村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)

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  • 角川書店
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  • / ISBN・EAN: 9784043853014

感想・レビュー・書評

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  • 異国の風、匂い、喧騒。
    祈り、神、信仰。
    そういう本来目には見えないはずのものが、五感を通じて伝わってきます。ちゃんと「ここ」に「ある」のですよと、私に語りかけます。
    行ったことのない国、時代なのに、どうしてこんなに懐かしいような気持ちになるのだろう。
    ああ。そうなのか。
    「もう既に最初から繋がっているのだ」

    忘れないでいてくれたまえ
    そう言った、きみの気持ちが今ならわかる気がします。

    もう二度と戻ることの出来ない土耳古での青春の日々。大切な友とのかけがえのない時間。
    時は無情で。あれほど記憶に深く刻み込んだはずの思い出も、まるで夢の中の出来事だったように輪郭がぼやけていきます。
    だけど、遥かな海を渡り、彼のもとにたどり着いた鸚鵡。歴史の荒波を乗り越えた籠の中の鳥。
    ─友よ。
    その甲高い叫びが、彼に再び輪郭を与えたのでしょう。土耳古での日々を、異国の友人たちを。
    ちゃんと彼の中に「ある」ことを。

    • 地球っこさん
      mofuさん、こちらこそいつも「いいね」ありがとうございます(*^^*)
      そして、コメントありがとうございます!
      最後のシーン、私も泣き...
      mofuさん、こちらこそいつも「いいね」ありがとうございます(*^^*)
      そして、コメントありがとうございます!
      最後のシーン、私も泣きました。
      このような結末を迎えるとは、全く想像していませんでした。
      思い出すたびに、胸が締め付けられる……
      そんな心に残る物語となりました。
      2019/10/12
    • さてさてさん
      地球っこさん、はじめまして
      いつもありがとうございます。

      地球っこさんが書かれていらっしゃるとおり、私も『異国の風、匂い、喧騒』をとても感...
      地球っこさん、はじめまして
      いつもありがとうございます。

      地球っこさんが書かれていらっしゃるとおり、私も『異国の風、匂い、喧騒』をとても感じた作品でした。100年も前の異国の地がどう見えるのか、我々以上に驚きに満ち溢れた日々だったのだと思います。村田のかけがえのない時間がとてもよく伝わってきました。まさかの「家守綺譚」への繋がり含めとてもよく出来たお話、地球っこさん書かれている通り、心に残るお話でした。

      今後ともよろしくお願いします。
      2020/05/20
    • 地球っこさん
      さてさてさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます。

      『村田エフェンディ滞土録 』をはじめ、
      『家守綺譚』『冬虫夏草...
      さてさてさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます。

      『村田エフェンディ滞土録 』をはじめ、
      『家守綺譚』『冬虫夏草』とても大好きな物語です。
      どのお話も何か懐かしいものを感じます。
      目には見えなくても「ここ」に「ある」もの。大切にしていきたいです。

      さてさてさんのレビュー、いつも楽しみにしています。
      毎日レビューを書かれているんですね。
      とても驚きです。すごいですね(*^^*)
      こちらこそよろしくお願いします。
      ありがとうございました!
      2020/05/20
  • 梨木香歩 著

    以前、読んだ 梨木香歩さんの「家守綺譚」が、あまりに素晴らしく気に入った本だったので、その作品の中に登場する人物にさえ、愛おしさを感じてしまう(笑)

    だから、「家守綺譚」に登場した綿貫の友人、土耳古に行った考古学者の村田の話だと
    勝手に親近感を持って、そこに繋がる話のようにワクワクしながら読みました。

    「村田エフェンディ滞土録」タイトルにも惹かれて 土耳古という異国の地で、色んな異国の友人に巡り合い 自分の生きている位置や、それぞれに違った国の歴史を背負う人々の軌跡の中に息づく気質を感じながら、交流してゆく。 
    ディクソン夫人、ムハンマド、ディミィトリス、オットー…個性的な人々と交わりながら、村田の土耳古での滞土録を描く。
    個人的にディミィトリスは知的でクールな印象が好きだな(笑)

    何だか、遠い地に降り立ったような不思議な感覚なのに、妙にしっくりくるのだ。
    きっと、それぞれの個性の中で、ぶつかり合うものがあっても…お互いを認め合ってることがクールで、相手を気遣う思慮深いところが、とても、心地よく感じられた。

    それに…そっか、綿貫に似通った感覚を持つ村田自身が 綿貫同様、淡々としているが、むやみに決めつけた態度でなく、自然に物事を受け入れ、自分の価値観と相手の価値観を照らし合わすという二人の人間性に、より魅了されてしまうのだと思う。

    日本に戻って、綿貫の家に(元々は高堂の家)に下宿を決めて帰ってくる 綿貫に会う前に、同じく旧友の高堂と顔合わせするのだが、綿貫と同じように懐かしい思いの方が勝っており、躊躇なく自然に語り合っているところには、本当に笑えた(^^)

    やはり、綿貫と村田の気質は似ており…驚くが、受け入れてしまうという二人の思慮深き人間性に、和んでしまった。

    日本に帰国した村田に綿貫は云う

    「おまえは向こうで最先端の方法論のような
     ものを身につけてきたかも知れないが、
     歴史というのは物に籠る気配や思いの集積
     なのだよ、結局のところ。」
    ーいや、俺はそのことに異を唱えるつもり
                なぞ全くないさ。

    お互いの心持ちを、すぐに理解できる友人である関係性が、ストンとこちらの心に落ちる

    私の心に落ちた言葉は、
    勿論、こればかりではない
    常に含蓄ある言葉を村田に発するディミィトリスもまた、、
    ーテレンティウスという古代羅馬の劇作家に
     出てくる言葉、セネカがこれを引用して
     こう言っている。
    「我々は、自然の命ずる声に従って、助けの
     必要な者に手を差し出そうではないか。
     この一句を常に心に刻み、
          声にだそうではないか。
     『私は人間である。およそ人間に関わる  
      ことで私に無縁なことは一つもない』」

    この言葉が、村田同様…心におちたことは言うまでもない そして忘れずに心に留めおきたい。

    私達の生きる世界は進化し
    日々、変化し続けている、あまりの進歩の速さに戸惑いながらも、追いついていこうとしてるのか?ただたんに、静観しているだけのような気もする
    はたまた、進歩し続けることが、スキルアップしているように感じ、錯覚してるだけで、
    実際には、何も変わってないのかもしれない
    と、ハタッと立ち止まってしまう感覚に襲われる。
    梨木香歩さんの作品を読んでいると、その根本的な切実さを改めて、胸に刻む思いがする
    歴史は、ただの過ぎ去りし思い出ではない。

    今の、自分たちの人生の真実に立ち返り、それを、改めて見極めようとする物語だと思う

    ディクソン夫人が親愛なるムラタに宛てた手紙には、涙が溢れ、泣けてしまった。
    そして、ムラタのもとに、はるばる異国から届けられた鸚鵡
    ラテン語の「ディスケ.ガウデーレ」とともに…

       “楽しむことを学べ。”
    ー友よ。

    我にかえったように、ハッとした!
    生きることは、辛いことばかりじゃない
    楽しむことを学ぼう 自分の魂の声を聞き逃さないように…頑張ろうと小さく拳を握りしめた。

    • kurumicookiesさん
      hiromidaさん、

      家盛奇譚の異国版的な要素で、最後に伏線として描写させているところがワクワクですよー。コメントを拝見して、思わず「そ...
      hiromidaさん、

      家盛奇譚の異国版的な要素で、最後に伏線として描写させているところがワクワクですよー。コメントを拝見して、思わず「そうそう」とか頷きました。
      私は表紙の絵にら惹かれ文庫で読んだのですが、途中の挿絵も可愛くて、ついつい読書雑記帳(笑)に、その絵を真似て書いていました 笑

      でも、戦争の話しが絡むので、最後の方はちょっと胸が苦しくなりました。

      家盛奇譚の続編、「冬虫夏草」も本棚登録ができていないのですが、面白かったです!
      2021/02/22
    • hiromida2さん
      Kurumicookies さん こんにちは!
      コメントありがとうございます♪
      同じように、ワクワクして読まれたこと、嬉しく思います。Kur...
      Kurumicookies さん こんにちは!
      コメントありがとうございます♪
      同じように、ワクワクして読まれたこと、嬉しく思います。Kurumicookies さんのレビューに詳しく丁寧な文に感激(^。^)読後にまた読ませもらえたら、より一層深く味わえます。
      絵も水墨画のような素敵な挿絵でしたよね(表紙もいい!) 美術好きなKurumicookiesさん 流石です(^.^)絵を真似て読書雑記帳に描くなんて♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪
      戦争で命をおとす描写は、あまりに悲しいけど、どの時代に於いても、何処であっても、戦争を風刺する物語として、心に留めておきたいですね。
      「冬虫夏草」も読まれたのですね 何だか嬉しい(^.^)
      心が穏やかに緩和される物語でしたね。
      2021/02/22
    • 本ぶらさん
      「裏庭」は、確か梨木香歩ですよね。
      それだけ読んだことがあります。
      「家守綺譚」は文庫で出た時、読もう読もうと思って、まだ手が出てない本...
      「裏庭」は、確か梨木香歩ですよね。
      それだけ読んだことがあります。
      「家守綺譚」は文庫で出た時、読もう読もうと思って、まだ手が出てない本ですね。
      「歴史というのは物に籠る気配や思いの集積
       なのだよ」
      「およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない」
      がちょっと引っかかったので、読んでみようと思いました。

      >実際には、何も変わってないのかもしれない
      昔、「YOU」って番組が教育テレビ(今のEテレ)でやっていて。その100回記念の回(だったかな?)の再放送をこの間やっていたのを見たんですけど。
      ちなみに、それって、1984年の6月に放送したものらしいんですよ。
      でも、そこで語られていることが、「今(当時)は流行らしい流行がなくなって、個人個人が発信するようになった」等々、現在とかぶることが多くって。
      ケータイだ、PCだ、ネットだ、スマホだ、SNSだと世の中は無茶苦茶変わっているんだけど。でも、人はそんなに変わってない、というか、そうそう変わらないものなんだろうなーなんて思いました(^^ゞ
      2021/03/09
  • 1899年 スタンブール
    土耳古帝国からの招きで、この地の歴史文化研究に来た村田。
    同じ屋敷に住むのは、ディクソン夫人と、家事を努めるムハンマド。
    遺跡を発掘している独逸人のオットー、考古学者の希臘人ディミィトリス。
    そして、ムハンマドが通りで拾った鸚鵡。

    驢馬を連れた行商人の爺さんや、ヘジャウ”-を纏った女性たち。異国の地にもかかわらず、どこか懐かしい感じがする。
    異界との不思議な交流もあり、日本への帰国後、村田が寄宿することになった綿貫の家でも面白い仕掛けが待っていた。
    「家守奇譚」としっかり繋がっていて、梨木香歩さんのファンタジーの世界にすっかり魅せられてしまった。
    「友よ」と甲高く叫ぶ鸚鵡の声。楽しむことを学べ。
    友人たちと過ごしたかけがえのない、村田の輝かしい青春の日々を思うと、目頭が熱くなる。

  • 【書評】『村田エフェンディ滞土録』梨木香歩 - 横丁カフェ|WEB本の雑誌(2014年1月9日)
    http://www.webdoku.jp/cafe/sakai/20140109105859.html

    村田エフェンディ滞土録 - WEB本の雑誌
    http://www.webdoku.jp/shinkan/0406/t_3.htm

    「村田エフェンディ滞土録」 梨木 香歩[角川文庫] - KADOKAWA
    https://www.kadokawa.co.jp/product/200702000663/

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    角川から新潮に移るらしい…
    中村智の挿絵は?近藤美和のカバーイラストは?気になってるのはソコかい!
    いえいえ、今新たに出される意義の重要性は勿論気になりますし、
    加筆・改訂されたりする?解説は誰?と色々気になってますよ。。。

    実は、さらに先の世界が見たいと思っていたのですが、それは夢かな、、、

  • 今まで読んだ梨木香歩氏の本で一番好きです。
    トルコに訪れたことがなくても、不思議と文章から異国の雰囲気を感じ取れ、物語への没入感を味わえる本でした。(hiromida2 さん、本をご紹介して頂きありがとうございました!)

    異国の地で、怪我の療養をする日本人(木下)を元気づけようとする場面があります。
    ギリシャ人のディミィトリスは、たまたま貿易商が持ち帰った醤油のことを思い出し、貿易商から分けてくれるよう図り、主人公の村田に醤油を渡します。

    村田は、「彼(木下)にとって異国人である君の思いやりが、彼をどれだけ励ますことか。」と感謝します。
    それに対し、ディミィトリスは、「こんなことはなんでもないことだ。『私は人間だ。およそ人間に関わることで、私に無縁なことは一つもない』」と、ローマの劇作家(テレンティウス)の言葉を述べます。

    生まれた国が異なる登場人物たちですが、優しさに溢れており、読書をしながら温かい気持ちになりました。それにしても、やはり食事は醤油や味噌玉(削った鰹節を炒って粉状にし、ネギと一緒に味噌に入れて球状に丸め焼いた兵糧食)で作ったお味噌汁が恋しくなるところは、異国にいても日本人だなっと読みながら思ってしまいました。

    ちなみに、鸚鵡が意外と物語のスパイスになっており、愛おしいキャラクターです。

    • りまのさん
      Reyさんへ はじめまして。
      おはようございます!
      いいね と、フォローのお返しを、ありがとうございます。
      とても、嬉しかったです。
      梨木香...
      Reyさんへ はじめまして。
      おはようございます!
      いいね と、フォローのお返しを、ありがとうございます。
      とても、嬉しかったです。
      梨木香歩さんのこの本、私も、気になっていたので、明日にでも、書店注文、しようと思っています♪
      これからどうぞ、宜しくお願いいたします。

      りまの
      2022/03/10
    • Reyさん
      りまのさん

      おはようございます。こちらこそ、いいねとフォローありがとうございます!
      りまのさんのお名前をブク友さんのタイムラインで時々お見...
      りまのさん

      おはようございます。こちらこそ、いいねとフォローありがとうございます!
      りまのさんのお名前をブク友さんのタイムラインで時々お見かけしてたので、フォローのご縁ができて嬉しいです。

      この本は、hiromida2さんのご紹介で登録しました(^^)皆さまの影響で読書の幅が広がり、日々勉強になっています。

      こちらこそ、どうぞ宜しくお願い致します!

      Rey
      2022/03/10
  • 昼休みに注文したランチを待ちながらラストを読んでたのですが、胸がいっぱいになって、あやうく泣いてしまうところでした。悲しいけれど、愛おしくて。
    この本を教えてくれたブク友さん、ありがとうございます。

    第一次世界大戦の時代。欧米列強の脅威と革命の萌芽に揺らいでいたトルコへ留学した村田青年の現地での生活と、その後を描いています。

    村田の下宿のオーナーはイギリス人でキリスト教徒の老婦人ディクソン夫人で。
    回教徒で小間使いの奴隷ムハンマドがいて。
    村田以外の下宿人はドイツ人のオットーとギリシア人のディミィトリスで。
    いろいろな言葉を覚えて喚く元気な鸚鵡がいて。
    しかも、色んな宗教の色んな神様が色々な怪異現象をもたらしたり!?

    異なる文化的背景と、それ以上に異なる個人の特性を、互いに尊重したり議論したり(人によっては無頓着)しながら、一つ屋根の下の生活は豊かかつ鮮やかに過ぎていく。
    あの時の生活と友人たちの記憶は、帰国しても村田の心からは消えなかったのに。むしろ、あくせくする疲弊した日々の支えになる程大切な思い出だったのに。
    第一次世界大戦と革命の激動はトルコに残る友人たちの人生に大きな影響を与えて…。

    本当に悲しくも愛おしい。
    ただただそう繰り返すしかないくらい、語彙を探すよりも胸に迫ります。
    ディミィトリスが村田に言った「およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない」。
    この言葉の意味は、何気ないようで、重い。

    トルコは今まで私が行った約20か国の中で一番好きな国。
    ISやシリア問題、テロの気配など微塵もなかった約10年前は、とても平和で治安もよかったのです。
    イスタンブールが国一番の観光地(特にドイツなどヨーロッパの客が多い)だからというのもあったのだろうけど、街中の割とどこでもトルコリラだけでなく、ユーロやアメリカドルが平然と使えて(当然レートはそれなりだったけど。トルコの人って結構したたかかも)。
    トルコ人と一言で言っても、アラブ系っぽい顔立ちの人もいれば、ヨーロッパ系、アジア系、それらが混じり合った顔立ちの人もいて。

    ずっと昔から、西欧と亜細亜の文明の十字路であった歴史的背景をなんだか強く噛み締めたものです。

    とはいえ…いえ、だからこそ、融合や共存だけでなく、目を覆いたくなるような対立や殺し合い、奪い合いが幾度もあり。

    梨木さんは多くの作品で、異質(自分と異なる部分を持つもの)な人やものとの共存や孤独を描いてきた人でしたが、歴史的事例を素材に書いたものの中では本作が一番好きかもしれない。

    そして、あの懐かしき日々の象徴となった鸚鵡を使ったラストよ…それこそが、一層この物語に強い余韻を残しています。

    ちなみにこのお話は、梨木さんの別作「家守綺譚」と少なからず繋がっているため、ブク友さんが先にそちらから読むように助言くださいました。助言どおりに順番に読んで、確かに「おお!」となりました。
    教えてくださって、本当にありがとうございます。

    梨木さんファンにも、そうじゃない人にも、おすすめしたい作品。

    • さてさてさん
      hotaruさん、こんにちは!
      この作品、本当にトルコの良さをとても感じられる雰囲気感に溢れた物語だと思いました。私もトルコ、イスタンブー...
      hotaruさん、こんにちは!
      この作品、本当にトルコの良さをとても感じられる雰囲気感に溢れた物語だと思いました。私もトルコ、イスタンブールを旅したことがありますが、その情景が重なる部分を感じました。そして何よりも「家守奇譚」が絶妙に効いてきますよね。その先の「冬虫夏草」にはまだ到達できないでいますが、梨木さんの世界観はとても好きです。
      またこの世界に浸りたい、そう思いました。
      2020/10/15
    • hotaruさん
      さてさてさん、こんにちは!
      さてさてさんの素敵レビューのおかげて大好きになる本に出会えて本当に良かったです。
      梨木さんの本はそんなにたくさん...
      さてさてさん、こんにちは!
      さてさてさんの素敵レビューのおかげて大好きになる本に出会えて本当に良かったです。
      梨木さんの本はそんなにたくさん読んでいるわけではないのですが、また色々読みたくなりました。
      2020/10/16
  • 以前読んだ『家守奇譚』の兄弟のような本。
    村田がイスタンブールで経験したことを描く。
    少し不思議なことも起こるが、どちらかと言えば、下宿人全てが違う人種であることからくる微妙なすれ違いや違和感などを記しているように感じる。
    その中でも、やはり梨木香歩作品には欠かせない「ありようの違う」者たちが出てくるのが面白い。リアルでありながらどこか夢を見ているかのような感じだ。

  • 梨木果歩だってー?「西の魔女が死んだ」は読んだけどぴんとこなかったなー「オズの魔法使い」じゃね、「裏庭」だって「トムは真夜中の庭で」や「思い出のマーニー」なんじゃあ!? と、豊潤さ芳醇さを予感しつつも遠ざけていた著者。
    思いもかけぬ人からおすすめされて読み、単純にも、大いに感動した。
    語り手の恬淡さや、時代がかった物言いが功を奏して、面白味を齎し、きな臭さの仄かに舞う中、爽やかな味わいが作品を浸していたが、
    一転、終盤、死が充満する。
    だからこそ波状攻撃を仕掛けてくるノスタルジー、無力感。
    「主義主張を越えた友垣」、「楽しむことを学べ」、「人は過去なくしては存在することは出来ない」、そして「私は人間だ。およそ人間に関わることで、私に無縁なことは一つもない」。
    小説が骨組みや肉付けをしたからこそ、読み手の骨身に沁みる、これぞ小説。

    ちなみに解説の茂木健一郎、文庫裏表紙のあらすじは、的外れ。

  • この著者は、前に『裏庭』というのを読んだことがある。
    その時は、ふんわりした話を書く人なんだなという印象を持った。
    『裏庭』は『裏庭』でよかったのだが、でも、普段は「殺人事件だ!」「ギャー!」みたいな本ばっか読んでることもあってw
    もうちょっと刺激的な方がなぁーなんて(^^ゞ
    そんなイメージだっただけに、これは読んでびっくり!
    この著者って、こんな骨太な話を書く人だったんだなーと。
    いやはや。おっそれ入谷の鬼子母神!
    って、江戸っ子かw


    実はこれ、ある方の本棚にあった本で。感想を読んでいて、妙なひっかりを感じて。
    「あ、これは読みたいかも!」と読んでみたのだが、いやいや、どうして。そんな単純な話ではなかった。
    いや、面白いのだ。淡々としているわりに。『裏庭』のような、ふんわりした感触もある。
    でも、読みながらも感じたのは、これって、たぶん、この著者なりの歴史観を描いているんだなーと。
    だからこそ、物語の舞台が東洋と西洋が交差するイスタンブールで。
    ま、その辺りの歴史は自分は疎いのでなんとも言えないが、主人公を明治の日本人にしたのは、世界(史)を素の状態で見て語らせるためなんだろうなーと思っていた。
    ただ、もちろん、著者にその意図はあったんだと思うのただ、むしろそれは余禄みたいなもので。
    著者が書きたかったことは、それよりも、西洋と東洋、キリスト教と他の宗教、男と女等々、お互い違うものを安易に融合しようというのではなく、違いを認めて尊重し合おう…、と言っちゃうと、今っぽくて、毒にも薬にもならないきれいごとになってダサいから、登場人物の言葉を抜き出すと。
    「もう止めてくれ。耐えられない。だが、貴方の話を聞いている内にわかったことがある。僕はこういうことから、抜け出したいがために西洋を目指しているのだ。理に適った法、明晰な論理性、そういう世界を僕は目指しているのだ」
    と言う日本の日本人である木下に対して、イスタンブールの人でありながらキリスト教に改宗しているシモーヌはこう言う。
    「そういう世界、知らなくもないけど。あまりに幼稚だわ。わかるとこだけきちんとお片付けしましょう、あとの膨大な闇はないことにしましょう。という、そういうことよ」と。

    人(国)というのは、論理と感覚、どちらかに偏らせると、衰退したり、他(国)を侵略しようとしたり、おかしなことになる。
    論理で言う人、感覚で言う人、異なる人がいるのは、論理で言う人と感覚で言う人が意見をぶつけ合うことで、人(国)をよりよくしていくためなんだ、みたいなことを、19世紀のイスタンブールを舞台に明治の日本人である主人公に言わせたんじゃないのかなーと。

    さらには、著者なりの感性として、西洋の論理(科学性)を、(科学が)わかっていることだけではなく、(科学が)わかってないことにも適用されている状況、つまり、現代人の論理への盲信を、「何かおかしくない?」とあなた(読者)の感覚は警鐘を鳴らしてないですか?と問うているんじゃないだろうか。

    ていうか。著者が言いたいことを、そういう風に文章として書いてしまった時点で、それは西洋流の論理になってしまっているんだろう。
    著者が伝えたいのは、そうではなくて。それを言葉や文字にして理解するのではなく、この本の登場人物たちの言動から“感じてください”ということな気がする。
    つまり、“多様性が大事”だとか、“ダイバーシティ”、“お互いの違いを尊重”と言葉や文字にしてしまったら、それはその途端、西洋流の論理になってしまう。
    西洋流の論理というのは、「わかるとこだけきちんとお片付けしましょう、あとの膨大な闇はないことにしましょう」なのだから、わかることが増えてくれば、論理が変わることで必然的にその価値観も変わってくる。
    でも、この物語の主人公がイスタンブールで他の登場人物との関わりで感じた本質は変わらない。
    その文字でも言葉でもない“見えないもの”を、見えないからと言って無視しようとする「論理」は人(国)をおかしくする。
    そういうことなのかなーと思った。

    上記のことは、正直まだ巧くまとめられない。他の人が読んでも、何が何やらだろう。
    でも、それを上手くまとめたら、それは「論理」になってしまう。他人がその「論理」を読んだら、それは「情報」になってしまう。
    それでは絶対駄目なのだ。



    追記
    4/11(日)、朝のNHKニュースでカズオ・イシグロのインタビューをやっていて。
    その中で、ふーん。なるほどなーと思って聞いていたのが以下。
    自分の信じたいものこそが正しい。それが真実だという、おかしな考えがどんどん広まっていると感じる。
    多くの人が、自分が感じていることだけが“真実”だと主張する、この状況を見ると、感情を描く小説家としては、とても不安になる。
    (中略)
    私たちは、自分の思いだけで突き進み、自分が聞きたくない意見は聞かないという風潮に抗っていかなければならない。
    一方で、他人の意見など聞きたくないというのも人間の性でもある。
    だからこそ、小説や本、ドラマやドキュメンタリーなどが大切なのだ。

    いや、“自分の思いだけで突き進み、自分が聞きたくない意見は聞かない”って、まさにそれがNHKなんじゃん!とも、思っちゃったんだけどさ(爆)

  • 「村田エフェンディ滞土録」(梨木香歩)を読んだ。
    綿貫や高堂の物語と繋がってはいるけれど、この物語独自の大きなうねりが読者を呑み込む。
    名作だと思う。
    それにしてもテレンティウスの
    『私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない……。』(本文より)
    は重いなあ。

著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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