- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041131794
作品紹介・あらすじ
未曾有の感染症が世界に広がり、記念館の閉館セレモニーは中止。百花もリモート環境で大学の卒論制作と就活が始まった。一成とも誰とも会えず不安な時を過ごす中、百花は改めて和紙の意義について考え……。
感想・レビュー・書評
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シリーズ6作目。
記念館閉館イベントが、コロナの影響で中止になり百花は慣れないリモート環境下で卒論と就活に取り組むことに。
第一話 手漉き和紙見本帳
就活に苦戦していた百花の元へ和紙見本帳が届き、改めて伝統を守るということの大切さに気づかされ、最終面接を乗り越えて内定をもらう。
ひたむきに頑張る素直な百花に拍手。
第二話 わたしたちの日常
コロナ禍で最も知りたいのは、みんなの動向。
みんな寂しくない?落ち込んでない?
誰かと少し喋るだけで頑張れるという気持ちが伝わってきた。
今は落ち着いているけど当初を思い出してしまった。
第三話 結のアルバム
卒論のテーマに惹かれた。
小川未明の絵本『赤い蝋燭と人魚』をあらためて読み直したいと思った。
そして、動揺も手がけていたことを知りこちらも興味を持った。
動揺に出てくる海はいつも不安に満ちている。「闇」「海と太陽」とても良い。
百花は、作ることが好きで好きで…卒論を先に進めないと、なのに結局合間合間に箱ものを作っている。
没頭しているうちに精度の高いものに仕上がり、満足いけば卒論にも集中できて予定通りに出来ている。
先生へのプレゼントも心のある素晴らしい水引きを使用したアルバムを渡すことができた。
先生曰く、「あらためて紙というものの偉大さを感じた」「紙にかかわる仕事をするということは、その歴史を背負うこと、過去を背負い、先に進む。
生きるとはそういうこと」
とても深い。
止まっていた時間があったとしても、きっといつか大きく…もっと大きくなって動きだす。そんな希望が見えてきた。
ラストにまだ続きそうな予感⁇が。
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このシリーズ6冊目。今度も配偶者のほうが先に読み終えた。
コロナ禍で記念館の閉館イベントも中止になった前作から続き、全編を通じて蔓延が始まったばかりの頃の街や生活の様子が描かれる。
不要不急の外出自粛、オンラインでの会議や面接、リモートワーク、病院や介護施設での面会謝絶といった緊急事態宣言下での生活だが、それらには私たちが経験したことやニュースで取り上げられた以上のものはなく、あの時はそうだったよねというようには思いながらも、あまり面白みはなし。
ただ、『いまのこの社会が現実。こんなことになってなかったら、って思うのはやめよう。いまだからできることはあるんだから、悔いがないようにいそれをやり遂げよう』という前向きな気持ちが表されていたのは、この物語らしくて良かった。
そうした状況を下敷きにしながら語られる第一話のメインは、百花の藤崎産業への入社試験。
ただでさえ緊張するのに加えてオンライン面接とは、なかなか動揺する局面ね。
ありきたりな展開だが、このタイミングで手漉き和紙の見本帳を送ってくる一成の心遣いが嬉しい(彼も成長したよね)。
第二話は大学祭に向けた雑誌づくりが中心の話。
コロナ禍の制約の中での知恵の出し合いだが、3年生も2年生もみんな前向きで救われる。
今やここから3年経っているのだが、色んなところでこういう知恵を出し合ってきて今の暮らし振りがあるのだなと改めて思わされた。
途中挟まれる松下さんの祖母の話は切ない。
第三話は卒論の話、の筈が、その気休めに箱づくりを始めたら、そちらがメインになった模様。
紙小物について考え出したり作り始めたりすると次々とこうしたらどうかということが湧き出して来るところはさすが“小鬼ちゃん”。
そんなことしないで早く卒論書きなよという気持ちだったが、こちらが気を揉んだ割にはあまり呻吟が描かれずに卒論が完成したのにはやや脱力。
記念館が再スタートすることになった時のオリジナルグッズを考えたり先生に渡す手紙の本づくりなども重なって、最後まで小鬼ちゃん振りのほうが目立つ。まあ、彼女らしいけど。
最後に出てきた記念館の移転先が川越になるのは、楽しみなようでもあり安易なような気もしたり。 -
シリーズ6作目。
コロナの世界的大流行の影響で記念館閉館イベントは全て中止。
大学4年生となった百花は、リモート環境下で卒論と就職試験に取り組むこととなる。
突然身に降りかかった未曽有の事態。
誰もが不安で、どう乗り越えたらいいのか分からなかった2020年を2年の期間をおいて描いてくれたことで、その実態を冷静に受け止めることが出来た気がした。
5作目の感想で、「書き急ぐのか?」と書いたが、この6作目でコロナに翻弄された1年を丁寧に描いていたような気がする。
学生の大事な1年さえも、コロナは奪ってしまった。
たくさんの人が虚無感に襲われたと思うが、自分の心の中にいつもいた大学4年生、高校3年生など最後の1年間を奪われてしまった人々の想いが、今作を通じて知ることが出来た気がする。
もちろん、今作はフィクション。
作者さんだって、本当の大学生ではない。
それでも百花やゼミの同級生、サークルの仲間とのやり取りから、にじむやるせなさや、その中で必死に前を向こうとする気持ちを感じ取ることが出来た気がする。
リモートのやり取りしか出来ない中で、自分が出来ることを見出そうとする人たちの言葉にも勇気をもらえた。
特殊な環境だから、これまでのような内容とは違うけれど、唯一出て来た「結のアルバム」のラストには涙がこぼれた。
記念館の未来には驚きだったが、次作から藤崎産業の社員となる百花の活躍に期待。
今作の刊行記念のオリジナルグッズが、すごい気になる・・・ -
春霞の小箱から世相を反映した内容になっていて、記念館の閉館は新型ウイルスの影響でイベントが中止。淡々と片づけ、そのうちに緊急事態宣言なんてものが発出され、大学最後の年は不穏な始まりを迎えた百花。家族がいるからなんとか家だけの生活でもなったけれど、一人暮らしの大学生にはかなりきつい期間だっただろう。
百花の就職活動、藤崎産業の採用活動はされるのだろうか。館長はいま必要な部署で取り急ぎがむしゃらに働いているよう。
タイトルのアルバム、どんなものかととても期待していた。画で見られないのは残念だけれど、百花が卒論の合間に作成していた箱、いいなぁ。水引で模様がつけられているなんて、なおさら!先生もさぞかし嬉しかったと思う。 -
コロナ禍を真正面から扱っている今作。これは、紙というものの歴史を捉える点、そして何より「繋がり」を考える意味でも避けて通れないテーマ。優しい物語の中に作者の強いメッセージを感じた。
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読了。
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コロナ禍の学生の卒論、就活、サークルの実態。
活動を制限された中での人は、不安定になって…
今回は何もできない中で作り出していく事について、どう気持ちを切り替えるか、百花の心理描写がたくさん出てきた。
それでも、この学校、このサークル、このゼミは恵まれている。
残念だったのは、百花の作った箱、アルバムの製本したものなどが、どこかイラストででも入っていてくれたらよく理解出来たのになぁというところ。