砂上

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 647
感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041046005

感想・レビュー・書評

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  • ヘビーなのにドライというか...面白味は皆無なのに凄みは感じるというか。相反する複雑な気分で読了。小説家志望の40歳の令央は、スパルタ編集者にボロクソに言われながら、私小説を産み落とす。それだけの話なのだが、令央の特異な環境をさも当たり前の日常のように描く文章力や、心に刺さるセリフ・比喩表現等、桜木柴乃節を改めて感じる一冊だ。主体性のないボンヤリしてみえた令央が、様々な人間から暴言を吐かれても、小説のコヤシにしていく様はよかった。でも、薄い本なのに凄く読むのに時間がかかったし、疲れた....。

  • 文章が読みにくく、何度も読み直すことが多かったせいかかなり時間がかかった。本を出すことへの葛藤と編集者とのやりとりが間延びして
    途中であきてしまった。結局よくわからないままに終わってしまったが
    江別の描写は好きだったりする。

  • 母と娘(柊令央)、そしてその娘の子どもを母の子として生きてきた女3人の家族。令央は長年作家になりたいと新人小説の応募を続けていたが、その小説はなかなか当選することは無かった。

    母が亡くなり、離婚して出戻っていた令央は離婚した夫からの慰謝料として毎月5万円とビストロとしてアルバイトをしながら6万円の収入で何とか生きていた。

    作家として趣味のような物語を書いてはいたが、それは実らないと言うことが続いていたところに、応募をしていた文章を読んだという編集者(小川乙三)から小説を書いてみないかと令央に連絡があり、編集者の女性に会うこととなる。そして、令央が書いている文章ではとても小説には出来ないが、乙三のアドバイスを受けながら小説を書くかという申し入れを受けて令央は書いてみたいと伝える。

    小説は令央の母と兄弟として育った娘と令央の人生を虚構として小説を書くという作業が始まる。その自分の体験を書き記すが、乙三にダメ出しを受けていく。

    小説を書くという事がこれほど過酷な物なのかと言う体験を令央の日々の出来事や事あるごとにあったことを小説に吸い上げようという考え続ける作家への道がいかに大変かという事が伝わってくる。

    小説はその試行錯誤や挫折の中で母を思い出したり、生きてきたその過去を捜す旅であったり、娘である姉妹とのふれあいの中から、文章を書くという行為の中で令央が人として作家として成長していく過程も滲み出てくる。

    重たくもなく、かといって軽くも無いストーリーが最後まで飽きを感じさせずに読み終わることが出来た。
    この作者の本はもう少し読んでみたいなと思った。

  • 桜木ワールド全開です!!!!
     人が生きていく中、決断が必要であるのは言うまでもない。 日々起こる決断は瞬時に行動に移すが、人生に数度しかない時間が必要な大きな決断もある。 令央の決断の仕方、生き方は、自分にも当てはまるところがあり、共感を呼ぶ。 「砂上」がハッピーに終わる物語で良かったという安堵感に包まれる。

    【本文より】
     美利のうっぷん晴らしに似た助言は、しばらくのあいだ室内を漂って、やがてそれがひとかたまりになって、胸に落ちてきた。

     書きかけの嘘が次の嘘を求めていた。
     
     小川己三の指摘でずれた蓋の隙間から箱に入れっぱなしになっていたあれこれがこぼれ落ちてくる。今まで捨て置いてきた自分の「不誠実」反転して、己三のかたちになって降りてきた気がする。

    美利は言う~
     「あたしに質問されるのを期待して、見えるところに薬袋なんか置いておくのやめなよ。甘えってそういうことだよ。無視されたらされたで、うじうじするんだよ。そういうひとは。」
     

  • 新井賞を受賞した作品はハズレなしと聞いて読んでみた。
    そんなに長くない本なのに、言葉を理解するのに、頭に入ってくるのに時間がかかって、ゆっくり読み進めた。
    今は、令央の姿が目に浮かんでいる。
    読み終えて、うん、面白かったかな。と。
    またすぐに、この方の本を読むかはわからないけど、またいつか読んでみたいと思う。
    私よりも10歳以上年上の筆者が選ぶ登場人物の名前が今風で、プロフィールを二度見してしまった。


    「痛い痒いも生きてる証拠」
    「何でもいい風に解釈するのは自分のため」

  • 「たとえばあたしが死んでも、泣かないような子に育てたいの。」

    わたしの地元・江別。
    ビストロ・エドナも知ってる。
    駅前の五叉路もすぐ情景が頭に浮かんでくる。
    珠子の人間味が現実感があって嫌いだわ。

  • 上脆的。虚構。真的还是假的。

  • 北海道の江別市に住む柊令央は小説を書き、何度も新人賞に応募している。あるとき女性編集者が東京から訪れて、厳しいダメ出しをする。

    その指示に従い、自分の半生を描く小説を書き始める。

    15歳で娘を産み、母の子として育ててもらった令央。結婚生活も破綻し、母は60歳で急死してしまう。

    そんな中で編集者とやり取りしながら小説を執筆する。

    作家になると言うのはなんと大変なことか。自分の人生を賭けた一冊を生み出す苦労が伝わってきた。

  • なんとも薄気味悪く、そして爽快感のある本です。小説の為に他の事をまともにしていない女性が主人公です。結婚生活は夫の不倫で幕を下ろし、その慰謝料をあてに生きているので、読み始めは旦那最低だなと思うのですが、読んでいるうちにちょっと元旦那が哀れに・・・。こんな人と結婚したら心が少しずつ削られるだろうなと思います。
    良い小説を世に送り出すためには手段を択ばない編集者との出会いが、彼女の人生を変えていくのですが、根本的にハートフルさとは無縁で、もっとおかしな方に突き抜けていくのがなんだか楽しい。亡くなった母親と妹との関係もヘンテコですが陰惨さが無くて、昔は湿っていたものが乾いたことによって、濡れていたときの形状を保っている古い雑巾のようです。

  • 先が気になって,一気読みしました。

    私は,主人公の母が,主人公を産むことを決意するところが一番印象に残りました。

    小説を書くということの厳しさとそれを克服しようとする姿,書くことによって母・自分・妹(実は娘)の人生について納得していく姿に,物語の展開は明るい方向へと思ったら,珠子さんの言動で冷水を浴びせられたようで,珠子さんがいい人だと思っていただけに,個人的には辛かったです。
    定期収入を失うことで,主人公は小説家という茨の道に不退転の覚悟で臨むことになったという点では,必要なエピソードであったのでしょうが…。

    私は,直木賞の「ホテル ローヤル」よりは本書の方がよかったです。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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