グランド・ミステリー (KADOKAWA新文芸)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 108
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (585ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048730891

作品紹介・あらすじ

昭和十六年十二月八日、真珠湾攻撃、日本軍が歴史的勝利を収めた直後、空母「蒼龍」に着艦した九九艦爆搭乗員、榊原大尉が操縦席で不可解な服毒死を遂げた。伊号潜水艦先任将校、加多瀬大尉は、未亡人となった志津子の依頼を受けて、榊原の死の真相を追いはじめた。やがて榊原の行動から「空白の一週間」が浮かび上がった。だが、謎を解く鍵を手にしたのも束の間、突然、志津子が姿を消した。正体不明の鎌倉の研究所。死を宣教する極右団体。未来予知の神秘的異能を持つ男。加多瀬自身の脳裡に巣くう、砂に侵食されたヴェネチアの風景。運河の岩壁に刻まれたラテン語の文字は何を意味するのか?錯綜する謎の糸は加多瀬を時空を超えた迷宮へと導き、そして戦局はミッドウェーへと雪崩れ込んだ。純文学界のエース、奥泉光の剛腕が炸裂する20世紀最後の大作。怒濤の1600枚書き下ろし。

感想・レビュー・書評

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  • 最近、比較的平易な文章で一気読みできる小説ばかりだったので、久々の奥泉ワールドではジックリ文章を読む楽しみ方を思い出させて貰いました。
    既に、何冊もの奥泉光小説を読んだのちの事なので、一分節約200文字が、「...で、とはいえ...だから」、と延々と続く一つの文として表現される形式には随分と慣れたものの、だからと言って本文中に引用形式で出てくる短く小気味よい手記などの文章とが交互に使い分けられる事で、常に変調する文章のリズムに対応することにやや苦労しつつ、しかしこの表現の使い分けこそが、奥泉光小説の深淵なファンタジー性を支えている重要な表現法であることを認めた段階で、ある程度読む早さを犠牲にしてでもジックリ読み込みたいという気にさせてくれる本だと改めて実感するのである。(と、奥泉表現を真似てみる)
    第二次世界大戦と、それを無かったがごときに現代を楽しむ人の本性に対する痛烈な批判精神に基づいて書かれた小説という点で「永遠のゼロ」との共通点だと思いますが、戦争中の出来事の臨場感と、それを様々なストーリー展開で上書きして行くファンタジー性は、時系列を整然と再現して行く「永遠のゼロ」とはまた違った意味で楽しむことができた。
    しかし、結構読むのに時間のかかる本でした。コスパが高い通勤本です。

  • 現実と虚構が入り交じり、めまいがした。ミステリーでもあり、戦争小説でもあり、恋愛小説でもあり、ファンタジーでもあり。それにしても圧倒的なディテールの描写。

  • 人生が2本あれば…。

  • 奥泉光の本を1冊!と思ってみたが、どれにしようか悩んだ。
    そして、初めて読んだこの本にしてみました。
    奥泉光の本は、どれを読んでも得体が知れず、キツネにつままれたまま読み終わる。という印象があります。
    なのに、なぜかまたその世界に浸りたくなってしまう。なぜだろう?w
    なるほどよくできてる。と思ったのは「石の来歴」でしょうか。
    その他はいろいろ読んでも、なかなかその真実がつかみきれません。
    禁煙なんていつでもできるさ!とウソブく喫煙者の気分です。

    あ、ちなみに一般の方にはあまりおすすめしませんw

  • 3月17日読了。「このミステリーがすごい!」1999年第7位の作品。第二次世界大戦周辺の不穏当な気配漂う日本を舞台に、潜水艦の先任(艦長)や爆撃機を搭載した空母の整備士らが巻き込まれる、不可思議な運命とは。硬質で重みのある文体とテーマは、どっしりとした読み応えを残してくれる。随所に妄想とも幻視ともつかない謎めいたフラッシュバック的なシーンが挿入され混乱するが、なるほどそういうお話だったか。中盤過ぎまでは文句なく5つ星だが、登場人物たちの運命へのケリの付け方に、ちょっと「美しさ」がない印象・・・。読後感は悪くはないのだが。

  • 戦記、恋愛、パラレルワールド

  •  タイトルにこだわらず、「ミステリー」だと思わず読んだ方がよかろう。

     立派な「歴史小説」である。

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著者プロフィール

作家、近畿大学教授

「2011年 『私と世界、世界の私』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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