ユージニア (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 9105
感想 : 796
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043710027

感想・レビュー・書評

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  • 夏のくらくらする蜃気楼みたいな本だった。
    ゆらゆらして掴めそうで掴めない真実。
    真実を知りたくて読み進めているのに、わからなくても神秘的でいいな、という気もしてくる。
    人の揺蕩う時間をゆったりとゆったりと噛み締めていく新しい感覚のミステリーだった。

    痛快な推理や動かぬ証拠とかはない。
    帯には「全てを疑え!」と書いてあった。
    わたしはそんな気にはならなかった。
    むしろ「信じるよ」という穏やかな気持ちで読了した。

    私は文庫で読んだけれど、巻末に装丁デザインの話があって、素敵なこだわりだった。
    単行本でもう一度同じ話を読んでみたくなった。

  • 旧家で祝いの席の最中に発生した大量毒殺事件、それを聞き語り形式を主としてその犯人と真相はなんだったのかが少しずつ明らかにされる
    という構成なのだが、聞き語り、3人称、手紙形式、新聞記事の抜き書き等々描写方式がさまざまに変わるのと、聞き語りで断片的に明らかになる事実がなかなか収束していかないのとで、薄靄を通して見るような、昔の記憶を見るような、不確かさが漂っている
    読むと不安になるような、がコンセプトだったそうで、なるほどそうか、いやしかしながらただの座りの悪い話なのでは
    すっきりとは終わらず、伏線も回収されないので、はっきりさせたい派には不向き

  • 引き込まれどんどん読み進めるのだけど、読了してもハッキリした答えは書いてないのでモヤモヤしてしまう。謎がとても多く、読者が考える力を試されているような感じ。

    結局事件は緋紗子と精神を病んだ青年が意図せず何か噛み合ってしまった結果の、2人の共犯ということになるのかな?
    緋紗子の母とキミさんも何かを知っていそうな感じ…

    何回か読み込んで自分なりに考えてみるのがいいと思うけど、400頁超なのでまたいつか。

  • 2022.5.16読了
    北陸にあるK市の、とある旧家で一家のみならずその家を訪れていた近所の住人達までもを巻き込んだ毒殺事件が起こる。
    犯人は一家との繋がりがまったく見えてこない人物だった。更に自殺していることから、動機も不明。ただ、現場で押収された指紋が一致することだけが、彼を犯人と位置付けていた。
    彼はなぜ、犯行に至ったのか?それがわからないまま、事件は幕引きされた。
    それから10年以上が経ち、事件について考察された本が出版される。その著者は、当時その家を訪れていながら難を逃れた人物だった。
    彼女が今になって事件について調べようと思ったのはなぜか?
    当時事件の周辺にいた人々のルポルタージュや、記録・記憶の断片が語られることによって真相が描き出されていく。

    読書を続けていると、事件の真相が作品の要点ではないと感じることが多く、この作品もその一つだと思った。

  • 私はどうもこの作家さんとの相性が良くないようだ(^_^;)
    何を読んでも冗長だと感じてしまう。。。
    この部分は不要なのでは??と思ってしまい、読むことに全力を注げなくなっている。

    何となく別のことを考えながらのながら読みになってしまい、大事な箇所を見落としてしまう。

    この物語は全力で見落としなく読まないと、真相にはたどり着けないと思う。

    白い百日紅、青い部屋、忘れられた祝祭

    推理小説好みの為、伏線には注意して読んでいるが、この手の話はどうも少し苦手だな(^_^;)

  • テレビでは次から次へと新しい事件が報道されていて、ついこの間起きていた事件なんて簡単に世間には忘れられてしまう。でもその事件に関わった人は、私達が想像できないほどの苦しさや憤りをずっと感じているんだろうな、、、

  • 掴みどころのないインタビューから始まり、徐々に事実や古い記憶が掘り起こされていく。それぞれの心理が垣間見えて面白かったけど、スッキリはしない!


  • 人が人をどう思ってるか。どう感じているか。どう思われたいか。どう思いたいか。
    人って怖い。

  • 夏の暑さとじっとりとした、怪談を読んでいるような不気味さが漂う作品。

    地方の有力者の家で起こった大量毒殺事件。実行犯を唆した真の犯人を、インタビュー形式で浮かび上がらせる。真犯人を追い詰めるというより、事件のきっかけになった神秘的な少女を取り巻く人々の話。後年現場の発見者である満喜子により当時のことをインタビューして書かれた本が出版される。

    皆が「特別な人」としてみていた彼女を満喜子は自分だけが理解していると思っている。他の崇拝する人たちとは違うと思っている。告発する気はなく、自分だけが知っていると彼女に気付いてもらいたくて本を出版する。それは満喜子自身が誰よりも彼女が囚われていたということなのだろう。

    彼女はただ思っただけだ。誰に何をしろと言ったわけでもない。周りが彼女の言うことを自分なりに解釈して行動した結果の事件のように思える。とすると彼女は殺人教唆としての罪に問われるのだろうか?
    目が見えないからこそ神秘性が増していたらしい彼女は、目が見えるようになったら普通の中年女性になっていた。そのことを知ったら満喜子はどんな思いをしたのだろうか。

    周りの人からの証言による真犯人の少女は神秘的で不気味で美しかった。が、読み進めるうちにサイコパス度が減ってしまい、彼女がどうしたかったのかがいまいちよく分からない。
    似たような雰囲気だった兄は彼女の異常さに気付かなかったのだろうか。
    人はそれぞれ他人に勝手なイメージを持ち接するという印象が残った。

    デザイナー・作家・フォントディレクター・写真家の制作日記のような巻末のユージニアノートが面白かった。

  • 恩田陸さんワールド全開の本作。

    物語の世界観に最初からグイグイと引き込まれた。
    不気味な蜃気楼のような雰囲気を常に漂わせている不思議な物語だった。

    様々な登場人物の視点で描かれているので頭が混乱しやすかった。なので一気読みがオススメ。

    その雰囲気は最後まで変わりなく、
    限りなく黒に近いグレーといった結末で、
    なぜそうしなければならなかったのだろう?
    と疑問が残りモヤモヤした気持ちがあったが、
    そんな気持ちさえも楽しむことができた。

著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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