稲生物怪録 (角川ソフィア文庫)

著者 :
制作 : 東 雅夫 
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 252
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784044004972

作品紹介・あらすじ

江戸時代中期、広島・三次藩の武士・稲生平太郎の屋敷に、一ヶ月にわたって連日、怪異現象が頻発。その目撃談をもとに描かれた「稲生物怪録絵巻」(堀田家本、全巻カラー)、平太郎本人が書き残したと伝わる『三次実録物語』(京極夏彦訳)、柏正甫『稲生物怪録』(東雅夫訳・註)が一冊に。多彩な妖怪変化、想像を絶する奇抜な生態、冷静沈着に観察する平太郎の武勇……日本各地に伝わる妖怪物語の最高峰が、待望ひさしいコンパクトな文庫版で初登場!

感想・レビュー・書評

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  • 十年以上前、稲垣足穂「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」を読んで知った。
    その後、妖怪や幽霊の本を収集しているにもかかわらずなかなか本腰入れることができずにいる。
    鬼太郎6期にはまったり、水木しげるをぽつぽつと読んだり、今度松江に行くことになったり、と妖怪づいている。
    だもんだからまず三次の商工会議所でDVD「伝承としての稲生物怪録」を頂いてばっちり予習してから、よきタイミングでこの本に向かったのである。

    面白い!
    まずは絵巻の味。
    主に屋内における怪異が、これでもかと怖可愛く。
    そして京極夏彦による訳も。
    「たいしたことなかったから寝た」のテンドンに吹き出してしまう。
    そして東雅夫の訳も。
    どういうことかというと、

    ・稲生物怪録絵巻(堀田家本)
    ・武太夫槌を得る――三次実録物語 本人の書き残したものを京極夏彦が訳したもの。
    ・稲生物怪録 同僚の柏正甫がインタビューして書き残したものを東雅夫が訳したもの。

    の三つが収録されている。
    どれも同じ筋なので繰り返しなのだが、それぞれの味がまたよし、なのだ。

  • 見当たらなかったので、代わりにこちらで登録を。
    1994年出版「稲生物怪録」定価3500円小学館出版の絵本を拝読(当時にしては高すぎやしませんかね…)

    平太郎の動じなさというか、もはやどんな妖怪が来るのかワクワクしているあたり豪胆だなぁと
    身体的な実害は少ない妖怪ではあるものの、平太郎周りの人間関係は大いに崩れたのではないだろうか…
    あと平太郎のウィークポイントをちょくちょく付いてくるあたり、妖怪も学習しているのだな、と微笑ましくなった

  • 江戸時代中期、三次藩の武士・稲生平太郎の屋敷で1ヶ月続いた怪異現象を元に描かれた「稲生物怪録絵巻」、平太郎本人が書き残したと伝わる「三次実録物語」、柏正甫の「稲生物怪録」を1冊にまとめたもの。多くの作品に取り上げられた有名な妖怪絵巻が文庫で簡単に読めるとは良い世の中になりました。同じ作品でありながら、記録、絵巻、小説と形態の違いによる差分を楽しめます。ユーモラスな物の怪がたくさん登場する絵巻も記録や小説を読んで背景を知ってると、より楽しめます。

  • 三次もののけミュージアムに行ったので、その記念に購入。
    絵巻をカラーで一つ一つのエピソードをしっかり見られたのはよかったなあ。
    平太郎本人作という『三次実録物語』はさすが京極夏彦先生、非常に読みやすい小説になっていました。
    9日目のエピソードは何度読んでもエグいけど。
    聞き取って書いたと伝わる『稲生物怪録』は、『三次〜』との相違点が散見されて、その違いを楽しめるのもいい。
    読み手側が詳しくないので、その相違点が先生による脚色によるものかどうなのかまでは判断つかなかったのですが、絵もあり、成立過程の違う2種類の物語を一度に楽しめたりと、稲生物怪録に最初に触れる本としては適切だと思います。

  • 名高い「稲生物怪録」だが、近寄るのは初めて。
    京極さんが手広くお仕事されてるお陰です。
    絵巻は確かに、独特の味が出ていてユニーク。
    京極さんの現代語訳は読みやすく、微かに京極さんの匂いがするところが良きかな。
    「仕方ないので寝た」「(怪異が)使えるかなと思ったが役に立たなかった」という淡々とした感じが、加門七海の実話怪談の様で面白かった。
    最後、魔王が出てくるのね‥知らなかった‥。
    これ以上近寄らないとは思うけど、手に取らせてもらったことには感謝。

  • 稲生物怪録をカラー図版で・京極夏彦の文体で・現代語訳で、さらに携行しやすい文庫版という欲張りセットでこの価格。聞いたことはあるけれど、通しで読んだことはなかった人間(自分だ)にとってうれしい一冊。

    図版は文庫サイズのためそこまで期待できない? ……と思いきや、三段組で全体を提示後、各日ごとに絵の部分を1/2~2ページほどの大きさで掲載しているのが良かった。

  • 稲生物怪録の入門編。
    巻頭に収録された図版が面白い。文庫ということでどうしても小さいのが残念だが、生き生きとした筆遣いや、滑稽味のある化け物の造形など、見ていて飽きない。平太郎、けっこう散々な目に遭っているというのに、ちょっと笑ってしまうのは、この絵の力が大きいだろうw
    現代語訳は京極夏彦。次は原典をそのまま活字にして欲しいな〜。

  • 江戸時代に実在した人物が、実際に体験した怪異譚(ということになっている創作なんだろうが)。
    16歳の平太郎青年が、7/1から1ヶ月もの間、毎日怪異に襲われる様子が、まるで日記のように日付とともに記録されている。

    ・物語とともに妖怪絵も付された『稲生物怪録絵巻』
    ・平太郎本人が書き残したと言われる『三次実録物語』
    ・平太郎の同僚が、平太郎から聞いた話をまとめたものとされる『稲生物怪録』
    の3編構成で、いろんな角度から稲生物怪録を楽しめる良書。

    しかもなんと、『三次実録物語』にいたってはあの京極夏彦氏の現代語訳!逐語訳のようなつまらない訳ではなく、まるで現代の小説かのような柔軟な文章で、かなりおもしろい。

    飛び回る生首だの、急に水浸しになる畳だの、体中を撫で回す天井から伸びる手だの、とんでもない物に毎日襲われる平太郎。
    それなのに毎日「どうにもならないので寝た」「どうということもないので寝た」「不快だったが我慢して目を閉じているうちに寝た」と快眠すぎるのがおもしろい。
    そのうえ、あちこちを掃きまわる箒に「親切だな」と喜んだり、勝手に動いてる杵と臼に未精米の米を突っ込んで妖怪を精米機扱いしようとしたりする始末。
    とにかく平太郎、まったくびびらない。そして家を出ていかない。平太郎よすぎる。

    ホラーと思わせつつ実はコメディなのか?と思うくらい笑った。
    最終的に根負けした妖怪の親分(大魔王と名乗ってた)が平太郎に詫びて退散するのだが、平太郎は「法華経や仏神のお陰だなぁ」とか言って終わる。
    いやいや仏神は絶対関係ないって。お前の肝っ玉がおかしいだけ。

    最初の絵巻を眺めてるときに「なーんか怖がってる顔に見えないんだよなぁ」「いやぼんやり眺めとる場合か!逃げろや!」「この絵師は人の表情かくの苦手か!?」みたいな感想だったんだけど、絵師は正しかったみたいです。こいつ1ミリも怖がってないし逃げようとしない。

    たぶん「平太郎は何も恐れぬ男!動じぬ男!大魔王すら下す強い男!」みたいな最強主人公系のラノベみたいなストーリーのつもりだと思うんだけど、なんかもうずっと笑けてきちゃうんだよな。

    とにかく良いこれ。また読もう。

  • 『イノモケ』は、小学生の時、学校の図書室で小学生向けにリライトされたものを読んで以来、30年振りである(とは言え、本格的に通しで読んだのは今回が初めて)。改めて読んで、稲生家の怪異は怖いよりも気持ち悪い系の方が多い印象である。しかし、ベトベト、グチャクチャのお化けに付きまとわれても、「仕方がないから寝た」とか書いている平太郎は、やはり只者ではない。

  • 30日に渡り怪異体験をする平太郎が豪胆すぎて、驚かせにきた妖怪達の張り合いのなさに、惻隠の情まで湧かせてしまう。カラーの絵巻か見所。

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著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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