妙に人懐っこさを感じるのと、憎めなさがあると思う。ほかの著作も読んでみたい。

  • 2023/06/27

  • 町田康、藤野可織などの現代の純文学も読んでいて驚いた。他にも読んでみたくなった本があった。食の好みが一緒だけど、著しく野菜不足なことがわかった。北町貫多=西村賢太のように思っていたが、また印象が変わった。幼少期の父親とのことを長編でというのは、是非読みたかった。

  • 苦役列車からの2冊目として購入。
    入浴、サウナ、宝と毎日の変わらないルーティンが心地よく感じる。好きな仕事と好きな事をやりながらの日々は羨ましく、色々刺激される作品である。すでに西村作品の沼におちてます。

  • 日記形式の作品で、本当にその日のあった事を淡々と書き連ねている。
    短い日はほんの数行。
    短い文章の中に色々な出来事が上手く書き込まれていて、いつのまにか引き込まれてしまった。
    ほぼ、一気読みして、西村賢太さんの作品を色々と読んでみたくなった貴重な作品であった。

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著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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