「英語公用語」は何が問題か (角川oneテーマ21 B 139)

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  • Amazon.co.jp ・本 (183ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784047102637

作品紹介・あらすじ

会議も英語、社員食堂のメニューも英語…日本企業に英語公用語化は必要か?楽天・ユニクロの英語公用語化で激震するビジネス界への処方箋。

感想・レビュー・書評

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  • 楽天・ユニクロの社内英語公用語宣言、武田薬品の新卒採用基準TOEIC採用など、昨今のビジネスシーンでは英語に関する話題に事欠かない。
    大学生に近い場で仕事をしていると『TOEICを"やらなきゃ"』という空気をひしひしと感じる。
    会社の方針がそうなったということであれば、社員やその企業への就職希望者はそれに従わざるをえないが、
    ただ、今日本の社会に蔓延する、日本人が持つ、そういった『英語を妄信的に信じる』風潮・意識に対して一石を投じる一冊。

    本当に日本のビジネスマンが英語を話せる必要があるのか?
    その信仰が進んだ先にある世界について、言語学・社会学の視点から話す。EUが掲げる多様言語性を例として持ってきたのはなるほどと感じた。

    また多くの企業が評価基準として掲げるTOEIC700〜730点とは一体どのようなものなのか。その実態と信憑性についても記されている。

    後半では通訳者・教育者の視点から、そうは言っても必要となる英語学習の具体的な考え方や教育現場の実態についても語られている。知的欲求を駆り立てない英語学習の現実についてはなるほどと思ったし、『リーダーの英語』として紹介された歴代首相の悪しき実例については、笑えない現実だが笑わせてもらった。

    著者はただ一方的に「英語公用語化はダメだ!」とも「ビジネスマンい英語は必要ない!」とも言ってるわけではない。ただその必要性や弊害、日本の教育システムも含めて再考の必要があると提唱している。
    日本人の「英語は話せたほうがいい」という漠然とした意識を改めて見つめ直すための良い一冊だと思う。

  • 近年の英語公用化についての問題を挙げ,さらに英語に対する学習の
    仕方や英語は必要かと様々なテーマで議論している。
    トイックは730点以上取る意味は海外へ行くためだけだと認識した。話す力はそれからだと思う。英語に興味ある人は読んでみよう。

  • このころはたしかに「英語公用語化」論争盛り上がってたな。全体的には内容は散漫。英語を学んできた身としてはごもっともな話ばかりでそれほど新しい発見はなかった。やはり「英語公用語化」を叫ぶ人々は、逆に英語、または語学がわかっていない。文部科学省、そしてその背後の多くの日本国民もそう。第5章「英語教員はもっと発信を」は耳が痛いが、ではどういう発信を目指せばよいのかはっきりしない。p.137「英語を使えないという個人的なうらみつらみが<世論>を形成し、「仕事で使える英語」への転換を後押ししたことは間違いない」そうそう。そしてそのうらみつらみは学校の成績が優秀だったのに英語が話せない「エリート」たちが特に厄介だと思う。英語が話せないのは頭の悪さや教育の非効率性ではなく、その人が十分な時間と労力をかけていないというだけのことだ。もちろん他教科、スポーツ、芸術と同じで、学校外の自分の時間の中で、ということだ。企業の「公用語化」騒ぎはすっかり聞かなくなったが、人々の英語に対するメンタリティーは変わっておらず、文部科学省の「教育指導要領」の中にしっかり残っている。

  • 英語
    社会

  • 読了。

  • ・シャドーイングについて。英語の音に注意を向けさせることで聞き取れるようになることはあっても、漫然と繰り返しているだけでは効果は薄い。

    ・リーダー自身が英語を話せるかどうかより重要なのは、言語戦略(どの方法でコミュニケーションをとるか)を選ぶ判断力ではないか。

  • 勉強になりました。

  • 就活や企業内の昇進にTOEICが使われること、日系企業内でのコミュニケーションに英語が使われること。グローバル化とは言ってもなんでもかんでも英語使えばいい訳ではないという警鐘を鳴らしてくれた本。敢えて英語ができる人に読んでほしい。

  • ほとんど異論違論の湧かない内容だった。
    つまり、予想された通りの、言い尽くされたような論述だった。
    というかまだ英語公用語が積極的に実施されてないから、
    検証とかのしようもないのかな。

    面白かった点としては、
    「日本と海外の外国語教育についてのトピック」が、
    印象に残った点としては、
    「抽象的なことを英語で話せるかどうかが重要であること」が
    挙げられる。

    この本の書き方で印象に残ったのが、
    参考文献や引用が多種多彩であったこと。
    ブログとか週刊誌とかテレビ番組とか、
    「そんなの根拠大丈夫か?」みたいな元もあったけど、
    多面的なアプローチでそれはそれで良いと思う。

  • なんというか、日本の英語が迷走しているのが分かる本。
    もう少し幅広に考えてもいいのに。

  • 英語にやたらと批判的と感じた。

  • 「英語公用語」は何が問題か・・・そのタイトル通り,問題が様々な形で取り上げられる。しかし,1つ1つの議論が深くない。全体として広く,浅く,「英語公用語」に関連するトピックを話題にして,英語力を重視する企業のデータ,TOEICの試験形式・内容,TOEFLとの違い,ALTをJETプログラムが雇用する問題,日本人教師の役割,英語力+αの問題等について言及しつつ主に著者の私見を披露している形だ。深い議論が見当たらない。「英語公用語」には,言語政策,言語計画等の社会言語学的な理論や枠組み(考え方)がつきものなのだが,本書では一切それらが扱われていない。つまり,そもそも論として,著者は,言語政策としての「英語公用語」を論じてはいないのだ。その点を誤解して読み始めると落胆させられる。言語政策,言語計画としての公用語論は他をあたるしかない。

  • 企業のグローバル化と切っても切れない関係のある「英語」の問題。「国民全員がバイリンガルになるのは無理」「TOEIC900点でも「論議になると、相手の言うことに反論しかつ自分の論を進めることができない」が16%」など、自分の中のビジネスと英語の問題に一定のケリをつけてくれた本。

  • 英語を使って仕事をするってどういうことなのか.
    筆者の意見を交えて論じられています.

    特に英語を学習することの動機づけに関してはよく納得できました.
    「学びにおいては努力と報酬の関係の相関を示してはならない」
    子育てにおいてもいえる大切なことだと思います.

    また大学でやたらとTOEIC対策の授業が多い理由も分かったし,そのことが危惧すべきことであることも分かります.
    知的創造でアカデミックな場である大学においてTOEICの対策授業なんて必要ないはずですね.

    英語で仕事するってどういうことなの?
    そう思った方はぜひ読んでみてください.

  • 英語の間合いや背景知識の不足からディベートが苦手、言いたいことが言えないと感じる人が多い。そもそもそんなに自己を主張しない日本人という時点で、このような理由による英語の苦手意識はより強くなる。語訳の恐ろしさ、語学の学習方法など。小学校での英語教育を導入すればするほど、英語ができる人、できない人に二分化されていくのでは、という論。

    英語をまともに使うには少なくとも8000語が必要らしい。これは意識的に暗記しない限り獲得できない数だそう。

  •  著者は同時通訳の達人で英語教育の権威。国民の母語でない英語を公用語にすれば,英語圏の人たちとの議論で不利になると警鐘鳴らす。言語の多様性を重視。EUでは常識だけど。
     別に通訳者としてのポジショントークというわけでもないだろう。日本人は日本語で考えて,英語は外国語として使えれば十分と思う。(将来的に)皆が同時通訳者レベルになったり,(遠い将来的に)日本語を捨てて英語を母語としたりする必要はないんじゃなかろうか。著者の鳥飼玖美子氏は,ETVの『知るを楽しむ 歴史は眠らない』に出演。http://www.nhk.or.jp/etv22/tue/
     英語公用語論批判に関しては,以前,薬師院仁志の『英語を学べばバカになる』を読んで感想を書いたけど→ http://bit.ly/hDzUWa 英語を社内公用語にする日本企業ってほんとにどんどん増えるんだろうか?

  • 今から30年ほど前になりますが、高校三年生の時に「百万人の英語」というラジオ講座で、同時通訳者が担当しているコマがあり、それをよく聴いていたのを覚えています。近況の写真が載っていますが、当時はもっと綺麗でした。

    それはともかく、昨年からユニクロや楽天で社内公用語を英語にした企業も現れて、英語はできて当たり前という状態を通り越して、できないと大変(クビ)に状況になったような感があります。

    その影響を受けたかどうか定かではありませんが、我社の月1回の定例会議も英語になりました。外資系の東京オフィスであること、本国から1名外国人が赴任してきているからという理由だと思いますが。

    この本では、同時通訳者としても実績があり、英語に関する著者も数多い鳥飼女史が書いたところに興味があり、英語を社内限定とはいえ公用語にすることは何が問題であるかについて書かれていて興味深く読むことができました。

    また、1919年の国際会議までは言語がフランス語が使われていて、それ以来、米英の主張を受けて英語が使われ始めて、通訳が始まったという事実(p39)には驚きでした。

    鳥飼さんに最も元気づけられたのは、p129に書いてあった内容で、発音を頑張るよりも、文法的に壊れていない文章を作り出す力、大人が使ってもおかしくない語彙を取り出して使う力、聞いていて相手が理解できるような論理構成で話す力が大事であると断言してくれたことでした。

    以下は気になったポイントです。

    ・英語を基盤とした表現の階級構造として、特権階級(ネイティブ)→中流階級(第二言語話者)→労働者階級(英語を外国語として使う人)→沈黙階級がある(p27)

    ・日本からの留学生減少は喜ぶべきことでないが、日本企業は留学しても就職に有利にならない現状あり(p33)

    ・TOEICで730点(多くの会社員の目標点:p53)を獲得しても、それは仕事で最低限のコミュニケーションをとれるというだけで、議論や喧嘩をしたらネイティブにかなわないという現実がある(p37)

    ・会議通訳が始まったのは1919年のベルサイユ講和会議で、米英が英語使用を主張したから(p39)

    ・トップにたつ人間は、自分で英語を話すかどうかよりも、主張すべき内容を母国語で論理的に話せるかが重要(p43)

    ・日本語を学ぶ外国の人達の動機として、漫画やアニメカルチャーに惹かれる場合が多いが、目立たない動機として、「日本語が出きれば世界中の本が読める」ということである(p44)

    ・ビジネス英語は、商品名、ビジネス用語、経済用語、業界用語を覚えることで、半年から1年で一定レベルへ到達可能、日常会話は2~3年、それ以降の本格的英語=人生や哲学を語り合える言葉は5年かかったというのがマイクロソフト日本法人社長(成毛氏)のコメント(p74)

    ・語学をマスターするには、自分の性格や置かれた状況に見合った方法を見つけて無理なk続けるのが大事、そのさいには、自信を持って、読み書きを連動させつつ発信力を獲得すること(p115)

    ・スラング表現を覚えるよりも、発音をネイティブ並みにするよりも、文法的に壊れていない文章を作り出す力、大人が使ってもおかしくない語彙を取り出して使う力、聞いていて相手が理解できるような論理構成で話す力が大事(p129)

    ・結論や肝心な点、自分の主張を先に述べてから、理屈や説明などの各論に入るという英語的論理構成を知っていることも有効(p131)

    ・自分だけが持っている「付加価値=資格なのか、専門性、職歴なのか」を見つけることは、予期せぬことに対応し、多様性の中で生き抜くためには必要である(p165)

    2011/2/12作成

  • 経済界からの要請で即効性のある英語教育政策を推し進めてきたが、そこで身につく英語は果たして本当に万人に求められていることなのか。

    単なる一つの言語でしかない英語が国際共通語として認知される一方、言語文化の多様性の維持は不可欠だ。

    実効性以外の面で英語教育のあり方を捉え、外国語を通して世界を見ることで、自国文化や母語を客観的に見つめることで世界の中のアイデンティティーを自覚することも英語教育の効用であるはず。

    そのことは唯一現場を知る英語教員が声をあげ発信していかなければならない。教員自身の研鑽とその制度的支援の拡充整備も求められる。

    義務教育という形で画一的に英語を教え込む意義を改めて問い直し、その位置付けをはっきりさせること。

  • p.18:語学ビジネス市場の状況について。「スピードラーニング」を楽天が社員向けに販売していることで「スピードラーニング」の販売増とある。
    → なぜ楽天は「スピードラーニング(笑)」を導入した?そしてなぜその事をスピードラーニングのCMでは言及しない?

    p.24:津田幸男先生は英語に支配されているのを気付かずにそうされている日本人を「幸せな奴隷(happy slave)」とわざわざ英語付きで説明しているが、これこそ「幸せな奴隷」では?

    p.35:「自らの言語を軽視したり粗末に扱ったりすることになりかねない」とあるけど、これはマクロorミクロ視点?

    p.36:「日本人の英語はNSの英語には太刀打ちできない」とはどのような状況を思い浮かべて述べているのか?

    p.140:「中国・韓国のTOEFLスコアが高いのは、読解で点数を稼いでいるから」知らなかった。読解とはreadingのこと?


    Oral Proficiency Interview, The American Council on the Teaching of Foreign Languages
    http://www.actfl.org/i4a/pages/index.cfm?pageid=3348

  • “もっともやなぁ”と思うところがたくさんある内容だった。

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著者プロフィール

立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科教授(研究科委員長2002-2005、2008-2010)を経て立教大学特任教授、立教・異文化コミュニケーション学会(RICS)会長(2009-2011)。著書『通訳者と戦後日米外交』(みすず書房2007)(単著)Voices of the Invisible Presence: Diplomatic Interpreters in Post-World War II Japan(John Benjamins, 2009)(単著)『通訳者たちの見た戦後史――月面着陸から大学入試まで』(新潮社2021)(単著)。

「2021年 『異文化コミュニケーション学への招待【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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