一私小説書きの日乗 遥道の章

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 39
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041042021

作品紹介・あらすじ

多数の作家から圧倒的な支持! 執筆、酒、テレビ出演、読書、編集者との交渉――。一見なんの変哲もない日常を、異能の私小説作家がときに淡々と、そしてときにはネチネチと綴る、妙に後引く日記文学、好評第四弾。

感想・レビュー・書評

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  • 図書館借り出し。
    面白いんだよ。
    どう読んでも面白いんだよ。

  •  4冊目の日記集。前作の流れのまま同じフレーズを多用した日常の生活記録だったが、引き続きずっとオモシロいのだから著者の読ませる力が相当あるのだと思う。個人的に残念だったのは表紙絵。今回は手書き原稿が表紙になっているが、過去作の味わい深い黒と色のコントラストの絵であってほしかった。
     前作からの違いといえば頻繁に自炊しているところ。カレーをかなりの頻度で作っていた。あと行きつけの信濃屋では、お店で締めの丼や麺を食べていたのに、そこを我慢して「仕上げ」と称してわざわざ1人で別のラーメン屋で締めるようになっている。もともとtoo muchな食事はますます加速、もはや畏怖の念を抱くレベルだった。この食生活だと54歳で亡くなったのは納得せざるを得ない。
     テレビ出演の頻度は下がり作家業として締切に追われる生活が克明に描かれている。不規則な中でもクリエイティビティを発揮しようとストラグルする姿勢がカッコよかった。特に書けないときのもどかしさを食事、飲酒、買淫というストレートな欲求で紛らわせている点が正直でオモシロい。なお「買淫」という言葉は風俗へ行ったことを明示しており、その感想(あたり/はずれ)を最初の日記から毎回書いている。こういった内容に嫌悪を抱く気持ちは出版当時よりも加速している社会において「ほんとのこと」を書く彼の作家としての矜持を感じた。読んだ皆が感じるであろう「喜多方ラーメン大盛り」とのコンビネーションが生むグルーヴ、これはまさに人間の業だと思う。こんなに端的に人間の欲を表明している表現もそうそうない。
     基本的に繰り返しの日常の中でも人への悪口を書く場面があり、そこでの筆が踊るかのような文体がたまらなかった。極めて露悪的だと思うものの、ここまでの表現になると完全に芸だと思えた。流行りの論破とかそういうレベルではない。特にネット記事の記者に対するネチネチした罵詈雑言の精度がめちゃくちゃエグかった。残り三作も楽しみたい。

  •  ただの日記なのに、これでもう4冊目である。
     過去の3冊より値段が高くなり、ついに2000円超え(消費税と合わせて)。それだけ部数が少ないのだろう。
     この手の軽い本が2000円もすると、さすがに高いと感じる。もう、このシリーズは最初から文庫でいいと思う。

     内容は、過去の3冊と大差なし。何を書いたか、誰に会ったか、何を食べたかなどという小説家の日常が、淡々と綴られている。
     
     これまでの3冊以上に、「信濃路」(鶯谷駅前の、24時間営業の安居酒屋。ファンにはおなじみ)の登場頻度が高い。とくに、文芸誌各誌の担当編集者との打ち合わせは、ほぼすべて「信濃路」でやっている感じ。
     ということは、「信濃路」に通えば、賢太と遭遇する可能性が高いわけだ。
     
     「サイゾーウーマン」に載った揶揄記事(「西村賢太、初長編が「全然売れない」! 『お願い!ランキング』出演も効果なし?」)に対する反論だけが異例の長文になっており、ここが本書でいちばん面白い。
     いわく――。

    《もう一度ハッキリと云っておくが、自分の小説がまるで売れないのは、何も昨日今日に始まったことではない。『苦役列車』以外の、ほぼ全部が売れていないのだ。見損なってもらっては困る。》

     あと、私自身が最近糖質制限ダイエットを試みているから余計にそう感じるのだが、賢太、毎日食べ過ぎ(笑)。さんざん飲み食いしたあとにシメのラーメンとか食べてるし。
     ものすごーくよけいなお世話だが、この食生活では長生きできないと思う。

  • 平成26年6月から最近までの日記。著者の日常が手に取るように伝わってくる。盗み見根性は全開発動。定期的な買淫には、当たりがあり、ハズレがあり、大当たり、一応の当たりなどもあり、なかなか笑える。食って寝て原稿書いてテレビに出たり、時には病に臥せることも。延々とこれが繰り返され、とりたてて何か起こるわけでもない。最後まで淡々とした日常が続き、読後はぶつ切り感さえ漂う。にもかかわらず病みつきになってしまう魔力はさすがとしか言いようがない。

  • 915.6

  • ※※まあ読まんでも特段の損失は無い本だと思います(;_;)

    何故毎度出るたんびに読んでしまうのだろう。謎です。きっと文章作文の練習手本に少しわ成るからだと今更思い至ります。まあそう言う本です。すまぬΣ( ̄□ ̄)!

    そして、本巻は値段が1900円となっている。確か前作までは1400円程。ふーむ出版社の本気度がこの辺で変わって来ていることが見て取れる。まあ後で確かめるとしよう・・・シュワッチ。!。

  • 怖いものみたさで毎回読んでいる日記シリーズ。不摂生に性格の悪さの西村賢太にこの一年何が起こったか?身体的には痛風、腰痛、風邪あたりだが、これは毎年のことなので特に記載することではないのかもしれない。食事は今年は回転すしが入ってきてるのが特徴で36個とか尋常ではない。これも同じの口答えできない相手を罵倒する習性は今回はあまりなく、ネット上の評論家程度。これは無理からぬところがあるが、そのネチネチぶりは西村節です。
    編集者イジメは今回は一番なくて角川の編集者がキモイというくらい。それと稲垣潤一がよく出てきてる。前半は珍しく仕事をキチンとしていて後半は2ヶ月ぐらい原稿を飛ばしたりしているが、体調もあるので致し方ないところ。
    意外とためになる贔屓の紹介では、真梨幸子が気になる。暗さ、不幸に反応する西村さんらしいイヤミスの一人者らしい。読んでみたい。
    食べたものを丁寧に書いてる日もあれば、何も書いてないときもある。そのあたりはある程度一定にして欲しいですね。

  • 酒の消費量が減ったのでは?
    が、いずれにせよ飲み過ぎ。

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著者プロフィール

西村賢太(1967・7・12~2022・2・5)
小説家。東京都江戸川区生まれ。中卒。『暗渠の宿』で野間新人文芸賞、『苦役列車』で芥川賞を受賞。著書に『どうで死ぬ身の一踊り』『二度はゆけぬ町の地図』『小銭をかぞえる』『随筆集一私小説書きの弁』『人もいない春』『寒灯・腐泥の果実』『西村賢太対話集』『随筆集一私小説書きの日乗』『棺に跨がる』『形影相弔・歪んだ忌日』『けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集』『薄明鬼語 西村賢太対談集』『随筆集一私小説書きの独語』『やまいだれの歌』『下手に居丈高』『無銭横町』『夢魔去りぬ』『風来鬼語 西村賢太対談集3』『蠕動で渉れ、汚泥の川を』『芝公園六角堂跡』『夜更けの川に落葉は流れて』『藤澤清造追影』『小説集 羅針盤は壊れても』など。新潮文庫版『根津権現裏』『藤澤清造短篇集』角川文庫版『田中英光傑作選 オリンポスの果実/さようなら他』を編集、校訂し解題を執筆。



「2022年 『根津権現前より 藤澤清造随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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