- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784048735476
作品紹介・あらすじ
「人は誰でも、死にたがっている」「世界は絶望と悲惨に塗れている」でも僕は戦おうと思うんだ。君との記憶だけを武器にして-待望の書き下ろし長編。
感想・レビュー・書評
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読みやすいし、わかりやすいし、それぞれのキャラクターも個性豊かで魅力的な感じでした。
それぞれが徐々に繋がっていく感じが良いのですが、あまりに人が簡単に死ぬものだから、現実世界もそうなんじゃ?と思ってしまい、好きなテーマではなかったかなぁ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「昆虫って何種類いるか知ってますか?」「百万種類ですよ。種類だけで。で、新種が見つかります。未知のものを含めれば、一千万種類はいるんじゃないか、と言う人もいますよ」
自分の周りに知らない世界が無限にあることをわざわざ昆虫の世界で表現しているのに笑ってしまう(蟬が登場しているからであろうが)。でも、自分の住むこの世界にも殺し屋の世界が当然に含まれているかと思うと笑ってはいられない。
殺し屋の物語であるが、それぞれの登場人物が、特徴的で少しボケているため憎めず、重く感じない。また、殺害方法が、専門に分化されていて、殺し屋界隈では名が通っていて確立したステータスを有しているのだが、私の住む世界とはあまりにも異なるため、別の社会として切り離してしまっているせいで本作に恐怖感をいだくことがなく、逆に次の展開に関心を持って読み進めることができる。
本作は、鈴木、蟬、鯨を語り手として、交互に話が進み最後に3人がつながる。
元教師の素人・鈴木が妻が殺された復讐のためにその犯罪者がいる殺し屋の世界に潜入することから物語が始まる。しかし、この復讐を計画する鈴木という男は、お人好しで、少し間抜けな設定である。とてもじゃないけど、彼に復讐計画は立てれないし、まかり間違っても復讐が成功するはずはないだろうと思ってしまう。しかも、そもそもこんな世界にこの一般人がどうやって入り込めたのか、不思議に感じ、少し無理があるようには感じたものの、一般人が殺し屋とどのように関わって、復讐を成し遂げるのか、成し遂げはしたものの鈴木も最後には亡くなるのか?と思い巡らせて読むことができた。いずれにしても殺し屋・蟬と鯨が鈴木にどのように関わっていくのかが本作のキーであると考え読み進める。
鈴木は妻を『フロイライン(令嬢)』という非合法な会社の社長の息子・寺原長男により殺害される。復讐のためにこの会社の契約社員として潜入した鈴木であったが、会社には復讐目的で入社したことがバレており、上司の比与子に誘拐してきた男女を殺すように試されている。その時、目の前で復讐のターゲットである寺原長男が誰かに押されたはずみに車に轢かれるのを目撃する。そして、鈴木は、この『押し屋』を追うように指示される。
人を自殺に追い込むことが専門の殺し屋・鯨は、政治家・梶から秘書を自殺させるように依頼を受けるが、秘書を、自殺させる依頼をしたことがバレるのを恐れて、梶は岩西に鯨の命を狙うように依頼するが、蟬が来る前に梶を自殺させる。そして鯨の殺害するはずだった蟬を確認するために岩西を自殺に追い込んだ後、蟬の向かっている場所に向かう。
蝉は岩西の受ける殺人依頼に従う殺し屋で、ターゲットをナイフを使い容赦なく斬り殺す専門である。
蝉は鯨の殺害を岩西を通じて梶から依頼されるも約束の時間に遅刻してしまう。この間に梶は、鯨によって自殺に追い込まれてしまい、依頼を遂行することができなかった。
それを寺西から責められることを恐れ、押し屋の正体を知る鈴木を令嬢から横取りすることで手柄を立てようと目論むが、この安易な考えが、私の持つ蟬のイメージらしくてよかった。
こうしてバラバラだったはずの三人の思惑が交差し、繋がっていく。
また、「鯨」、「蝉」という名前とその体格、性格が一致しているのは、作者の意図であろうが、そのため、当時人物をイメージすることが容易であった。
そして、影の主人公・槿も『押し屋』であり個性的なキャラクターだが、名前に一致しているかどうかは別として、なんとなく善人のように見えてします。
少々無理を感じる設定と、面白くしようとして意味がわからない場面があるにしても、登場人物の個性的で憎めないキャラクターと展開のテンポの良さに、あっという間に読んでしまった。 -
新刊『777』を図書館が新規購入してくれたら早目に借りられそうなので、今のうちに復習をしておく。
『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX』全て5年前に読んでいる。
色々と描写が怖いので、そういうところは薄目で読み飛ばした。 -
比与子は、無知な生徒に社会の仕組みを教えるかのような、丁寧な口調になった。「例えばさ、昔、どっかの銀行が潰れたじゃない」
「どっかのね」
「それが結局、何兆円もの税金をつぎ込んで、救われているわけ」
「それが?」そもそもこれは何の話だっか、と見失いそうになる。
「そうじゃなかったら、あれ、雇用保険ってあるでしょ。会社員が納めてるやつ。あれのうち、何百億円も、無駄な建物の建設に使われているって知ってた?」
「ニュースで聞いたかも」
「何百億円もかけて赤字しか出さない無駄な建物を造ってるわけ。変でしょ。そのくせ、雇用保険の財源が足りないって言うんだから、腹が立つと思わない?」
「腹はたつけど」
「それなのにさ、そういう無駄遣いをさせた奴は罰せられない。何百億円、何兆円の税金を捨てても怒られない。おかしいでしょ。なぜだか分る?」
「国民が優しいから?」
「偉い奴らが黙認しているからだって」比与子は人差し指を立てた。「世の中は、善悪じゃないんだから。ルールを決めているのは、偉い奴らでしょ。そいつらに保護されちゃえば、全部問題ないってこと。」(略)
伊坂の面白さは、一見何のつながりもないようなこのような会話から、物語が端緒が生まれるところだったり、切れ味鋭い社会批評が聞けるところだったりするところではある。
最初は、このような「偉い奴」が表のルールで跋扈する社会の中で、裏で彼らを始末する「闇の仕掛け人」の話かと思った。自殺をさせる「鯨」、ナイフの名人「蝉」、交通事故で人を殺す「押し屋」が次第と連帯を見せて、「鈴木」さんを狂言回しにしてやがて「巨悪を倒す」話なのかと思った。ところが、現代では「仕掛け人」なんて流行らないんだとばかりに殺し屋同士が殺しあう話になった。
この作品の発行は2004年だ。伊坂の社会を見る目は「まっとう」だと思う。一方では、伊坂はけっして社会をどうこうしようとは書かない。闇の仕掛け人を活躍させて、せめて庶民に憂さは晴らせるような方向も目指さない。伊坂が描くのは、結局社会の巨悪を説明しても「(見逃すのは)国民が優しいから」と呟いてしまう鈴木さんのような庶民の右往左往と、殺された可愛い奥さんのために命をも投げ出す鈴木さんの「愚かで小さな決意」なのである。
伊坂作品で、鈴木さんが生き残るのは偶然じゃない。それこそが伊坂幸太郎の「小さな決意」だと思う。 -
伊坂さんの本は今まで読んだもの全部面白かった!で終われるんだけど、こういう人の死にかたはいかんですよ?と思いながら読むので中盤くらいまでなかなかこの世界観にハマれなくて
どうしよう…初めて伊坂さんの作品でいまいちって思うかもしれない…
と不安になりながら読み進める日々
安心してください
中盤から後半にかけてだんだん面白くなってきて
うん、それなりに面白かった!
で読み終えることができました
本当に良かった
本当にこんな世界があったらぞっとするけど無いとも言えないんだよなと思いつつ
無いことを願うしかない -
かなり前に1度読んだのですが、マリアビートルをまた読もうと思ったので、先にこれをと再読。あっさり描写されているけれど、結構内容はえぐいですよね。そして映画はもっとだったように思います。最後なかなか電車が途切れないのは幻覚ではない?
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復讐したいお人好しの男と3人の殺し屋の物語。
これまで接点のなかった4人がどんどん繋がっていく。
でも、ちょっとわからなくて他の人の感想とか見てみたら…え?そうなの?って未だにモヤモヤしているのです。とりあえず近いうちに『マリアビートル』も読んでみたいと思ってます。 -
凄まじいとしか言いようがない。マリアビートルも読まなくては。