京大はんと甘いもん

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041081600

作品紹介・あらすじ

サラリーマンの櫻馬彰は、会社でのストレス発散のため、発作的に京都へ。そこで祖父が好きだった和菓子を買いに行く。けれどなんと精神だけタイムスリップし、祖父本人として昭和初期の京大生として暮らすことに…

感想・レビュー・書評

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  • 和菓子、友情とほのぼのとした雰囲気の中リズムよく読むことができ期待しながら読み進めたけど、
    最後の最後、それぞれの人物がどうやって過ごしたのか経緯を知りたい。

  • 櫻馬彰(さくらば しょう)、先週37歳になった。2ヶ月前に離婚した。会社に嫌気がさした。

    プチトリップのつもりで新幹線に乗ったら、京都まで来てしまい…
    祖父の心残りを思い出す。
    この和菓子を、食べさせてやりたい奴がいた。
    あんなに早く死んでしまうなんて、戦争は本当にむごい。
    そう言いながら、祖父は集合写真を指で撫でた。

    京都の素敵なところは、「現代でありながら過去とつながった街」
    子供の頃の彰は「じいちゃんみたいに京大に行く!」が口癖だった

    二人の心残りが重なった?
    37歳の彰は、京大新入生の祖父・永太郎の中にタイムスリップする。
    祖父は、「ときわ木」という菓子を食べさせてやりたかったと言ったが、彰は、その彼を、「戦争で死なせないこと」にこだわる。

    華さんのところに下宿する「京大はん」たち、この中から戦争で命を失う者が出る。
    永太郎になった彰の目線で、彼らの隠し持った内面にスポットが当たり…

    今まで、人の話をいい加減に聞き流してきた、と気付く。
    あの時、かの人は何と言っていたか?
    真摯に思い出した、その言葉の中にヒントがある。
    2018年に37歳の男が、昭和7年の20代前半の帝大生と共に成長する。
    今は大人になりきれない大人も多い。
    昔の人はそれに比べて早熟だったから、ちょうどいいバランスだったのかもしれない。
    クライマックスが学祭というのも、京大っぽい?

    タイムスリップものは、現代に戻る時が切ない。

    私はこの作品を導入部のように感じている。
    続きを読みたいのだ。
    彰が去って、永太郎に戻ったじいちゃんの青春。
    ノートを見て、謎の書き込みをどう思うか。
    時が進んで、「三七、日中」「四一、真珠湾」の意味も悟るだろう。
    下宿の仲間たちと真佐子さんのその後も知りたいし。

    「甘いもん」は主役ではないが、思い出をつづる重要な鍵になる。

  • サラリーマンの櫻馬がなぜか戦前にタイムスリップし、その時代に京大生だった祖父の体に入り込む。
    そこで青春時代を送るのだが、仲間の誰かが戦死するという事を知り防ぐ事ができないかと考える… 
    タイトルにある通り、戦前の京都の甘いもんが色々出てきて美味しそうだし、友情や恋というのもそこだけ読めば面白いけど、タイムスリップのくだりが何だか中途半端かな。

  • 主人公は、当たり障りの無い人生を送ってきて、その結果、仕事も家庭も冴えないことになったアラフォーサラリーマン。やけくそで東京から京都まで行ってしまったはずみで、亡き祖父の頼みを思い出す。勢いのままに祖父の願いをかなえようとするが、なんと不思議なことに、祖父の学生時代に、祖父本人としてタイムスリップしてしまって・・・!!というお話。

    面白いのは、主人公のこれまでの人生が、自分の「当たり障りの無い選択をしてきた結果」として、冴えないことになってるということ。特別に境遇が不幸だとか不運だとかではなく、冴えないといっても人生どん底というほどでもない。そこがリアルで、いいです。タイムスリップなんて設定であっても、他の部分は現実離れしないで、リアルに描こうとしてるような感じで、そこが特に良かった。

    衝撃的とか、そういうんじゃなくて、ふわっと、やさしく、少し切ない、読後感もさわやかです。鍵となっている京都のお菓子たちも、ほどよく情緒を醸し出していいです。

  • 亡き祖父の学生時代に乗り移って、学生生活を体験する話。祖父のもう一度会いたかった、菓子を食べさせたかった相手は誰なのか。戦前の大学生ってこんな感じだったのかと不思議な気持ち。

  •  甘味をテーマにしたほのぼの日常ストーリー……だと思っていたのだが、実際は予想を大きく裏切るものだった。

     祖父の湯呑を媒介としたタイムスリップ。甘味を介して話はすすんでいくのだが、大きな目的は祖父の友人を戦死から救うこと。

     若き日の祖父になりかわった主人公が祖父の恋に悩み、しかし祖父が辿った道筋を外れその恋を成就させてしまうとタイムスリップの鍵である湯呑が割れ、元の世界に帰れなくなる。つまり、歴史が変わり、違う時間軸の存在となってしまう。結果、祖父の友人を救うことができない。

     できることが限られた中、奮闘する主人公の成長ぶりに心を打たれた。とても読み応えのある面白い作品。

  • タイムスリップ物。お菓子はメインではなく彩くらいで、学生時代の濃厚な青春をもう一度って感じ。未来人ならではの悩みもあるけど悲壮感は無くて、それを忘れてしまうくらい楽しんでます。ゆっくりと心も成長していくけど、なにより濃いメンバーとのやり取りが中心。

  • 京都旅行中にSUINA室町にある大垣書店で見つけて、買おうかどうか悩んでいたが、まあとりあえずは図書館で良いかと思って、最近取り寄せて読んでみた。

    内容はそこそこ面白かったものの、なんか読み終わった後いろいろ考えてみると、負に落ちないところや、もっとこうしたほうが面白かったんじゃね?的なものがいくつか出てきて残念賞に終わった感じがする。

  • サラリーマンの櫻馬彰は、会社でのストレス発散のため、発作的に京都へ。祖父が好きだった和菓子を探し歩き、彼が青春を過ごした京大で祖父を偲ぶ。しかしひょんなことから、精神だけがタイムスリップし、祖父本人として、昭和初期の京大生として暮らすことに。個性豊かな京大生たちと友情を育み、ほほが落ちそうなほど美しい京都の菓子と、甘酸っぱい青春を味わう彰。しかし先の戦争で仲間のひとりが死んでしまう運命と知り…。仲間の運命は、そして彰は現代に帰れるのか?京大×和菓子×タイムスリップで紡ぐ、美味し懐かし青春物語!

  • 仕事もうまくいかず、妻とは別れを切り出され、なんとなく人生がうまくいかない三十七歳の男がタイムスリップする話。タイムスリップ先は、昭和七年。京大生として生活する祖父の姿になって、祖父として暮らすというものだった。舞台は京都なので、京都の通りや銭湯、お店などが出てきて面白い。今もあるお店ばかりのなので読んでいて実際に行ってみたくなる。気になっているのは、水田玉雲堂の唐板と神馬堂の焼き餅。今度買いに行こう…
    甘いものと京大生の人生が交わっていくのが何となく心に残る。
    結末としては一人の男を救う話だった。

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著者プロフィール

藤井清美 (ふじい・きよみ)
1971年生まれ。徳島県で育つ。筑波大学在学中に舞台から仕事をはじめ、映像の脚本でも活躍。近年挑戦している小説では、大学で歴史学を学んだ経験を活かし、綿密な調査と取材を強みとする。舞台では小劇場から大劇場まで多くの作品を発表。『ブラックorホワイト? あなたの上司、訴えます!』(作・演出)など。ドラマ・映画のシナリオでは恋愛ものからサスペンス、スケールの大きなアクション作まで手掛ける。「相棒」「恋愛時代」「ウツボカズラの夢」「執事 西園寺の名推理2」(以上ドラマ)、「引き出しの中のラブレター」「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」「るろうに剣心」シリーズ、「見えない目撃者」(以上映画)。小説では『明治ガールズ 富岡製糸場で青春を』「偽声」『京大はんと甘いもん』。

「2020年 『#ある朝殺人犯になっていた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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