- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043646029
感想・レビュー・書評
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表紙が怖い。
内容もどす黒い。
高度経済成長期の日本。場所は中国地方か。村ぐるみの差別がまだ平然とある田舎。兄は放火犯で少年院行き。父は蒸発。母は博打三昧。主人公は中学校でいじめられる。
不幸満載の主人公。中学生にして、孤立・孤高・孤独の違いについて実体験する。孤立している訳ではなく、「ひとり」で孤高に生きていくと決心しても、どこかで誰かと繋がっていたいと孤独を感じる。人間のプライドと弱さという奴か。
万に一つもハッピーエンドを期待できない展開だけあって、せめて一つでも心温まる話が欲しい。重い話だが、引き込まれる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトル通り主人公の中学三年までを疾走の如く駆け抜けた短い人生の話。主人公を「おまえ」と表記しており始めは感情移入しにくかったが慣れれば物語にグイグイ引き込まれる。兄の犯罪、いじめ、家族の崩壊、暴力、犯罪と崖を真っ逆さまに落ちる人生に救いはあったのか。何でもいいので誰かと繋がっていたい、二人じゃなく、ひとりとひとりでもいいから。アカネのこ、エリの開放が生きた証。全く救いがなかったわけでは無かったのかと思う。久々にあと引く読後感作品!
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心優しく、真面目なシュウジ。
ある日、
心の壊れた兄のシュウイチが赤犬(放火犯の蔑称)となって捕まることをキッカケにみるみる家庭が壊れてゆく。
父親も母親も、親というだけで強くはなれない人間で、シュウジだけが現実にひとり 取り残される。
東野圭吾の『手紙』を思い出す。
家族が犯罪者だから嫌うのは差別だというのは誤解で、人はその血を本能的に、避けるのだと。
あぁ、いじめられて、誰もかれもに無視をされ、居ないものにされてから自ら命を絶つ人は
本当は誰かの心の中で生き続けたいのかも知れない。
そうすることでしか存在出来なかったのかもない。
自殺を思いとどまったのは、シュウジがふとあぁ春なんだ、と気が付いたから。
そのシーンがとても印象的でした。
忌み嫌われ、何かを失い、ひとりぼっちのシュウジは穴ぼこのような目でアカネを探し、人を殺し、エリを求める。
事件に巻き込まれながらシュウジは死ぬ。死んだときにホッとしたんだ。
もう、
逃げなくて良いんだと思った。
上下巻を読み終わってから1番はじめのページに戻る。
シュウジは兄のシュウイチを慕う、
心の優しい少年だったんだ。 -
機会があって、初めて重松清の本を読んだ。前から最初だけめくってはやめ、を繰り返していた作家。
この本は中上健次?と思うところもあり、でもどこか劇画タッチで当事者感が無く(これは当たり前か)、視点が泳いで入り込めないまま読んだ。
これは完璧に主観だけど、隣に誰かがいて、ツッコミいれられながら話が進行していく様な感じがある。一個一個感じることよりも先に、起こると決められてる事件が立て続けにやってきて、「あーあ、まただな。」というような。作家自体が傍観者的なのか、構造のせいなのか。でも矛盾するようだけど面白くて最後まで一気に読めた。
大人になるに連れて何度も死んでは甦るような経験を繰り返し、穢れを身につけていくけど、この本ほど凝縮したものを身に受ける人ってなかなか居ない。けど、ここまで穢れても受け止めて、誰かがそばにいてつながることで、魂が生きるんだなというお話。絶対に無理!という事も高い所からみると乗り越えていける。
あと不誠実さとか理不尽さを受けて、それでも誠実にいると酷い目にあう村社会の悪い構造も描いてたのかな。
他の作品のオススメを頂いたので、読んでみようと思う。 -
ここまで感情が揺さぶられる作品に出会ったことは今までない。出会う人全員に勧められるような本では決して無いが、私は初めて徹夜して本を読んだ。人生で一番夢中になって読んだ本は『疾走』だ。この本以上に心を揺さぶられた経験はまだない。
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陰鬱としていて、救いがないと思わせる。だからこそ続きが気になる
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感想は下巻で
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救いのない話だった
短い生涯を走り抜けた少年
最期は大切な思い出とその人を守るために死んでいってしまった -
爽快青春思春期物語