シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精 (角川ビーンズ文庫)
- 角川書店(角川グループパブリッシング) (2010年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784044550073
作品紹介・あらすじ
人間が妖精を使役する、ハイランド王国。少女アンは、一流の銀砂糖師だった母を亡くし、あとを継ぐことを決意する。銀砂糖師とは、聖なる砂糖菓子を作る特別職のことで、王家勲章を持つものしか名乗れない。用心棒として、美形だが口の悪い戦士妖精のシャルを雇い、旅に出たアン。人間に心を閉ざすシャルと近付きたいと願いつつ、王都を目指すけど…。第7回小説大賞審査員特別賞受賞作。
感想・レビュー・書評
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人間が妖精たちを使役しているという世界。それに抵抗がある主人公の銀砂糖師のアン。こういう差別構造の舞台設定がいかにも三川みりだ。処女作からちゃんと自分なりの個性を持っているのが大したもの。アンは、戦士妖精のシャルを買って、銀砂糖の細工作品の大会に出るために旅に出るが、これがなかなか大変な道中になる。アンの健気な思いもかわいいし、シャルが少しづつ変わっていく過程もいい。銀砂糖師としての成長も見どころだが、人と妖精との関わりもこのシリーズの大きな柱になっていくのだろうか。
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三川みり原作の本作が今季(2023年冬)アニメになってる!デビュー&出世作みたいなので興味もあり、読んでみました。この一巻がアニメ4話までです。
話の筋はわりとありきたりな感じで結末は見えつつ読むものの、妖精を人が使役することが普通の世界でそれを是とせず信念を貫こうとする主人公や妖精達のスタンスなど、話を支える土台がしっかりしていて心地よい定番でした。はっきりいって、好みの話で、確実に2巻は読みます。17巻あるようなので、途中で挫折するかもだけど。
小学校でも大丈夫な内容でした。つばさ文庫にしてくれたら良いのに。幸村アルトのコミカライズに興味あり! -
龍ノ国幻想の美川みりさんのデビュー作と知り
図書館で借りてきました。
角川ビーンズ文庫ならではの
キュンキュンストーリーですね。
砂糖細工師になりたい女の子の
おそらくサクセスストーリーとなるでしょう。
デビュー作だけに荒削りな部分も感じますが
むしろ主人公のアンと重なって好ましいです。
せっかくなので、続きも読みます。 -
口は悪いけど何だかんだ言って甘いところもある気がするシャルが妙にかわいかった。ミスリルもかわいいし、妖精たちがかわいいお話だなあ。主人公もひたむきで好みです。シャルがこれからどうデレていくのか楽しみ(既に結構デレてる気がするけど)。少女小説らしい少女小説で楽しかったです。
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これは本当少女小説投稿作のお手本だと思った。お話作りの満たすべき要件をきちんきちんとこなしていっている。題材も「砂糖菓子」と「妖精」といった女の子の好きなものをうまく使ってるし、今流行りのヒロイン職業モノとしてもレベルが高い。ただ惜しむらくは、視点がヒロインと黒妖精とで割ところころ変わるところと、シリーズ化しにくそうなところ… ビーンズが今後どう売り出していくのか楽しみ
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うわあ、面白い!
こんなに面白い新人賞受賞作を読んだのは久しぶり!
かわいらしくて、ライトで、甘くて、キャラも立ってて、世界観も素敵!
前向きで優しい主人公、クールな妖精、出しゃばりがかわいい妖精というこのパーティー。私も仲間に入りたいもん。面白い証拠だね。
私もこんなロードムービーが書きたい!
たき火で食事するシーンなんかは西部劇みたいで好きだよ。
いいね、たき火は。 -
“目があった。妖精は、アンをまっすぐ見つめた。
何か考えるように、妖精はしばらく眉根を寄せていた。が、すぐに納得したように、呟いた。
「見覚えがあると思ったら、かかしに似てるのか」
そして興味をなくしたように、ふいと、アンから視線をそらした。
「し…し、失礼な……花盛りの、年頃の女の子に向かって」
妖精の独り言に、アンは握り拳を固めた。
「盛りも、たかがしれてる」
そっぽをむきながらも、妖精がずけっと言った。
「なんて言いぐさ――!?」”
小柄で痩せていて手足が細くて、ふわふわとした麦の穂色の髪をしている十五歳の少女、アン・ハルフォード。
彼女は、年に一回開催される砂糖菓子品評会に参加するため、護衛として黒い瞳に黒い髪をもつ、美形だが口の悪い戦士妖精シャル・フェン・シャルを雇い、品評会のおこなわれる王都を目指して旅をはじめる。
はたして、彼女は品評会に無事参加することができるのか。そして、一流の銀砂糖師になれるのか。
『審査員全員が激賞!!第7回小説大賞審査員特別賞受賞作!!』……ということでちょっと気になって読んでみた。
一言でいうと、良かった。
宣伝に偽りなし。
“アンはどこか、図星を指されたような気がした。自分でも意識せずに感じている、自分の砂糖菓子に対する、引け目のようなものを的確に言い当てられた。”
舞台設定から登場人物は、もしかしたらそれなりにありがちのものかもしれない。
でも、この展開はすごいと思う。
アンが人間と妖精の関係と、自分とフェンの関係を見つめ直すところとか。
アンが自分の欠点を克服することができたところとか。
フェンが自分からアンのところへと戻ってくるところとか。
そのどれもが、すごい道筋立って、納得できる。
しっかりとしていて、それでいて面白いトーク、目が離せない展開。
久しぶりに、良い本読んだなって思えた。
“「とことん失礼な奴だな、シャル・フェン・シャル!いくらアンが、どっからひいき目に見ても、かかしにそっくりとはいえ、かかし、かかしと呼ぶな!」
「かかしをかかしと言って、何が悪い」
「なっ、おまえ!!かかし、かかしと連呼するなよ!」
「かかしを連呼してるのは、おまえだ」
「とにかく!事実でも、言っていいことと悪いことが、世の中にはあるんだ!かかしなんて、かかしなんて!!そっくりすぎて、笑えないだろうが!!」
力なく、アンは笑う。
「あなたたち……、二人とも失礼なんだってこと、いい加減自覚してくれる?」
すると二人の妖精ははたと気がついたように言い争いをやめて、お互いに顔を見合わせた。
――今年、銀砂糖師になれなかった。でもまた来年来るようにと、王妃様がおっしゃった。それで充分。
美味しい砂糖菓子を欲しがる、黒曜石の妖精と。
無理やり恩返ししたがる、水滴の妖精と。
すくなくともこれからは、ひとりぼっちじゃないと知る。
――わたしは、一人じゃない。いつかは、銀砂糖師になれるかもしれない。未来がある。これは最高。
アンは、微笑んだ。
「ま、いいか。かかしでも、カラスでも。わたし、あなたたちのために、砂糖菓子を作る。素敵な砂糖菓子をね。わたし、それしかできないから」
空は高く澄んでいる。
王都の広場には、たくさんの砂糖菓子の、甘い香りが漂っていた。” -
まず、イラストレーターがあきさん、という事で迷わず購入を決め、選考員の方々の言葉は、あまり意識しない様に心がけて読んだ。
正直、序盤は世界に入り込めず、白けそうになった。章の間ごとにシャル視点の話があるが、どうにも主人公に対する感情や年相応ではない思考に不自然さを感じた。しかし後半、アンが苦境に陥るところからクライマックスにかけては、そんな事も忘れる勢いで読む事ができた。恋愛要素が薄いと評してあったが加筆によるものか、ほのかに甘い展開もあり、良い意味で予想を裏切られた。審査員特別賞にふさわしい作品で、とても満足できた。 -
漫画の原作だと知り、気になったために読んでみました。
イラストはビクトリアン・ローズ・テーラーシリーズのあきさんでした。
今は難しいものを読む気分ではないので優しい気持ちになれる可愛らしいお話がちょうどいいです。