ブードゥー・チャイルド (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.32
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本棚登録 : 663
感想 : 74
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043595013

作品紹介・あらすじ

ぼくには前世があるのです。チャーリー、それがぼくの名前でした。ある雨の晩、おなかをえぐられて、ぼくは死にました。――現世に蘇る前世でいちばん残酷な日。戦慄の殺人劇の謎を描く新本格ミステリ大作!

感想・レビュー・書評

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  • えぇ..なにこれ...。めっちゃ面白い...。
    久々に貪欲に読書時間を確保にかかる心地好く慌ただしい日々を送れました。

    「今僕は第二の人生を送っています。つまり僕には前世があるのです。
    ある雨の晩にバロン・サムデイがやってきて、おなかをえぐられて、そうして僕は死にました。
    前世、僕は黒人でした。チャーリー....それが僕の名前でした」
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    『ブードゥー』と聞くと脳内が中二で止まっている私はあのハイチ宗教を連想して、転生モノ??SF??悪魔の生贄??スプラッタホラー??と様々な妄そ..想像を生産しては片側の口角から汁を垂れ流してしまう。
    私の知る限りでは、
    <Voodoo> ブードゥー
    このひとつの言葉は様々な意味を持っており、単語としてだと『お守り、呪物』等 魔力的な意味合いが強い。
    時にはこの単語のみ(ismが足される場合も多いが)で「ブードゥー教」を指す場合もある。
    更に調べてみると、動詞として
    「呪物によって、あるいはあたかもそれによるかのように、幻惑する」といった意味合いもあるらしい。

    「ブードゥーチャイルド」とは直訳すればとどのつまり、呪物の子。他にも色々と当て嵌めることは可能だが、本書を読み終えた今ではこの選択が最もしっくりくる様に感じる。
    だが「呪物の子」として本書を語ると、「いや、そうなんだけど、そうじゃなくて、あぁ〜もうっ!」といったジレンマが発生する。
    だがうまく説明出来ないので、
    ジレンマが発生する様な『それだけじゃない』が醍醐味なんだと、ずるい着地をする私をお許し下さい..ひぃん。
    ーーーーーーーーーーーーーーー

    前世がチャーリーだと信じて疑わない本作の主人公、日下部晃士。彼は前世チャーリーの時に母を目の前で殺され、自身も殺された。
    そして第二の人生である日下部晃士も現世にて悲惨な事件に遭う。作品説明にもある戦慄の殺人劇の幕開けだ。晃士からすれば悪夢 第二幕である。いたたまれない。
    さらに決定的な出来事として前世にてサムデイがチャーリー母の元に残した悪魔のサインが現世の殺人現場にも残っていた。
    「前世でも同じような事が〜」と警察に言えるわけも無く、母違いの姉と共に自身の前世について独自に調べ始める。晃士は前世と現世の「母殺し」、バロン・サムデイという悪魔に辿り着けるのだろうか。
    ーーーーーーーーーーーーー

    真相に気付いた方は結構多いみたいで、それ込みでも評価が高めなのは流石の極み。
    私はと言うと、内容が気になりすぎて食い気味で前のめりで猫背デビューする勢いで貪っていたので安定の真正面からのハナヂブー。ᐠ( ᐢ ཫ ᐢ )ᐟ
    歌野晶午、前期の傑作
    とレビューで拝見したが、誠その通りなのだろう。本当に面白かった。

    さて、口を滑らす前にレビューを終えたい気持ちと話したい欲望がストリートファイトしている。脳みそVS指先である。



    ひとつ言えるのは
    本書はSFではない。
    〜〜Win 脳みそ〜〜

  • 面白かった。出版当時の1998年を知っている人は、チャットでオフ会とか、とりあえずCGIで掲示板とか、懐かしさで二度美味しい感じなのかな。なんというか、ネットで出てくる情報が中途半端だよね。

  • これは素晴らしい。綺麗に纏まっています。そして『春から夏、やがて冬』のような切なさもある。これぞ歌野晶午ですかね、、、
    やっぱりイヤミスも良いけどこうやってしっかり最後まで拾ってくれると、読んでる側としては気持ちが良い。単なるミステリーだけでなく、人間ドラマが中心なので飽きない。いい作品でした。

  • 歌野晶午、前期の傑作。
    雰囲気作りが丁寧なので、トリックの意外性がそこまででもないのに不思議と大きく見える。
    本格ミステリにおける舞台設定は、やはり「それでしかない」と思わせるのが第一条件だと思う。
    このトリック(真相)にはこの舞台が最適だと思わせてくれた。
    探偵役も独特のキャラクターで楽しい。
    発刊当時に読んでいたら衝撃は倍以上だったろう。

    ①魅力的な謎……6/6
    ②精緻なサスペンス……4/6
    ③鮮明な結末……5/6
    ④印象的な文章表現……5/6
    ⑤先鋭的なテーマ性……5/6(当時においては、という注付きで)
    計25/30
    星4

  • 僕には前世があり、前世ではチャーリーという名の黒人でバロンサムデイという悪魔にお腹を抉られて殺された———。
    これほど読み手をワクワクさせるあらすじが他にあるのか?
    前世の記憶についてもしっかり回収するところが良かった。また、義母を亡くした失意のなかで自身の出生の秘密と実母の死の真相に触れ、思春期真っ只中で1秒ごとに成長していく少年の情緒の変化も感じられた。ジュリアンや舞も必要不可欠。
    大好きな作品。

  • うんうん隠れた名作って感じ。
    前世の記憶を持つ少年という魅力的な謎に始まり、中学生という微妙な年齢の二人がハードボイルドさながらに捜査、推理を進めていき、自らの変わった出生を語る天才少年に出会い...

    中弛みせず、まさにノンストップ。

    代理出産というのが本書の主を担う真相となっているが、個人的には 
    ホリー・キンデス→堀井キンです という聞き間違いや、晃士という文字を悪魔と十字架に見間違えてしまうというトリックがとても面白かった。
    しかもトリックを知ってから目次の裏の絵を見ると「晃士」に見えてくるのが不思議...

    ネットを使って論議をしたりネットで知り合った人と実際に会ったり、という今作の中で使われていることが『密室殺人ゲーム』に繋がったんだろうなと感じる。

  • 3

  • 月並みな感想だけど面白かった!

    日下部晃士は前世の記憶を持っていた。
    自分は黒人のチャーリーと言う名前で、悪魔バロン・サムデイに母親を殺された。

    そして現世でも事件が起こってしまう。

    途中で、悪魔の紋章の秘密に気づき、晃士の前世や出生の謎にも気づいたので、あっと驚くような展開はなかったけれど、辻占ジュリアンの登場が凄く良かった!

    ジュリアンは実はチャーリーの弟だったとか、そんな展開があったら良かったなぁ。ジュリアンがもっと活躍する話があってもいい。と言うか望んでいます。

  • 前世の記憶に悩まされる少年。そしてホラーチックなタイトル。ホラーかな、SF要素もあるのかな、と思わせておいてミステリーで着地。
    さくさく読めて面白かった。

  • これはSFなんだろうか、いやまさか、ちょっとおカタめ?
    と思っていたけど、そんなことなかった。

    焦点は前世を持つという主人公の出生に当てられて進んでいくのだけど、後半になるにつれ、こいつの人生はなんて数奇なんだと。主人公である晃士も姉の麻衣も、理解が良すぎる…。

    天才少年探偵とやらが出てくるのを今か今かと、うずうずしながら読んでいました。ジュリアンと晃士&麻衣トリオの探偵ものとか、あったら読んでみたいくらい。

    出生の真相は、代理母云々のだいたいの知識があれば、たぶんすぐピンとくると思う。どんでん返しこそなかったけれど、貼られた伏線が綺麗に回収されてすっきりでした。
    真相が真相だっただけに、陰鬱に終わってしまうのだろうかと思ってたけど、むしろ清々しいくらい明るく終わってて笑いました。おもしろかった!

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著者プロフィール

1988年『長い家の殺人』でデビュー。2004年『葉桜の季節に君を想うということ』で第57回推理作家協会賞、第4回本格ミステリ大賞をダブル受賞。2010年『密室殺人ゲーム2.0』で第10回本格ミステリ大賞をふたたび受賞。

「2022年 『首切り島の一夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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