リリイ・シュシュのすべて (角川文庫 い 42-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043441051

感想・レビュー・書評

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  • 心が痛くなる一冊。
    決して楽しいとか、爽快とか、そういう言葉では表現できないけど、なんていうか、現代に生きる日本人は読まなくてはいけない本のような気がします。

  • 映画より面白い

  • 雄一は、中学一年の夏休みの後、同級生から突然イジメの標的にされる。彼は、心の痛みをリリイ・シュシュの世界で癒そうとする。そこだけが自分の場所であるかのように。
    現実の世界で閉塞感に押しつぶされそうな日常と圧倒的な暴力に耐え続けながら、実体の見えないネット世界では狂信的なリリイファンとして生きる14歳の少年の、青春のダークサイドをリアルに描き出したネット連載小説。

    物語は、カリスマ的な歌姫リリイ・シュシュのファンサイトの中の掲示板から始まる。
    「エーテル」に包まれた世界。不思議な物質エーテルとは、リリイが頻繁に使う言葉だ。エーテルとは何ぞや?などと考えてはいけない。ただ感じればいいんだ。それがわかる人だけが、その世界を理解できる感性を持った人だけが、リリイを理解することができ、リリイとシンクロ(一体化)することができる。にも拘らず、リリイ本人は一切登場しないのが不思議。

    リリイに反発したファンの自殺事件、渋谷キャトルライブで起こった刺殺事件。絡まる謎。解き明かされる真実。ネットに潜む悪意。偽の名前を使い分ける人間。匿名性の怖さを感じる。

    雄一が傷ついた心を、リリイの世界で癒そうとする気持ちは痛いほどわかる。読みすすめるうちに、私も感化され、リリイ信者になってしまいそうだった。彼のやったことは許されないことだけれど、彼の気持ちを考えると、とても辛かった。

  • 岩井俊二という名前を覚えたのはZARDの「不思議ね…」という曲のPVを撮った映像作家としてだった。作家ではなく映像作家。他の作品も映画の名前として聞いたことがある程度だった。氏の物語作品に触れるのはこの本が初めてで驚かされることが多かった。2000年に実験的なネット小説として書かれた作品らしく文章はすべてネット掲示板の書き込みの形式で横書きになっていた。いまのケータイ小説と一緒にして良いのかわからないけれど中学生の暗い部分とネット、カリスマシンガーと盲信的ファン(カルト)というテーマの不安定さは刺激的だ。感化されやすい年頃に読むよりは高校生やそれ以上年齢の視点で捉えた方が考えが広がる面白い内容だと思った。いま読んで正解だったと感じるのは珍しい。

  • 映画を観てから小説を読んだ
    リリィ・シュシュの歌詞と、ファンサイトのBBSへのファンによる交流と告白の一連の書き込みで構成されていて
    カリスマ的な魅力を持つリリィ・シュシュの存在感と、彼女に心酔するファン心理。そして、リリィの「エーテル」をリアルに吸い込んだ思春期の少年の告白のストーリーが展開する

    映画でも思ったけれど
    ネットの中で交流した経験がないとわからない作品だと思う

    映画は視覚と聴覚で脳を刺激したカンジで、小説は脳の中の記憶と想像を刺激されたカンジ
    あまりの非条理な現実にリアルを感じられず、リリィとネットの世界に逃げ込んでしまう少年たち
    自分の中学生の記憶と重ねて 怖い 悲しい 痛い

  • 携帯小説のような横書きに最初は抵抗がありましたが、BBSに集まる人達がリリイ・シュシュを通して抱く自己陶酔が全面に押し出されていて、音楽の持つカルト性の強さにぞっとしました。
    後半から始まる独白は陰鬱。その不幸にリリイや彼女の音楽を巻き込むこと自体が勝手な話で、他人にそこまでさせてしまうリリイの才能にはちょっと惹かれます。
    エーテルという単語のチョイスが素敵でした。聞いているだけで息が詰まりそうな感じがとても好き。

  • 映画を観てから読みました。
    一部、映画と内容が違うところあり。
    読みやすくてサクサク読めた。
    映画の方が私的に好きですが。

  • ネットの掲示板での会話がそのまま物語となっている。

    リリィ・シュシュというアーティストに魅了された、掲示板の住人たち。

    リリィ・シュシュのライブで一人殺されたが
    その犯人をめぐる憶測と、犯人の告白。

    いじめ、援助交際などの問題も取り上げられている。

  • 実在するサイト。http://www.lily-chou-chou.jp/holic/index.htm
    実在する歌姫。http://www.youtube.com/watch?v=LMhSwxb-1kg
    異常なまでにリリイを神格化するファン達。
    小説を飛び出していて、あまりにリアルで、それだけに衝撃が大きい。
    決して万人受けする内容ではない。読み終わった後、虚しいような、不安な気持ちになる。そんな本。

  • とにかく重苦しい空気が流れていました。特に後半。

著者プロフィール

映像作家。1963年1月24日仙台市生まれ。横浜国立大学卒業。主な作品に映画『Love Letter』『スワロウテイル』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『ヴァンパイア』『花とアリス殺人事件』『リップヴァンウィンクルの花嫁』など。ドキュメンタリーに『市川崑物語』『少年たちは花火を横から見たかった』など。「花は咲く」の作詞も手がける。

「2017年 『少年たちは花火を横から見たかった 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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