星降プラネタリウム (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041064412

作品紹介・あらすじ

新入社員の昴が配属された先――それは、渋谷のプラネタリウム施設だった。希望とは違う所で働くことになった昴が「人は何のために星を見るのか」その答えを知るために、故郷を捨てた己と向き合っていく。

感想・レビュー・書評

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  • 『人は何のために星を見るのでしょうか。』

    自分の思い出が変わってしまうことがつらくて
    変わりゆく景色を見続けられなくなり
    目を背けてしまう主人公。

    “変わる“ことは時に寂しさを感じてしまうことが
    あるかもしれません。
    自分たちが過ごしてきた時間が無駄だったように感じてしまい受けとめきれないときもあります。
    そのときは何も考えられなくて、
    どうしていいかわからなくなってしまうけれど、
    時間が経ってから振り返ると悪くなかったと思うことも少なくない気がします。

    そんな状況にある人に、
    そんな言葉をかけることはできないけれど
    “変わる“ことは悪いことばっかりじゃないと
    思いたいし、そう思えるように行動していくことが大事なのかなと思いました。

  • 望まぬ配属先であるプラネタリウムの解説員になった新卒のお話

    離島で育った渡久地昴は地元に後ろめたい想いがあり、高校卒業後は一度も実家に帰ることもなく就職した
    新卒研修を終えて発表された配属先は渋谷のプラネタリウム施設
    望んでもいない初めての仕事をする昴は、「人は何のために星を見るのか?」という問いを通じて自らの過去と向き合う事になる


    プラネタリウムの職員のキャラが濃い……

    面接で昴の出身地に目をつけ、プラネタリウムに引き込んだ、星柄のネクタイをしている館長の賀陽
    普段から感情に乏しい様子で、解説のときは能面のような表情で溌剌と流暢に話す、星の魔女と陰で言われている望月彗子
    プログラマで厨二病ロッカーの土崎
    「漆黒のフォーマルハウト」「隻翼のベテルギウス」というネーミングはとても痛々しいけどビジュアル系ド真ん中なんだろうか?
    赤門の大学を退学した宇宙バカでギャルな金原ひかり

    他の主な登場人物としては
    プラネタリウムに一人で何度も来ている小学生の翔
    特定の夏の星座にこだわる音楽プロデューサーの浅海イチタカ
    肉眼では見えない十等星をプラネタリウムで見れないかという相談をしてきた看護師の柏木明美
    昴が子供の頃にお互いに約束をした速水天音


    夏と秋の話でちょっとうるっときた


    まずは、春のエピソード
    星座の数が88個というのは知らなかった
    というか、有名なのが88個であって、もっとマイナなのが他にもあると思ってた
    あと、日本で見られない星座が4個しかないというのも驚き
    逆に、南半球では見られない星座の数はどうなんだろ?
    星座なんて、昔のヨーロッパあたりが起源なので、北半球の高緯度の中天あたりの星は見えないのが多そうな気がする

    銀河鉄道の夜が、実際の夏の星座の通りというのは知っていた
    アンタレスの話も
    それらを組み合わせて、自己犠牲と人の幸せというテーマにしたのはズルい
    こんなん泣けちゃうに決まってるじゃん

    魚座の傍の旦那さんの名前がついた十等星の意味
    柏木さんはネガティブな理由と言っていたけど、確かにネガティブな要素はあるものの、結局はポジティブな要素と受け取れる
    母子の傍に寄り添う、ねぇ……

    冬は自分の過去との決着
    まぁ、プロローグの前振りと途中の展開からこうなるのは予定調和ですかね

    冒頭の言葉
    星が生まれる場所を知っているか――それは星の魔女の指先からだ
    というのが、配属されたプラネタリウムのことだけではないような意味で示唆されているファンタジー要素は好き
    本当に、この宇宙も高位の次元のシミュレーションである可能性は否定できないですしね


    「人は何のために星を見るのか?」という問いの答えは人それぞれの理由があって面白かった
    個人的には、最初に自分で考えた答えが天音の理由と同じだったので、オチとしては弱く思った
    何を当たり前の事をと言った感じ
    ってか、夜空って自然と見上げるものじゃないんですかね?
    私は仕事帰りに、今日は満月かな?とか、月がものすごい細いなぁとか思いながら空を見上げて、ついでに他の星も見ますけどね
    世間一般の人はそんなに夜空を見ないものなのか?


    あと、おばあちゃんの言葉も、最初に知ったときにも昴が感じたような意味で言ったんじゃないと思った
    昴は自分の地元が寂れていくことの意味をわかっていない
    自然が残ったところで、人がいなくなれば故郷はなくなるんだよね



    星降村のモデルは福岡の星野村でしょうか
    標高が高くて、人口も少ないので光害の影響が少なく、それでいてアクセスもしやすいんだっけか?

    あと、コズミックホール渋谷のモデルは五島プラネタリウムかな
    もう閉館してしまったけどね

    ちょっと調べたら、今も渋谷にコスモプラネタリウム渋谷というプラネタリウムがあるみたい
    だけど、カール・ツァイスⅣ型投影機という共通点から推測するに、やはりモデルは五島プラネタリウムでしょう

    カール・ツァイスⅣ型投影機は名古屋市科学館でも使われていたものだし、見たことがあるので若干の親近感
    今はこの作中と同じように、光学式のカール・ツァイスⅨ型とデジタル方式の併用になり
    カール・ツァイスⅣ型は常設展示されていた気がする


    プラネタリウムや星空をテーマにした作品といえば
    小説なら、瀬名秀明「虹の天象儀」
    マンガなら、小池田マヤ「すぎなレボリューション」
    アニメなら、「恋する小惑星」(これも原作は4コママンガだけど、アニメの方が有名か?)
    を思い浮かべる

    「虹の天象儀」は舞台が五島プラネタリウムだし、カール・ツァイスⅣ型投影機も登場するし
    今作では天象儀をタイムマシンのように表現していたけど、実際にタイムスリップする物語だったりする
    あと、未来の天象儀も登場してて、今のデジタル方式っぽい事も表現してたなぁ
    今作でも流星群についての言及があったけど、プログラムにないだけであって、その辺のプログラムを作れば再現ではないだろうけど擬似的な現象は表現できるんじゃないですかね?
    うーん、時代は移り変わり、技術は進歩してるんだなぁと思う

  • 初めての作家さん。
    全く知らず、偶然手にした本でした。
    失礼ながら期待値は低かったのですが、完全に裏切られました。色んな要素が、いま自分が読みたい&読みやすい程度にまとまっている感じで、言うなれば「すごく適度」な1冊でした。なので甘めかもですが★5つ。

    星って想像力をかき立てられますねぇ。

  • 気持ちを緩めたまま安心して読める、穏やかな感じの本でした。また、久しくプラネタリウムに行っていないので、久しぶりに行って見たくなりました。どこかで星の魔女にあえるといいと期待しつつ。

    デジタル版のプラネタリウムを初めて見たとき、球状のドームに映し出される映像に迫力を感じつつ、プラネタリウムという言葉で思い浮かぶ神秘的な雰囲気とはちょっと違うかなという印象でした。よりエンターテイメントに近い感じで、完成度は高いけど、同じプログラムは一度見ればいいかなという感じ。

    解説員の話による投影はその時の話題とかいろいろ考えられて面白いけれど、天文とか天体観測とか興味で調べだすと、話される内容もおおよそ知っていることで、星座とかの話も定番に思えてきます。それでも、話す人の話術とかを期待させられるところがあるし、最近のプラネタリウムの進化と相まって、なかなかに侮れないものがありますね。

    結局、いろいろと行かない理由を考えつつも、時折非常に行きたくなるのは、やはりなにかが潜んでいるからなのだろうか、と。

  • 宇宙や星のことが好きな人が読むと面白いんだろうな、と思いました。
    興味が無い人は共感するのは難しいですね( ;∀;)

  • 人は色々なことを思いながら星を見るのですね。
    自粛終わったらプラネタリウムを見に行きたくなる、また夜空を見上げたくなる小説でした。

  • 施設運営部プラネタリウム事業課天文係―それは、5月上旬に新入社員研修を終えた渡久地昴が告げられた配属先だった。希望とは違う部署で働くことになった昴は、先輩である望月にプラネタリウムのコンソールボックスへ案内された。上映が始まると、指先一つで宇宙を操り、観客に星の解説をする仕事を目の当たりにする。「人は何のために星を見るのでしょうか」その答えを知るために、故郷を捨てた己と向き合っていく。

  • 主人公がダメ。ウジウジしていて、敬意を感じない。

  • ■星が生まれる場所を知っているか――それは星の魔女の指先からだ

    新入社員の昴が配属された先――それは、渋谷のプラネタリウム施設だった。希望とは違う所で働くことになった昴が「人は何のために星を見るのか」その答えを知るために、故郷を捨てた己と向き合っていく。

  • 2019#20

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著者プロフィール

1983年千葉県生まれ。 第16回電撃小説大賞≪金賞≫受賞作『ヴァンダル画廊街の奇跡』(電撃文庫)でデビュー。著書に「特急便ガール!」シリーズ、「ドラフィル」シリーズ、『キーパーズ』『スプラッシュ!』『美の奇人たち』(いずれもメディアワークス文庫)。『ギンカムロ』『弾丸スタントヒーローズ』(共に集英社文庫)など。

「2018年 『星降プラネタリウム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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