黒牢城

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041113936

感想・レビュー・書評

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  • 様々な方面から評判が聞こえ、文庫になるまで待ちきれず、買ってしまった……。
    歴史的な背景を詳しく知っていたら、さらに楽しめただろうなー。

    信長に反旗を翻した、荒木村重。
    その行いについて「この戦は負ける」と言い切り、自らの処罰を望んだ官兵衛に対し、村重は土牢に幽閉するという措置を取る。

    毛利の援軍を待ちながら、その間に城の周りで不可解な出来事が起きる。
    村重はそれらを放置しておくと、戦の士気にも関わると考え、事件解決へと乗り出していくのだが。

    一話で一つずつ事件を扱いながらも、じりじりと、村重が追い詰められていく様子がよく分かる。
    解決されたかと思った出来事の裏に、巧妙に張り巡らされた糸。それらが巧く組み合わされて、物語としての展開が厚くなるのが、面白い。

    何より、人としての振る舞いがミステリーにかけられると「浅い」と思わされてしまう、怖さ。
    どれだけの苦慮も、決断も、もっと大きな目を持つ者からすれば、ちっぽけで、自分勝手な児戯にしか映らないのか。

    個人的には、エンディングの描き方によって、村重の印象が大きく変わるだろうなぁと思いながら、何とも言えず、濁したまま終わった感じもする。

  • 歴史小説の形を借りた、連作ミステリー。しかも地下牢に幽閉中の囚人が安楽椅子探偵という奇想天外さ。このパターン、新鮮だった。以下簡単に概要をまとめると…。

    信長に謀叛し、有岡城への籠城を決め込んだ智将、荒木村重。この村重説得のため、決死の覚悟で有岡城を訪れた小寺官兵衛は、追い返されもせず、斬首されるでもなく、地下牢に幽閉されてしまう。息子、松壽丸を信長に人質として差し出している官兵衛は、村重のこの仕打ちに憤り、密かに深謀遠慮を巡らす。

    官兵衛の苦衷をよそに、有岡城では、籠城が続く中将兵の動揺を誘う事件が次々起こるようになる。

    まずは織田方に寝返った大和田城の安部兄弟から人質として預かっていた安部自念が、(村重は入牢を命じたにも関わらず)何者かに殺害されてしまう。誰がどのようにして殺害したのか判明せず困り果てた村重は、密かに地下牢を訪れ、官兵衛の知恵を借りて真相を究明する。

    続いて、城東の沼沢地に突如築かれた織田方の陣を、籠城に倦んだ高槻衆(南蛮宗徒)と雑賀衆(一向宗徒)を率いて夜襲した村重。見事夜襲には成功したが、敵方の大将の首を何れの陣営が討ち取ったかが判明せず、城内に不協和音が巻き起こる。ここでも、村重は官兵衛の力に頼って真相を究明し、事なきを得る。

    諸陣営を渡り歩き密使を務めている廻国の僧無辺(庶民にも人気が高い)が、村重の密命をおびて有岡城を旅立とうとする直前、何者かに殺され、密書を改められた上、名器〈寅申〉も奪われてしまう。三度起こった事件も、官兵衛の示唆で解決する。

    無辺殺しの犯人は、村重から罪を糾弾された直後、雷に打たれて絶命してしまうのだが、同時に鉄砲でも狙撃されていた。その犯人こそが謀叛人と思い定め、四度官兵衛を頼る村重。その真相は意外なものだったが、結局、籠城以来、村重の胸の内を理解し、適切な助言を与えてくれる存在は官兵衛だけだった。村重は、いつの間にか官兵衛の手の平で踊らされてたことを思い知るのだった。

    とまあこんなストーリー。一つ一つの謎解きは小粒。本作の読みどころはむしろ、籠城が長引くなか、求心力が徐々に衰えていき、将兵の士気も低下して疑心暗鬼になっていく村重の姿、かな。

  • わー!面白かった!!!読んでる途中からワクワクして、最後はもう面白くって一気に読んだ。
    配役はNHK軍師官兵衛でイメージできたので官兵衛はずっとイケメンでした。
    米澤さんらしい緻密なプロットと、最後に迫るこれまでの解釈の裏解釈。こういうことができる頭の構造が見てみたい。

  • 私は歴史に疎いため、荒木村重という人物のことは全く知りませんでしたし、
    黒田官兵衛については名前を聞いたことがあるくらいで、城の地下に監禁されていた過去があったことは、本作を読んで初めて知りました。

    このとおり何の前知識も持ち合わせていませんでしたが、
    本作に立ち込める陰鬱な雰囲気にいつの間にか引き込まれてしまい、章が進むにつれて、村重と官兵衛、そして有岡城の行く末を見届けたいという思いが強くなりました。

    強いものだけが生き残っていく戦国時代。
    辿ってきた道のりを戻ることはできず、先の見えない暗い未来しか残されていないとしても、進むことしかできない。
    ただ"生き残る"ということが、どれほど難しいことだったのか。
    城を統べる主君のプライドや信念、そして多くの苦悩が詰まった作品でした。

  • 直木賞受賞作品である。これまで読んできた米澤穂信の作品と少し異なる。ミステリーではあるが。歴史小説でもある。歴史上の証跡のある史実以外は、全てミステリーなのかもしれない。

    さて、題名の黒牢城だが、なぜ籠城ではなく牢城なのかが気になる。篭ったのではなく、閉じ込められたということか?黒がついているので、裏黒いということか、黒田官兵衛の黒か?と思いを巡らす。私は題名だけで楽しめる。

    織田信長に謀反をした荒木村重が有岡城(伊丹城)にて不可解なことが起こったことを謎解きする。
    なぜ謀反を起こしたのかは諸説ある。土牢に幽閉された黒田官兵衛が安楽椅子探偵の如く大きな役割を果たしている。

    4つの章立てでそれぞれにミステリーの要素が入っている。この構成は面白い。雪夜灯篭は密室殺人、花影手柄は大将の首を取ったのは誰か、遠雷念仏は庵から消えたものの手がかりを探る、落日孤影は処刑される前に殺されたのはなぜか?この4つが繋がった時、ひとつの真実が見えてくる。表現力もあるので、引き込まれていく作品だった。

  • 日常の謎を得意としながら「折れた竜骨」「王とサーカス」のように、その舞台となる時代や場所の空気感を出すのもとても巧い作家さんだと思う。本作でも時代考証が緻密でリアリティーがあり、最初はちょっと戸惑うものの時代掛かった表現も無理がない。黒田官兵衛を安楽椅子探偵に仕立てた発想が面白く、歴史ミステリーとしてもとても読み応えがあった。現時点で4大ミステリーランキング制覇と山田風太郎賞で5冠+直木賞候補も納得の一冊。米澤さんの新境地を見た思い。

  • 歴史物って言葉遣いや読みにくい漢字が多くて、何となくモヤモヤしながら読むことになるのでなんとなく苦手。

  • 米澤穂信=古典部シリーズのイメージが強い私にとっては、読む前から驚きがあった作品。直木賞も取った作品ということで読んでみた。
    織田信長が隆盛を極めんとする群雄割拠の戦国時代。織田信長に仕える有岡城主・荒木摂津守正重と大河ドラマでもおなじみ、黒田官兵衛が主人公。荒木正重の織田信長への謀反により物語は始まる。
    歴史ものが好きな私ではあるが、ちょうどこの辺りの知識には乏しく、黒田官兵衛に関してもあまり知識がない中で読み始めた。
    実際にあった出来事をベースにしているのだろうが、基本的には謎解きミステリー。
    古典部シリーズで言うところの、折木奉太郎=黒田官兵衛、千反田える=荒木正重と言ったところか。
    とはいえ、やはり時代背景が戦国時代ということもあり、理解するのになかなかに時間がかかる。450ページ弱というボリュームも有り、読むのは骨が折れた…
    まぁ黒幕はやはりお前か…という感じではあったが、個人的にそこに至るまでの動機みたいなものがわかりづらかったかなと。。あとどこまでが歴史でどこからが物語という点がわからなかったため、余計に混乱してしまった。大河ドラマの影響で黒田官兵衛=岡田准一のイメージが強かったのも、個人的には読むのに邪魔になってしまった。
    悪くはない作品でしたが、私は米澤穂信=古典部シリーズかなと改めて思った次第でした。

  • 歴史物とミステリー。
    どちらも好きなので、とても楽しみにしていました。

    謀反を起こして有岡城に立て籠った荒木村重。
    城内で起きる謎の出来事。
    村重は、土牢の黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。

    村重が何故、織田に反旗を翻したのか?
    光秀の本能寺の変と同じように、以前から疑問に思い色々と想像していた。
    この作品の中での村重、官兵衛は、違和感なく、あぁこんな風だったのかもしれないと思わせてくれる。
    (私が勝手にイメージする官兵衛よりも、少し父親色が強い気はしましたが)

    籠城の結末が分かっているので、読んでいて段々と苦しくなり、追い詰められていく村重の心の描写もリアルに感じた。
    官兵衛との対峙も面白かった。
    読みごたえがあって、十分に楽しめたが…
    個人的な好みとして、やはり村重にはあまり共感できない。

  • ・第166回直木賞
    ・第12回山田風太郎賞
    ・ミステリが読みたい! 2022年版1位
    ・週刊文春ミステリーベスト10 1位
    ・このミステリーがすごい! 2022年版1位
    ・2022本格ミステリ・ベスト10 1位
    ・週刊朝日「歴史・時代小説ベスト3」1位
    (全て国内編にて)

    戦国時代を舞台にしたミステリー小説は他にもあるけれど、章ごとに起こる奇怪な事件を官兵衛の知恵を借りながら解決していくオムニバス形式は新鮮に感じました。
    歴史的な知識はほぼゼロのまま読みましたが、いつ誰が寝返るかもわからない緊張感のある長編小説で読み応え抜群、なかなかおもしろかったです。
    読書の好きなところの一つに、自分が知らない分野の知識を得れることがありますが、この本では戦という分野で、武士がいかにプロフェッショナルかを知れました。こんなふうに心理を図るんだ、こんな対策があるんだ、と感心しきりです。
    命懸けの戦国時代に生きた人々の考え方は興味深いですが理解できないので腑に落ちない場面もありました。
    最後に登場人物それぞれのその後が記されているのはよかったです。史実に基づいたストーリーだからこそ感動も大きく、楽しかったです。

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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