孤島の鬼 江戸川乱歩ベストセレクション(7) (角川ホラー文庫 え 1-7 江戸川乱歩ベストセレクション 7)

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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本棚登録 : 1891
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041053348

作品紹介・あらすじ

初代は3歳で親に捨てられた。お守り代わりの古い系図帳だけが初代の身元の手がかりだ。そんな初代にひかれ蓑浦は婚約を決意するが、蓑浦の先輩で同性愛者の諸戸が初代に突然求婚した。諸戸はかつて蓑浦に恋していた男。蓑浦は、諸戸が嫉妬心からわざと初代に求婚したのではないかと疑う。そんなある日自宅で初代が殺された。これは恐ろしく壮大な物語の幕開けに過ぎなかった-。

感想・レビュー・書評

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  • 密室殺人・衆人環視下での殺人、この2つのトリックを使った殺人事件は……序章に過ぎなかった!

    故人から送られてきた謎の手記に乱歩独特のおどろおどろしい猟奇あり!
    先祖代々受け継がれてきた家系図に、意味深な書き付け!謎解き宝探しあり!
    不気味な見た目の住人がいる孤島で行われている恐ろしいビジネスの正体とは!?
    さらに小悪魔系主人公(男)と、みんな大好き諸田くんとのBL要素……。

    さすが乱歩に「自身の長編の中では1番出来がいい」と言わしめた作品だけあって、すこぶる楽しめた。上にあげたような、普通なら1つのテーマで1話作っちゃうような話がこの長編には詰まっている。最後に怒涛の伏線回収がすごい。いっぱいあったのに全部綺麗に収まった不思議。諸田くんのその後のお話で、色物のハズのBL要素も読後感にかなり大きな影を落とす。

    最終的には世間狭過ぎ!!というツッコミがないわけでもないけど、それを含めて島の因縁や血筋の呪いなのかと考えれば、納得できる。

    奇形や不具者が出てくるので、ドクターモローの島から取って諸田くんでいいのかな。
    とても面白かった。

  • 以前この作品の朗読劇に行ったので原作を読んだ。江戸川乱歩の作品は「人間椅子」を読んで以来だけど、ミステリーという一言では表せないジャンルだな。京極夏彦の作品に近いと思うのだけど、どうだろう。どちらも私の精神が健康な時に読まないと作品の世界に引き摺り込まれそうな雰囲気がある。

  •  終盤で「孤島の鬼」のタイトルの意味に納得。個人的に江戸川乱歩のマイベスト。

  •  鬼というフレーズが作中何度も出てきますが、みんな鬼であり人間です。良い意味でも悪いでも、一度執着したものを忘れることなんて出来ないんですね。道雄の蓑浦くんへの愛も、蓑浦くんのどこまでも初代と初代と同じ血の緑への愛も、そのまた丈五郎の復讐心も。
     個人的には蓑浦くんの、諸戸さんが自分のことをを好きであるということを自覚した上でそれを利用している部分も、死に際にも諸戸の愛を受け流すことはできても受け入れることはできないと逃げ出す場面が印象的ですね。ただ、そんな不思議と周りを振り回すかのようなどこか少年心を感じさせる蓑浦くんに諸戸さんも心離れられなかったのでしょうか。諸戸さんにとっての幸せとはなんなんだろう?

  • 怪奇も含んだサスペンスストーリーで読者にも呼びかけるような文調で淡々と読む手が止まらなかったです。最終に戦慄する様なバッドなどんでん返しも想像したけど、その裏切りは無くて前向きな終わり方でよかっだです。

  • 諸戸をホスト部の環先輩、簑浦をXXXHOLiCを四月一日で想像した。
    江戸川乱歩って感じのグロさがでていてよかった。

    孤島の鬼をエゴサしたらサジェストに「諸戸 かわいそう」ってでてきてちょっと笑った。それな。

  • 全身全霊で江戸川乱歩の世界を感じる内容です。
    本筋は間違いなくミステリーなんだけど、それ以上の凄みと凄惨さと狂乱がある。
    正直結構、エグいしキツいし辛い描写もありますね。
    これが連載されてたのが昭和初期なので、障害者や同性愛諸々の表現が差別的なことは気にしないで読み進めるにしても、何故こんなにも詰め込んだのかと思ってしまう。障害者が加害者にも被害者にもなっている、どこに憐憫を向けたら良いかもわからない混沌感。自分の倫理観や正義感を試されているようでした。
    だけども、面白いです。
    さすが江戸川乱歩だなぁ。諸戸の耽美さや秀ちゃんの愛らしさ、吉ちゃんの欲や丈五郎夫妻の歪みも文章からリアルに伝わってくる。表現は時代的にも古いのに正確に読み取れているのがわかるほど、全て生々しい。
    登場人物全てが尖っていて、舞台の細部まで表現されているので読んでいて昭和の映画をモノクロで見ているような感覚になります。
    清々しさはないですが、最終的にはそれなりにハッピーエンドだし、江戸川乱歩未読の人に読んでほしいベスト5に入る小説です。

  • 感動するほど面白かったです。ただのミステリーではなく、切ない恋愛やハラハラドキドキの冒険、その他色んな要素が詰め込まれていると感じました。

  • 色々と考えさせられる話でした。

    結局、蓑浦くんが一番の鬼なんじゃないか……?と思ってしまう。
    今では妻がいる、という出だしからの最愛の恋人の死……とか言い出しててもう読者としての私の心は「えっ?」だったし、道雄くんの気持ちや行動を考えるともう少し受け入れてくれても、なんて気持ちになってしまうので。
    そして途中で本人も言っていたけれど、蓑浦くんが発端の殺人が起こりすぎた。

  • 最高すぎる、大好きな要素がてんこ盛りのちらし寿司!考察もいくらでもできる。諸戸さいこう…
    映画化は難しいだろうから、ストップモーションアニメとかにしたい…

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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