ヘルドッグス 地獄の犬たち (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.97
  • (46)
  • (95)
  • (41)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 852
感想 : 66
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (560ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041094105

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 少し話題の映画の原案になている小説ということで、御近所の書店では出入口に近い辺りの目立つ場所に少し前から積まれていた。チラチラと視ながら、なかなか手にしなかった。が、手にしてみれば「何故、もっと早くに手にしなかった!?」という程度に面白かった。素早く読了に至った。
    所謂「ノワール」というのか、組織犯罪や、手段を択ばずにそれらに対抗しようとする捜査機関や、そういう場で生きる者達の物語ということになる。「フィクションの中」だけに留まって頂きたいという内容を含む物語である。
    物語は、「組織のヒットマン」が敵を襲撃しようと、東京から乗り込んだ沖縄の或る地点で待機しているというような場面から起こる。
    このヒットマンが2人居るのだが、兼高という男が場を仕切っている。室岡という、何時も組んでいる少し若い男を引き連れているような体裁だ。物語は、粗方この兼高を主要視点人物として展開している。
    各地の暴力団の様子も“対策”が強化される中で変わっていたが、東京を本拠地に関東で展開する組織の中では東鞘会(とうしょうかい)が抜きん出た存在になっていた。
    東鞘会は秘密主義を徹底して組織の規律や結束を強め、合法も非合法も含めた活動を密かに展開するというような“マフィア化”を果たし、果敢に国外進出もして力を蓄えていた。警察はそういう形で力を蓄える路線を敷いた5代目会長を逮捕する等したが、やがてこの5代目会長が病死してしまった。
    5代目の路線を確りと受け継ごうとする神津が6代目となるのだが、5代目の実子である氏家勝一が反主流派を糾合し、和鞘連合(わしょうれんごう)を興して東鞘会を離れる。そして東鞘会と和鞘連合との抗争が繰り広げられる。
    和鞘連合側は東鞘会6代目の神津を暗殺し、抗争が泥沼化して行くが、東鞘会の7代目となった十朱の指揮下に巻き返し、和鞘連合は壊滅に追い込まれ、氏家勝一は姿を眩ませてしまっていた。
    兼高が沖縄で襲撃しようとしていたのは、この和鞘連合の陣営で主要な位置に在ったという人物なのだ。兼高自身は東鞘会神津組に在るのだった。神津組内で短い期間で台頭して重要な任務を任されている兼高であるが、実は「重大な秘密」を有していた。
    自身も「重大な秘密」を抱える兼高であるが、密かな狙いが在った。それは東鞘会の会長に収まった十朱が有するという「秘密」に迫ることであった。
    なかなかに凄まじい暴力が溢れる中で展開する謎解きのような感じで、少し夢中になってしまった。散々に色々と在って、行き着いた先に何が在るのか?読後に「微妙な余韻」も在るように思う。
    多分、少し話題の映画とは味わいが異なると想像する。(現時点で映画は観ていない…)それはそれとして、小説はなかなかに好い!アクションや謎解きや謀略というような感じが好きな方には御薦めしたい。

  • 酸っぱく苦い胃液がこみ上げてくるような規格外のノワール小説。警官が暴力団に潜入するストーリー。ミイラ取りがミイラ以上の活躍をし、表の顔と裏の顔の区別がつかなくなるぐらいから、ページをめくる手が止められなくなる。

  • ありえない話しだが、最後まで引き込まれた。

  • 久しぶりに滾りました。素晴らしいストーリーです。ありがとうございます。
    洋画の「新しき世界」に似ており、警官がヤクザ社会に潜入して、ヤクザの秘密をブン捕ろうとするのがメイン。標的はトップの十朱(とあけ)であり、実は十朱も元潜入捜査官であることが判明。元警官からヤクザを生み出してしまったこと、警察という組織が、潜入捜査をして殺しを認めていることなどがあり、警察として十朱に手が出せないでいたところに、主人公である兼高(本名、出月)が組織の駒として潜入を命じられる。

    最初から最後までグロいシーンばかりで、警察小説と言うよりはヤクザ小説。ハードボイルド。兼高としての視点で物語が進むため、兄弟や親父がたくさん出てくるが、みんな魅力的なキャラすぎて、次々と死んでいくのが悲しかった。特に兼高の兄弟分の室岡はキラーマシンと言われるほどぶっ飛んでるけど、兼高を慕ってて、コンビ技なんて本当にカッコイイ...お互いが心の底から信頼してるってのが分かる。土岐(兼高の親父)も漢気溢れる人で、自分の親父(十朱)に拳を見舞った上でエンコ詰めしようとするなんてもう...。笑
    阿内(出月の上司)の執念深さには震えた...自分の元妻、娘に危害が及ぶのを平気で許して、それでも十朱を殺したくて、その強い憎しみって尋常じゃない、異常すぎた。たかが親友のためにそこまでする?ちょっと納得はいってないかも。

    最後は十朱、阿内、兼高での激しい銃撃戦。
    十朱は死に、警察の秘密であるSDカードも奪い取れる。
    阿内は銃弾にあい、命を落とす直前で「俺を撃て、もう警察には戻れない」と、兼高にヤクザとして生きる道を提示する...。私個人的にはそのままヤクザとして、兄弟達と生きて欲しかったが、兼高はヤクザと警察両方を裏切る道を選ぶ。(警察に残ってもいつか消される恐れがあった?)
    警察の秘密をマスコミにばら撒き、警察組織すらも裏切った兼高は1人で生きる道を選ぶ。兼高の最後の決断はなぜなのか、分かるようで分からないこのモヤモヤした感じがたまらなく好きで、単純明快ではないところが「新しき世界」と違ってまた良い。笑

  • 潜入捜査官が沖縄に行き裏切り者を始末する冒頭から引き込まれていってどうなっていくのか最後まで読む手が止まらなかった。
    潜入がバレるかどうかには重きはおいてなくて、兼高が犬をやめて十朱のようになってしまうのかどうなのかが気になっていたが、最後の結論は予想してなかった。

  • まさにハードボイルド。かなり凄惨で過激な表現も多く、実写化してみて欲しい思いがある一方で、ここまで過激でリアルなグロさとか痛さとかを感じれるのはやっぱり本ならではなんだろうな。とても面白かった。

  • 暴力団への潜入捜査の物語といって思い出すのが、以前西島秀俊が暴力団に潜入した確か「ダブルフェイス」というタイトルのドラマである。ハラハラ、ドキドキしながら観ていた。
    ヘルドックスもそのドラマに負けず劣らず、読み進めれば進めるほど作品の世界に引き込まれてハラハラ、ドキドキだった。
    あらためて警察官が暴力団に潜入捜査をするなんて事が現実にあるのだろうか…と思った。

  • 映画を見た後に原作を読んでみた。
    どっちもおもしろい。
    もう一回映画を見よう。

  • 刑事がヤクザに潜入。
    頂点にいるのは先に潜入した裏切り者の刑事。
    どでもないハードな物語。

  • 警察がヤクザ組織に潜入し、殺し屋としてのし上がりながら使命を果たそうとする話。
    反社会的勢力と認定されている昔ながらの組織より無茶をする人たちがいる令和の時代より昭和の終わり頃の匂いがするところが少し現実とはズレていますが、緊張感があって一気に読むことができました。

全66件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1975年山形県生まれ。2004年『果てしなき渇き』で第3回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞しデビュー。同作は14年『渇き。』として映画化、話題となる。11年『アウトバーン』に始まる「八神瑛子」シリーズが40万部を突破。著書に『卑怯者の流儀』『探偵は女手ひとつ』など多数。

「2022年 『天国の修羅たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

深町秋生の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×