- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041121597
作品紹介・あらすじ
江戸は神田三島町にある袋物屋の三島屋は、風変わりな百物語をしていることで知られている。
語り手一人に聞き手も一人、話はけっして外には漏らさず、「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」これが三島屋の変わり百物語の趣向である。
従姉妹のおちかから聞き手を受け継いだ三島屋の「小旦那」こと富次郎は、おちかの出産を控える中で障りがあってはならないと、しばらく百物語をお休みすることに決める。
休止前の最後の語り手は、商人風の老人と目の見えない彼の妻だった。老人はかつて暮らした村でおきた「ひとでなし」にまつわる顛末を語りだす――。
感想・レビュー・書評
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3編の短編集。
「賽子と虻」 映画『千と千尋の神隠し』みたいな感じ。主人公、餅太郎が神々の賭場に迷い込む話。餅太郎の面倒をみてた賽子のキリ次郎が可愛かった。この子がいたから餅太郎は神様の世界で暮らせたと思う。キリ次郎の代わりにおだいが餅太郎のところにきた時はジーンときた。おだいというのは、餅太郎の姉が"ろくめん様"(餅太郎が暮らしている村で祀っている神様)に供えた賽子。現実の世界では、餅太郎の家族が餅太郎の帰りを待ってるし、無事を祈っているという事が分かって、餅太郎に勇気を与えたと思う。優しくて勇気がある餅太郎。黒白の間で富次郎に神々の賭場で起こったことをすべて話して、それをきっかけに幸せに暮らせるといいな。富次郎が最後に「もう一度生き直しましょう。」「ろくめん様の最後の氏子として、誇りを持って生きるんです。」と餅太郎に掛けた言葉に感動した。
話の中で神様たちの勝手な決まり事で氏子たち民が困っている、とういのがあったけど今の私達の世界と一緒だなと思った。政治家たちが決めた事に民衆が振り回されてる気がする。あと、神の世界を壊す人間は恐いと思う。自分の意に反するものを壊すのは駄目だよな。
「土鍋女房」 私は三編の中でこの話が一番好き。主人公のおとびが良い。離婚を経験して辛い思いを今でも引きずって暮らしている。家族で支え合って懸命に暮らしている姿が好き。その一家の主人、兄の喜代丸の言動、行動が不思議で、喜代丸はどうしてそんなに頑ななんだろう?と謎だった。謎が解け、これはもうどうする事も出来ない、と分かった時のおとびの絶望感が痛い程伝わってきた。兄を思うおとびの悲しい話なんだけど、途中で人間の悪い本性を見て、こういう人いるよねーとイラッとしてしまった。
「よって件のごとし」 これは映画『バイオハザード』みたい。"ひとでなし"が生きてる人間を襲い、喰らう。立冬で異常に寒い日に"ひとでなし"が現れ、恐ろしい日が始まる。寒さがおさまれば終わるみたいだけど、これはエンドレスではないのか?池の穴から全く知らなかった隣村の人がくるというのは無理があって不思議。どうやって事態を治めるのが気になってたけど、中途半端な気がする。羽生田村が異世界の村という事なら何となく納得は出来るんだけど。この話は、私的にモヤモヤしてしまう。
富次郎の兄、伊一郎が、三島屋に帰ってきた。
その事が百物語にどう関わってくるのか、楽しみ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
シリーズ八の一冊。
今回は三話全て深みある濃さだった。
三名が語る面妖な体験。
随所に人の胸の内を被せながら相変わらず読ませてくれる。
小旦那の優しさ、語り手との新しい試みも受け止める心意気も清々しいし、自分の心をやきもちから解放するまでの逡巡も微笑ましい。
水神様、おとびさんからのお守りの話が一番好き。
おちかのお祝いも待ち遠しいし、伊一郎さんとの兄弟絡みも味わえて良かった。
次巻は三島屋に明るいニュースが溢れると良いな。
何事もないように…と願い黒白の間の襖をそっと閉める、いつもの三島屋メンバーの温かい気遣いも好き。 -
面白かった!!おちかの頃の人情味のあるのも面白かったが、個人的には富次郎はヴィジュアル的で、アニメとか実写になったら、さぞやハリウッドかと思う。脳味噌に絵コンテが出てきてしまうタイプ。本作は『賽子と虻』『土鍋女房』『よって件のごとし』の三本。『賽子と虹』は千と千尋のアレな感じ、餅キャラすばらしいです。『土鍋女房』は異類婚姻譚、神婚説話系で、三本の中では私比で一番線が弱く感じたが、出てくるライバル嫌女がそれはそれは嫌な感じで女性向けキャラ文庫で出てきそうな感じなのが面白い。タイトルにもなっている『よって件のごとし』はめちゃくそカッコいい、好物のゾンビ(ちょいバンパイヤ風味)もの。畑作八郎兵衛と浅川宗右衛門(父の方)推せる!弓スナイパーよき!
読了感すばらしいホラーの名作かと思います(恐怖はないが、ホラーカテにするしかない)
3日で2巡しましたわ、
特に餅が小鳥の神様を見て、
その神様のことを賽子に質問するシーンが好き
>「翼は何色でごじゃらった?」
「目映いような金色!大広間の欄間の向こう側に、つがいで止まってたんだ。おいらの気を感じたら、飛んでいっちゃったけど」
「それは富くじの神様でごじゃる」
「へえ〜!富くじの神様のお姿を拝んで、鳴き声も聞かせてもらったおいらは、富くじに当たりやすくなってるかな?」
「それとこれとは話が別じゃ」
存在の数だけ神様が居る
日本ってすばらしい。 -
学芸通信社配信から神戸新聞他新聞6紙に2020年7月〜2022年2月に渡り掲載されたものに加筆修正し、2022年7月角川書店刊。賽子と虻、土鍋女房、よって件のごとし、の3編を収録。三好愛さんの挿絵が楽しい。なんと言っても、賽子と虻が三島屋変調百物語枠を大きく超えるほどの出来で秀逸。神さまの世界の成立ちとことわり、そしてその終焉までが興味深く面白く書かれ、はらはらドキドキと謎でとても楽しめました。
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聞き手を富次郎に変えて続く、黒白の間での百物語シリーズ。
人の力では太刀打ちできないものに、大事な人を奪われ、生活を壊され、めちゃくちゃにされる。
抗うすべもなく苦しむ話が多く、読んでいてきつかった。
明るくて、言いたいことをはっきり言う。
「土鍋女房」のおとびは清々しく、重たい本作の中では救い。
「賽子と虻」のキリ次郎も、独特のしゃべり方も含め、あたたかかった。
聞き捨ての決まりが、やや緩くなっている印象。
全体的にやや冗長。 -
百物語も8作目になるのですね。
今回も少しゾワゾワしながら楽しく読めました。
表題作だけあり『よって件のごとし』が一番読み応えがありました。
百物語そのものも面白いですが、おちかや富次郎など登場人物のお話しも好きです。 -
富次郎が聞き手になり、聞き終えた後の対応がおちかとは変わる。
それもまた良し。
中編3つで、いずれも上質な映画のようだった。
タイトルの1編がまあ怖い怖い!
でもこの1編だけでも、映画してほしいような、ダイナミックな画を想像できる面白さだった。
それにしても富次郎の兄伊一郎さん、ちょっとかっこよすぎてびっくりした。この人の登場で、また何が変わるのか、また楽しみ。
そしておちか。おめでとーう! -
最初から読み続けているシリーズ。今回もかなり残酷な怪談話なのに、装画かやわらかいタッチなので、緩和されている。何だか一区切りついたような展開だったけど、まだまだ続きは、読みたい。