雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 1932
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784043892020

感想・レビュー・書評

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  • 現世から隔離された隠れ里「穏」に暮らす少年が、とある秘密を知ったことで穏を追われ、少年に取り憑く「風わいわい」と共に旅に出る。
    やはり恒川さんが描く異界は憧れを抱くほどに美しく魅力的!
    とにかく一つ一つの設定やディティールの発想力に惚れ惚れする。
    この不思議でたおやかな世界観にいつまでも浸っていたくて読み終わりたくないとすら思った。
    その幻想世界の中に不意打ちのように現れる醜悪な人間の描写…この毒気もまたいいアクセントになっている。
    おや?と戸惑うくらい空気感が変わる章を重ね、やがて「そういうことだったのか」と一つに繋がる気持ちよさ。
    先が全く読めない展開に本当にドキドキしながら読んだ。
    それだけに、最後の展開の意外さには呆気にとられた。
    クライマックスのカタルシスに欠ける気がしたけど、このいきなり放り出されたような喪失感も含めて恒川ワールドの中毒性を形作っているのかも…しれない??

  • 日本にある、地図にも載らず外からは知られていない場所。
    よくありそうな設定ですが、世界観が作り込まれていて、物語に入り込みました。時間軸が入り組みながら進んでいくのも引き込まれます。
    ホラーのジャンルですが、恐怖とは違う不思議な読了感を覚えました。

  • 壮大な世界観の割には、お話は一つの筋の中で長いけれども細く閉じている印象。
    メインの話だけでなく、途中の何気ない描写がもっと欲しくなる。

  • ***未処理***

  • 隠れ里「隠」に暮らす少年の物語。長編。

    独特の世界観でとてもおもしろかったけれど、少しひっかっかる部分もあった。
    恒川さんは短・中編の方がいいのかも。

  • 恒川ワールドにはまったので、手に取ってみた。
    面白いが、読後感が空虚だ。穏という土地の閉鎖的で閉塞し選民思想を持った感じが、田舎の村社会に通じるものがある気がした。穏の情景は美しい。風わいわいは、復讐して気が済んだから、空に還ったのかな?

  • 恒川作品の好きな理由の一つに、数ページであの独特な異世界にフッと投げ込まれ、そしてその瞬間がとても心地いいことが挙げられる。本作も奇々怪々な要素とファンタジーが融合された特異な世界の描写は読み手の心を鷲掴みにする。終盤で伏線が繋がり一気にラストに向うスリリングな展開は長編ならでは。ただ、空手を駆使する超人大学生の早田は一体何者なのか?という疑問が続編の伏線のような気がしてならない。次作『鬼衆バカ一代』とかいうタイトルだったらやだなー(んな訳ない)

  • 角川ホラーだけどファンタジーってか・・・不思議な世界。でも恒川ワールド全開でとてもよかった

  • 雷の季節というから夏の話かと思っていたら、冬から春にかけてらしい。
    まだ寒くて、木々も芽吹いてはいない、どこか寂しい季節。
    言われてみれば、この物語には、そんなスウスウと風が通り過ぎるような雰囲気が漂っていた。
    主人公が暮らしていた「穏」という土地も、字から感じられる温かさよりは凍り凝ったような印象がある。
    冷たい水の底に沈んだ町のような、そんな静謐さ。
    主人公たちはそこに一石を投じたのかもしれないけれど、波紋は底にまでは届かない。
    雷の季節はまた巡ってくる。
    そんな予感を残した結末だった。
    ああ、でも、「風わいわい」はそんな季節にも自由に空を飛び回っていそう。
    一度きりでいいから、肩に下りてきて、話を聞かせてほしい。

  • 日本と繋がりつつ少し外れた世界にある隠れ里「穏(おん)」に住む少年の物語。
    「穏(おん)」は、懐かしく叙情的な雰囲気と不思議なものへのロマンがあるが、得体の知れないものへの恐怖や閉鎖社会のしがらみや因習といった闇の部分も内包しており、その中で、主人公の少年は自分の居場所に悩んでいく。
    中盤から現代日本の少女の物語が語られ、少年の物語と絡み合い、少年の立場の全容が明らかになってくるのはよくできている。
    終盤は、少年の物語から焦点が外れてしまい、翻弄されて急展開で終わってしまったような印象がある。怪物トバムネキと主人公との因縁も薄く感じられ、対決もあっさりと感じたのがもったいない。

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著者プロフィール

1973年東京都生まれ。2005年、「夜市」で日本ホラー小説大賞を受賞してデビュー。直木賞候補となる。さらに『雷の季節の終わりに』『草祭』『金色の獣、彼方に向かう』(後に『異神千夜』に改題)は山本周五郎賞候補、『秋の牢獄』『金色機械』は吉川英治文学新人賞候補、『滅びの園』は山田風太郎賞候補となる。14年『金色機械』で日本推理作家協会賞を受賞。その他の作品に、『南の子供が夜いくところ』『月夜の島渡り』『スタープレイヤー』『ヘブンメイカー』『無貌の神』『白昼夢の森の少女』『真夜中のたずねびと』『化物園』など。

「2022年 『箱庭の巡礼者たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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