犬神家の一族 金田一耕助ファイル 5 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041304051

感想・レビュー・書評

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  • 一族の血みどろの争いを臨場感たっぷりと描き切った作品。ミステリ古典の傑作として有名な今作は、不幸な運命を辿る一族を残酷に克明に描きながらも、一方ではパズルのピースが嵌まるような感覚を得ることができる。犯人当てを前提としていない分若干の物足りなさはあったがそれでも日本推理小説史上屈指の名作であることに変わりはないであろう。

  • 3.5くらい
    金田一シリーズの中だと雰囲気が柔らかい方だった。映像化された作品の印象的な場面のイメージが強いけれど、ちゃんと作品を観たり読んだりした人は意外と少ないと思う。やはりしっかりとした構成と謎解きの流れはさすがでした。

  • 美しいヒロイン、一族間の確執、陰惨な事件と雰囲気たっぷりで、夢中で読んでしまった。
    偶然の多さすらも運命の導きのように感じられ、長く読み継がれる作品はそれ相応の魅力があり面白いと感じた。

  • 映画やドラマで何度も見た有名作品である。
    年末に加藤シゲアキ主演のドラマを見た後にネットで色々見ていたら、映像作品ではほぼカットされている設定があると知って原作を読んでみた。
    たしかにこの設定があるとドロドロ感が濃くなるし、仮面の下で何を考えているかわからないスケキヨの人間性も垣間見えるような気がする。
    終盤に金田一が和服のままスキーで疾走するシーンにはびっくり。
    しかし映像によるあの不気味な白い仮面と湖から突き出た足のインパクトはものすごいので、文章で読むと思ったより平坦な話かも。

  • 酸鼻な事件が起こるのも止むなしと思える、舞台設定が巧み。戦前戦後にかけての道徳観ならではの人間模様が織り成す、親子数代にわたる愛憎劇の詳細がだんだんと明らかになっていく様は恐怖刺激として極上。幕切れも鮮やか。
    ただ今回やけに美人に対する描写がくどい。スフィンクスのくだりは何度出てきたか、せめてもう少し言い回しのバリエーションを……あと佐智殺しを偶然に頼り過ぎている感も残念。
    金田一氏の雪山でのお姿は実に面白い。想像するとつい笑ってしまう。

  • 先に映画を観てから本を読んだ奇しいパターンのせいかもしれないけれど、インパクトが若干薄い。

  • “スケキヨ”の強烈なビジュアルでお馴染みの、「犬神家の一族」です。
    凄惨な内容なのに、ページを繰る手が止まらない、さすがの横溝マヂック。
    今回は、一番「怖え・・。」と思っていた人が犯人でした。

    因みに,佐清(すけきよ)さんはイケメンという事でした。

  • かの有名な犬神家
    映画は好きで何十回と見たので話はよくわかってるはずなのにおもしろかったー
    もっと難しい感じに書いてあるのかと思ったら、全然そんなことなかった

  • 犬神家の一族の特集をした番組で、道尾秀介さんが、犬神佐兵衛の臨終が犬神の儀式の見立てになっていると仰っていました。
    犬神の儀式とは、犬を飢餓状態で土に埋めて首だけを出して、餌を見せて首をはねるというものです。犬が佐兵衛翁で、その犬の前にいたのが松子です。その見立てからすると、布団から頭だけを出している佐兵衛は、土に埋められて首だけを出している犬を連想させます。その遺影は犬の頭がい骨になりますね。そして、犬神の力を手に入れた松子が次々と殺人を成功させていくことになります。
    また、橋本麻里さんの仰っていた源氏物語に見立てた光の表現も興味深かったです。
    それを参考にしてこの作品を捉えてみると、犬神の儀式で始まり、犬神の儀式で終わった作品という印象を持ちました。ただ、それぞれの儀式の見立ては正反対の意味になっていると思います。


    佐兵衛翁の臨終を犬神の儀式に見立てると、犬と犬の前にいた人物はどうだったでしょうか。

    犬は飢えていたか?飢えていた。
    犬神佐兵衛は晴世への愛のために最後まで飢えていました。自分が愛した人の血を引く人物に犬神家の財産を相続させようとして、あの遺言書を書きました。

    犬の前にいた人物は、犬神の力を欲するほどに飢えていたか?飢えていた。
    犬神の儀式では、犬が飢えているのはもちろんですが、それほど恐ろしい儀式を行ってまで力を求めるのですから、その人物も何かに飢えていると考えられます。
    松子は、我が子が生きて帰って来たことだけでは満足せずに、佐清に犬神家の全財産を相続させるために殺人まで犯してしまいます。それは佐清にメッキを施そうとするものですね。マスクの下が別人だと気が付かないのも表面的な部分しか見ていないということです。佐清と同じ顔でも、その下は全く別の人間です。
    他の犬神家の人間たちも同様に、その描き方を見てみると何も輝きを放つものがありません。斧・琴・菊の三種の神器と同じく、犬神家の財産というメッキで輝いているように見えますが、そのメッキをはがすと中身は上等なものではありません。

    斧、琴、菊の三種の神器は、野々宮家から犬神家に与えられたものです。何でもない物でも神器にすることが出来ます。それに対して、犬神家は、神器を与えられても財産相続の道具としか見ていなくて、さらにはアリバイのトリックにまで利用してしまいます。

    犬神家の財産よりも母を守ることを選択した助清。実の母を前にしながらも、犬神家の財産を相続するために息子であることを隠した静馬。助清と静馬の二人の決断も対比になっていると思います。

    また、猿蔵や宮川香琴も犬神家の人間たちとは反対の描かれ方をしていると思います。

    三種の神器と対照的なのが珠代と佐清の思い出の品の懐中時計ではないでしょうか。金側の両ぶたの懐中時計は神器と同じように外側の見た目は金色です。時計の中の部品は金ではありませんが、犬神家の三種の神器と違う所は、時計のような精密機械は中を綺麗にしていないと動きません。時計が壊れるといつも佐清が修理していましたし、珠世は時計の修繕を時計屋に出すことはしませんでした。これは珠世と佐清の二人の関係を、懐中時計が動くという精密機械の中身の輝きとして表現しているのではないでしょうか。佐清が偽物であるなら時計が再び動き出すことはありません。また、懐中時計は二人にとっては大切な品物ですが、犬神家の財産の相続とは関係がありません。


    冒頭の場面と対になるように、松子の最期の場面も犬神の儀式の見立てになっていたのではないでしょうか。今度は松子が犬で、犬の前にいた人物が珠世と佐清です。

    犬は飢えていたか?飢えていなかった。
    最後に一目佐清に会えて、珠世が佐清を待っていてくれることを聞いて、それだけで松子は十分でした。

    犬の前にいた人物は、犬神の力を欲するほどに飢えていたか?飢えていなかった。
    珠世は佐清を待ち続けることを誓い、佐清も珠世の思いに応えます。犬神家の財産の相続などは関係なくて、大切な人がいるだけで満たされている温かみのある愛を感じます。愛する人と晴れて夫婦になる。それは犬神佐兵衛が叶えられなかった愛の形でもあります。
    実の母である松子も騙されたのに、珠世はマスクの下が別人であることを見抜いていました。犬神家の財産目当てに本物の佐清以外の人と結婚することも考えませんでした。小夜子の子に財産の半分を分けることにもためらいはありません。佐清も財産を相続するために本物だと名乗り出ることはありませんでした。財閥解体によって例え犬神家の金メッキがなくなっても、二人にとって問題にはならないでしょう。
    犬神の儀式は成りませんでした。

    思いが強くなるほど飢えていく愛。思いが強くなるほど満たされていく愛。対照的な二つの愛が描かれていると思います。
    飢えた愛で始まり、満たされた愛で幕を閉じた物語という印象を持ちました。

    最初の場面が犬神の儀式の見立てだとすると、犬は犬神佐兵衛で、餌が珠世で、犬を埋めて首をはねたのが松子夫人になります。犬の首をはねたという見立てから考えると、犬神佐兵衛の死には松子夫人が関与していることになるのではないかと思うのですが、動機などがちょっとわからないです。

  • 何度も映像化されている物語だけれど、やっぱり活字で読む方が何倍も楽しめる。
    横溝作品の王道をいくような物語で、因習に縛られる人たちが織りなす愛憎劇が怖ろしくも哀しい。
    展開の見事さ、それぞれの個性的なキャラクター、犯人の意外性。
    どれも読み応えがあって本当に面白かった。
    トリックが発覚するきっかけとなるエピソードも興味深かったし、過去の怨念が渦巻くおどろおどろしさもいかにも横溝ワールドでその世界観を堪能できた。
    ただ、横溝さんの物語は犯人像に暗黙のルールがあって、どうしても「この人がきっと犯人だ!!」とわかってしまう。
    もちろん、物語の素晴らしさを損なうほどのものでない。
    結局、名作には古いとか新しいとか関係ないのだなと実感できる物語だ。
    惨殺場面はちょっと刺激が強いけれど、事件の陰湿さを印象付ける大切な場面でもあり、それほど衝撃さはないと思う。

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著者プロフィール

1902 年5 月25 日、兵庫県生まれ。本名・正史(まさし)。
1921 年に「恐ろしき四月馬鹿」でデビュー。大阪薬学専門学
校卒業後は実家で薬剤師として働いていたが、江戸川乱歩の
呼びかけに応じて上京、博文館へ入社して編集者となる。32
年より専業作家となり、一時的な休筆期間はあるものの、晩
年まで旺盛な執筆活動を展開した。48 年、金田一耕助探偵譚
の第一作「本陣殺人事件」(46)で第1 回探偵作家クラブ賞長
編賞を受賞。1981 年12 月28 日、結腸ガンのため国立病院医
療センターで死去。

「2022年 『赤屋敷殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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