理想の夫 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041122198

作品紹介・あらすじ

◆1895年ロンドン。将来有望な政治家ロバートと貞淑な妻ガートルードは、だれもがうらやむ理想の夫婦。そして、自由気ままな独身貴族アーサーは、ロバートの親友で、ガードルードとも昔馴染みの間柄だった。◆ある日、ロバートが催した夜会に、妖しい魅力のチェヴリー夫人が現れる。◆彼女は、ロバートが犯した不正の証拠をちらつかせ、ある投資事業に便宜を図るよう迫る。◆脅迫を拒めば、社会的地位も妻の愛も失ってしまうと苦悩するロバート。すべてを打ち明けられたアーサーは、親友を救うために、チェヴリー夫人と対決することを決意するが……。◆優雅な社交界の裏で繰り広げられる、華麗な嘘と激しい火花の散らし合い。果たして恋と陰謀の行方はいかに!? ◆ワイルドのテンポよい展開とウィットに富んだセリフが光る、人間ドラマの傑作。 ◆2022年2月、宝塚・星組で本作を原作とした「ザ・ジェントル・ライアー~英国式、紳士と淑女のゲーム」が、同2月、新国立劇場で本作「理想の夫」が上演される。これが本作の日本で初めての上演となる。

感想・レビュー・書評

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  • 脚本を読むことはめったになく、しかも、社交界での会話とあって、久しぶりに会った親戚と会話してる気分になって、へきえきした。

    だけど、その退屈な会話の裏で何が起きているのかがおぼろげに見えてきたあたりから、面白くなっていく。こういう物語の仕方もありか。

    本当は、途中で宝塚の「ザ・ジェントル・ライアー 」のホームページの登場人物紹介をのぞき見して、どんな人物なのかあたりをつけて、読んだのですけど・・・。

  • 19世紀末のロンドン社交界を舞台に理想の夫を巡って女性達とそれを取り巻く男性達の思惑を描く。理想の夫・ロバートの秘密、ウィットに飛んだ会話劇と心理戦、特にチェヴリー夫人の悪女っぷりが見所。時々お互いの認識が食い違っている点もコミカルで面白い。ヴィクトリア調の華やかな衣装、会話からは窺い知れない心の機微や表情は確かに舞台向き。愛とは、愛することはどういうことかを改めて示している。ラスト「理想の夫」について話すシーンが印象に残る。

  • 2022年2月の話題の作品である。
    『理想の夫』が新国立劇場で上演され、『ザ・ジェントル・ライアー』としてタカラヅカで上演される。
    この演目が舞台化されるのは、日本で初のことという。
    この『理想の夫』月間に、これを読まない手はない。

    しかし、冒頭が面白くなかった!
    パーティーの席に様々な人が現れて、なんやらかんやらくっちゃべっているのだが、これがまたつまらない!

    『マーモント夫人 ええ。あそこのパーティーって退屈でうんざりするわね。そうじゃないこと?
    バズルドン卿夫人 ほんとうに退屈でうんざりするわ! どうして私ったらあんなお宅へ伺うのかしら。あのお宅に限ったことはないわ、いったいどうして私ったらよそのお宅なんかへ伺うのかしら』 (7頁)

    その上、これだ。

    『チェヴリー夫人 あら! 心理学では私ども女性を説明することはできませんわ。女性の強みはそこから出ていますのよ。男性は分析することができますけど、女性は……ただ憧れの対象になるだけですわ。』 (19頁)

    こういう男女論が、私は嫌いだ。大嫌いなのだ。
    面白さが見えてきたのは、ようやく40ページくらいだろうか。

    ロバート・チルターン卿 高潔な人柄で知られる政治家
    ガートルード 貞淑なその妻
    アーサー・ゴーリング卿 ロバートの友人 伊達男
    チェヴリー夫人 ウィーン社交界の花 ロンドン出身
    冒頭の有象無象の中で、覚えておくべき人物は、この四人だけである。

    そして、加えるならば、
    ロバートの妹、メイベルと、
    アーサーの父、キャヴァシャム卿
    この二人だけだ。

    ロバート・チルターン卿は、若い頃に一度だけ、外聞の悪いことをした。
    その証拠をチェヴリー夫人は持っている。
    そして、ゆすってくるのだ。
    友人のアーサーに打ち明けると、尽力すると言ってくれた。
    どうすればいいかは、まだ考えが浮かばないのだが。

    こういった話は、めでたしめでたしに終わると決まっている。
    しかし、どうやって?
    私ならどうする?
    さっぱり見当がつかない。

    演劇特有のちぐはぐ、ドタバタがあり、よりによって今やってくる人がおり、愛あり、野心あり、名誉あり、多額の金も、宝飾品もあり――
    ハラハラ、ドキドキ、冒頭とはうってかわって、充分に楽しむことができる。

    さすが、オスカー・ワイルド、
    たいへんに面白い作品だった。

  • ウィットに富んだおしゃれな英国古典文学。おしゃれで小粋なやり取りと、入り組んだ人間関係にワクワクします!

  • 夫を理想化し愛する妻。清廉潔白、新進気鋭の政治家の夫。しかし、過去の不正を知る女が証拠となる手紙を手に現れ、家庭生活も政治家生命もひっかきまわそうとするが…。夫の親友が相談にも乗り、解決にも手を貸し。硬い考えにこりかたまった妻も一連のできごとと説諭を経て、結婚生活第二幕へ、といった戯曲。19世紀末のイギリスでは、常識は男だけが持つもの、男は欠点も含めて女を愛するが、女はまったく欠点のない男としか愛せない、女は男をゆるすべきもので罰するものではない、というのは当時の一般的な通念だったのでしょうか、あるいはワイルドの希望だったのかしらと思いつつ。◆チェヴリー夫人 女の一生で本当の悲劇っていえば、たった一つしかないわ。それは、過去のことをいつも愛人のように思ってなつかしがり、未来のことはいつも夫のように思ってあきらめていることよ。p.156◆ゴーリング卿 人間は男も女も、お互いにそのような犠牲を受けるように創られているものではありません。それを受けるほどの価値は人間にはないのです。p.200

  • 宝塚で舞台化されるのを期に復刊されたので勝ってみた。
    まだワイルドはサロメしか読んでなかったから、こんなに軽やかに面白いコメディだとは思わなかった。
    全てが丸く収まって大団円、というところで、たしかに宝塚別箱でやるのにちょうどいい登場人物数とストーリー。
    男がどう、女がどうみたいな台詞は今読むと眉を顰めるようなものでつまらないんだけど、そのあたりを抜きにしたらとても面白い作品。これ読んでなかったらワイルドは辛気臭いイメージになっていたところだった。読んでよかった。

  • ・「男の一生というものは、女のそれよりも価値があるものなのです」

  • 星組公演に向けて予習!

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著者プロフィール

1854年アイルランド・ダブリンに生まれる。19世記末の耽美主義文学の代表的存在。詩人・小説家・劇作家として多彩な文筆活動で名声を得る。講演の名手としても知られ、社交界の花形であった。小説に『ドリアン=グレーの肖像』戯曲に『サロメ』『ウィンダミア卿夫人の扇』回想記に『獄中記』などがある。1900年没。

「2022年 『オスカー・ワイルド ショートセレクション 幸せな王子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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