贋作『坊っちゃん』殺人事件 (角川文庫 や 39-5)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年11月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784043829057
作品紹介・あらすじ
四国から東京に戻った「おれ」-坊っちゃんは元同僚の山嵐と再会し、教頭の赤シャツが自殺したことを知らされる。無人島"ターナー島"で首を吊ったらしいのだが、山嵐は「誰かに殺されたのでは」と疑っている。坊っちゃんはその死の真相を探るため、四国を再訪する。調査を始めたふたりを待つ驚愕の事実とは?『坊っちゃん』の裏に浮かび上がるもう一つの物語。名品パスティーシュにして傑作ミステリー。
感想・レビュー・書評
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有名どころの「坊ちゃん」を題材にしてるけど、読んだかどうかもうる覚え…
なので、単にミステリーとして読んだ方が思い出しながら読むより楽しい。
時代は、赤(社会主義)と自由民権の時代とかはな変わらんけど、今の人に興味あるかは不明。
色々、主義主張で世の中を変えようとする運動家より、坊ちゃんの人格、「感じることが一つ一倍強く、情に厚い。熱心で義侠に富み、大胆で、勇気があって、直情で、一往邁進、かつ不退転。成敗利潤は豪も見ないで、火中の中へも飛び込む」
って性格が優っていたって事か…
理屈屋より、ええわな。
殺人の真相は、徐々に分かって来るけど、結局、坊ちゃんに掻き回された感じ。
江戸っ子!ええやん!
(関西もええよ!)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
夏目漱石『坊っちゃん』の3年後を描いたミステリー。原作の内容を忠実に回収しつつ、ミステリー部分は時代背景を踏まえた真相とまさかの結末。
うっかり原作うろ覚え状態で本書を読んでしまったのですが、さほど問題はありません。でも原作を先に読んだ方が数段楽しめるかと思います。
パスティーシュ(文体模写)の作品は読んだことが無かったので新感覚。 -
こういう作品はたのしいね。『坊っちゃん』の後日譚をミステリー仕立てで展開する。舞台とキャストは原作通りになっているので世界観は共通。でも視座をずらすことで新しい作品になるんだ。「もし主人公が○○だったとしたら」というよくある技術だけど、音楽でいえば「○○の主題による変奏曲」ってところかな。
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原作の番外編のようで、まったく違う物語でもある。まさに本歌取り。
私は原作の「坊っちゃん」自体の細部がうろ覚えだったけど、おそらくミステリでもなんでもない原作をよくこう仕立て上げたなあ。
この本は原作を読んでいてもいなくても、といわれるものの、私は先に読んでおくのをお勧めします。原作の事柄がでてきたときに「あ、そうだったっけ?」ってなるから。
「坊っちゃん」の模倣作、というよりも割り切って「坊っちゃん2」、というスタンスで取り掛かったほうが楽しめます。きっと。 -
「吾輩は猫である殺人事件」(うろ覚えのタイトル)は、訳が分からない世界に連れていかれ、不気味だった。
本作も少し似たようなところがあり、軽快な前半から理屈っぽい後半に入ると、なんか違うなと感じた。娯楽に徹して欲しい。
とはいえ、ネタ元の「坊ちゃん」を読み返したくなった。 -
漱石の''坊ちゃん''の後日譚で教頭に正義の制裁を加えた後、東京で生活をして居た坊ちゃんと山嵐は、赤シャツ(教頭)が首吊り自殺で亡くなって居た事に違和感を覚え三年ぶりに松山を訪れ事件の真相を探る。
''坊ちゃん''の物語は、当時騒がれて居た赤化と赤狩りが背景に有った、かの様に思えてくる程に良く出来たミステリー小説だと思います。実際には赤シャツに鉄拳制裁を加えた5.6年後に幸徳秋水事件で天皇を爆殺しょうと企てた二十数名が証拠不十分のまま死刑処分されている。
本作中には底本''坊ちゃん''からの引用が散りばめられていてなかなかに作者の巧妙な底本との関連付けが周到で恐れ入る。 -
夏目漱石の「坊ちゃん」をベースに後日談を描いた物語。
坊ちゃんが四国を去って3年。
久しぶりにあった山嵐から赤シャツが自殺をしたと聞かされる。
しかも自殺をしたのは、坊ちゃんたちが四国を去ったその日だというのだ。
赤シャツとはいろいろな因縁があり、そもそも教員を辞め四国を去る原因になったのも赤シャツだった。
だが、山嵐は赤シャツの死は他殺だという。
真相を探るべく、二人は四国へと向かう。
せっかくなので、本家の「坊ちゃん」を読んでからこの物語を開いた。
すると不思議な世界が待っていた。
本家「坊ちゃん」で何気なく語られていた場面が、この贋作では思いがけない意図が裏に隠されていたことになる。
思わず納得してしまうような解釈も、事件の真相も、坊ちゃんが四国で過ごした日々も、すべてが違ってみえてくるから不思議だ。
しかも、本家「坊ちゃん」のキャラクターそのままに動き、会話をしている。
いかにもこの人物なら言いそうだ、やりそうだ、という設定が少しも崩れていないところが特にすごい。
二宮くんがドラマで演じると知って、あらためて読み直してみたのだけれど、それがこの物語に出会うきっかけにもなった。
こんな出会いもまた楽しい。 -
巧みだ。
夏目漱石の『坊っちゃん』の3年後を柳広司が勝手に描いた本作。
パスティーシュ(文体模写)と言うらしいが、元ネタの『坊っちゃん』の登場人物や設定、物語だけでなく、夏目漱石の文体まで似せられていて、本物の続編かのように読めた。
と、同時にミステリーとしても面白かった。
なぜか『坊っちゃん』で引かれた伏線を回収していくようなストーリー展開。
『坊っちゃん』で起きた出来事が「実はそういう意味だったのか」と附に落ちていく(本当は違うはずだが)
パスティーシュというものを初めた読んだが、なんとも巧みだな、と。 -
やはりババァ萌え、