少女は夜を綴らない (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041091838

作品紹介・あらすじ

「人を傷つけてしまうのではないか」という強迫観念に囚われている中学3年生の理子。身近な人間の殺人計画を「夜の日記」に綴ることで心をなだめ、どうにか学校生活を送っている。そんな理子の前に、彼女の秘密を知るという少年・悠人が現れる。秘密を暴かれたくなければ父親の殺害を手伝えと迫る悠人に協力するうち、徐々に彼に心を開いていく理子。やがて二人は計画を実行に移すが――。
先読み不能、一気読み必至の青春ミステリ!
解説 有栖川有栖

感想・レビュー・書評

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  • 中学3年生の理子には人には言えないことがある。
    ひとつは〝誰かを傷つけてしまうのではないか〟という恐怖を抱え、その自己治療として身近な人を殺す様子を日記に書いていること。
    二つ目は、小学6年生のときに不思議な関係で結ばれていた友人、加奈子を殺したこと。
    これは事故として扱われたが、事実は理子の中で埋もれることなく生き続け、これが加害恐怖という病を発生させている。
    理子の家族は父親を亡くしたことで壊れた。
    母は一家の大黒柱の重圧と仕事に疲れ果て心を病み、兄は教師としての仕事をしながら理子と母親を養っている。自然と家事の担当をもつことになった理子は、大切にしていた部活動を休止していた。
    誰かを傷つけることを恐れて、目立たないよう息を潜めて生活していた理子のまわりで、しかし波風は立ち始める。
    近くの河原でホームレスが焼き殺され、その犯行があまりに自分の綴った日記と重なったために、これを盗み読んだ兄か、記憶がないだけで自分が殺したのではないかと考える。
    そんな折に、彼女のもとを訪ねた新入生がいた。
    小学6年生のときに理子が殺した加奈子の弟、悠人は加奈子に似た美しい顔を持ち、理子に「姉の死の真相を知っています、バラされたくなければ僕の父を殺してください」と持ちかける。
    不審な兄の行動。続くホームレス殺し。クラスメイトからの攻撃。部活動での乱入者。母親との軋轢。
    様々なものを避けて、最善を尽くしたつもりだったのに。
    彼女の殺人計画は上手くいくのか?兄の行動の意図は?
    物語の終わり、物事はうまくいくこともいかないこともあるけれど、このいくつもの騒動を抱えて彼女はどうやって逃げるのか、戦うのなら正しい方法でなくてはならない理由があるということを知った。


    やっぱり私は男性作者の書く女の子が少し苦手だ。
    なんとも言えない模造品のような手触りがする。
    もちろんそうじゃない作家さんもいるけれど、今回はそれを感じた。
    同じ年代の子が読んだらまた違う感じ方をするのかも知れない。

  • 正しくあることが最重要だけど、それだけでは解決出来ない問題もあることを、狭い世界でもがきながら教えてくれる青春小説のように感じました。

    「外法を使わないとどうしようもない問題だって、あるでしょう」

  • 柱となる話は、友達の父親の殺人計画ですが、その他にも次々と話が色んな方向へと展開していき、予想がつかない展開に凄さを感じました。着地点はどこへ?と終始考えながら、読んでいました。

    雰囲気としては、最初貴志祐介さんの「青の炎」を感じさせたのですが、読み進めるほど違った雰囲気を放っていました。「青の炎」では、自分の家族を守るためでしたが、こちらは自分の秘密を守るためや欲望のために殺人計画を練ることに。

    とにかくこの作品のメインは、少女の心の葛藤だと思います。「加害恐怖」という特殊な精神状態や「私が殺したのでは・・・」「もしかして兄が・・・」など極限の状態で繰り広げられる少女の心境が、ディープで繊細に描かれています。
    殺人や虐待など重めなテーマばかりでしたが、殺人計画だけでなく、「え?あの人が・・・」と驚きの展開もあるので、重たい気持ちにはなりましたが、色々楽しめました。

    結末としては、一応イヤミスではありませんが、素直に清々しい気持ちにはなれませんでした。これからが本当の始まりだと思わせるような感じでしたので、良い方向に向ければいいなと思いました。
    ミステリーというよりは、一風変わった青春小説の印象でした。

  • こういう甘苦い青春の話大好き
    選択肢が少なすぎる若者たちのもがきっていいよね

  • クセがスゴい。恐るべし逸木裕。どの作品を読んでもそこには新しい概念との出会いがある。今回は「加害恐怖」とな。もしかしたら拒否反応を示す人もいるかもな異色な設定満載で進むこの物語、僕は夢中になって読んだ。初めから最後まで、巧みな構成と文章力が飽きさせない。本当にすごいと思う。
    それにしてもクセがスゴい。みんなひねくれている。ほんと大好きだ。

  • 心に闇抱えてる人がなんといっても多い

    アドバイスが良いものになるか悪いものになるかっていうのは受け取り手の問題っていうのにはなるほどってなった。

  • 買ってから8時間もしないうちに読み終わってしまった。

    愛読家(?)の人からするとこれは思われるか分からないが高校を卒業し2年半も小説に触れてこなかった私からするととても珍しい事だし驚いた。

    小説を読んでいると中盤で空きが出てくるがこの本に関してはそれを感じなかった。

    たくさんの本を読んできた訳では無いので、比べる対象が少ないのだが、スピーディに物語が進んでいくように感じた。

    だが、私の理解力や考察力が足りないのか題名の持つ意味がイマイチ分からないままなのが悔しい。

  • 学園ミステリー。
    やや御都合主義的展開が多くて(キャラの性格がゲームっぽいし、イベントが重なりすぎ)途中で若干辟易しつつも、ストーリー展開は面白くて、後半は疾走感を感じる作品。きちんと全ての伏線を拾っているので、読後感はよい。

    けどやはり、ここまでひどい状態に中学生がなるかなぁ?とは思ってしまって、現実離れ感にちょいちょい心が離れさせられる面があった。

  • 先が気になって一気読み。
    中学生の二人がどうにもならない現実でもがくさま。大人の存在がまだ必要で一人で生きていくには難しい年齢。自分の正直な気持ちを言えない、自分は人を傷つけてしまうかもしれないという強迫観念、絶対に人には見せられないものを抱えて苦しむ理子。兄の疑惑、母親の存在、学校での出来事、抱えるものが多い。唯一安らいでいた場所でさえも…。
    薫、マキの言葉、優しい視線に素直にうなずけない、見られない。

    「困難があったら、正攻法で乗り越えればいい。そんな風に考える人間が、嫌いなんです」

    「反対から考えると、正攻法で乗りきれる程度の壁しか、あの人たちの人生にはないんだと思います。」

    「外法を使わないとどうしようもない問題だって、あるでしょう」
    警察、児童相談所、公的機関に頼ればいい、過去もすべて話して解決していこうという薫たちの言葉は二人には響かない。
    友だちのまっすぐさがしんどい。
    まだまだ解決しなければならない問題はたくさん、二人の未来が明るいものだったらいいなと、(先も読んでみたかったけど…)本を閉じる。
    p191-13
    p191-16~192-7まで
    p218-2
    p225-10~14
    p238-18~239-6まで
    p259-10~16
    p326-2








  • 内容(「BOOK」データベースより)
    「人を傷つけてしまうのではないか」という強迫観念に囚われている中学3年生の理子。身近な人間の殺人計画を「夜の日記」に綴ることで心をなだめ、どうにか学校生活を送っている。そんな理子の前に、彼女の秘密を知るという少年・悠人が現れる。暴かれたくなければ父親の殺害を手伝えと迫る悠人に協力するうち、徐々に心惹かれていく理子。やがて2人は計画を実行に移すが―。先読み不能の青春ミステリ!

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著者プロフィール

小説家。1980年、東京都生まれ。第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、2016年に『虹を待つ彼女』(KADOKAWA)でデビュー。2022年には、のちに『五つの季節に探偵は』(KADOKAWA)に収録された「スケーターズ・ワルツ」で第75回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した。このほか著作に、『少女は夜を綴らない』(KADOKAWA)、『電気じかけのクジラは歌う』(講談社)などがある。

「2023年 『世界の終わりのためのミステリ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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