墓頭

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784048741132

作品紹介・あらすじ

1955年。頭に、双子の片割れの死体が埋まったこぶを持って生まれ、周りの人間を次々と死に追いやる宿命を背負った男-ボズ。異能の子供ばかりを集めた福祉施設「白鳥塾」に収容され育つが、そこで出会った少年少女-ヒョウゴ、シロウ、ユウジン、アンジュらによって、ボズの運命は大きく変わっていく-。70年代の香港九龍城、80年代のカンボジア内戦を経て、インド洋の孤島での大量殺戮事件にいたるまで-底なしの孤独と絶望をひきずって、戦後アジアの50年を生きた男の壮大な神話が、いま開幕する。

感想・レビュー・書評

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  •  頭に双子の片割れの死体が入った大きなこぶを持って生まれた男。誰もが目を背けるそのこぶのせいか、周りの人は次々と死んでいく。彼自身の存在が墓だということで、名前のない彼は墓頭と呼ばれる。その墓頭の人生のお話。
     特殊な才能を持つ子供が集められた「白鳥塾」で仲間と出会い、墓頭の人生は更に紆余曲折を極める。

     かなりグロテスクな表現も含みます。どうしてこんな酷いことを次々とするんだろうと理解に苦しむことも…。でも、墓頭自身は憎めない。

     アジア全土に及ぶ、白鳥塾の面々と墓頭と、それに群がる組織とが壮絶な悪事や闘いを繰り広げる。毛沢東やポルポトまで絡んできて、圧倒的なスケールで物語は繰り広げられます。

     ものすごく引き込まれる時もあれば、もういいやと投げやりに読んでしまう時もあり、長編で苦労しました。それでも、やめられないこれまでに目にしたことのない世界の連続…。

     最後はあまりすっきりとはしなかったですが、墓頭の生まれた時からの苦悩や、こぶのせいで諦めていた世界への憧れ、人を不幸に巻き込んでしまう恐怖、そんな中でも大切に思った数人の人々との記憶などを回想し、ただのグロテスクで悪にまみれた世界だけではない、墓頭の運命を感じ、読後暫し茫然としてしまいました。

     はっきりと理解はできていないのですが、何かすごいものを目にしてしまった…と今までで一番圧倒された一冊でした。

  • 「生まれながらに彼は墓だった―」
    という、非常に印象的なフレーズから始まる、双子の片割れの死体を頭の瘤の中に納めて生まれ落ちた、名もない「墓頭(ボズ)」という通称で呼ばれた男の数奇な半生を聞き語りで描く不思議なストーリー。

    はじめはちょっとファンタジー色が強いのかな、と読み始めたのですが、あっという間に、ここ数十年のアジア諸国のきな臭い独裁者達やテロなどと複雑に絡みあって、ボズの足取りを中心に、舞台はアジア全土を駆け巡る壮大なスケールに広がっていきます。

    ボズを取り巻く人々も、それぞれが数奇な生い立ちを持つ人ばかりなのですが、彼の唯一の理解者であると自認してやまないピカという男の一見理路整然としているかに見えて実は破綻している行動が、物語をどんどんと血なまぐさいものにしていきます。

    中盤の、ピカが過去の学友達を虐殺していく様は、かなり描写がエグいので、そういうのがダメな方は本当に読むのがツラくなる部分がかなりあります。
    ですが、この作品をラストまで読みきると、
    「もしかして、この話は、壮大なメメント・モリなのではなかろうか」
    と思ってしまうのです。

    引用文に使ったピカのセリフは「死を思え」とずっと心の中から叫び続けているようでなりませんでした。
    ボズの頭の瘤の中の死のモチーフでもある「死体」を取り出すことによって、彼は死というものを超え、さらなる向こう側に臨むつもりだったのかもしれません。

    これだけ現実離れした血なまぐさい話ではありますが、ラストはきちんとカタルシスが得られるようなエンディングになったのも、作者の力技だなぁと感じました。
    ネタバレが過ぎるといけないのであまり書きませんが、ピカとボズにも特別な存在の位置にあったシロウの言葉がキーワードでしたね。その辺りもスッキリというか、血で汚れた池で溺れている中に差した一筋の光明と言うべきでしょうか。

    ものすごく異質な雰囲気、現実から乖離した設定(ですが、近年アジア諸国の暗い歴史とリンクしている部分も多い)、中盤のエグい虐殺の描写、など、苦手な人は本当に苦手な話だと思うのですが、ワタシ個人的には読んでいてものすごく惹きこまれました。面白かったです。

    こういうの、ギリギリファンタジーなんですかね、うーん、ちょっと位置的には難しいです。伝奇小説、と言い切ってしまうのも乱暴だし…(笑)
    個人的には好きな作品ですが、異形のボズの風体とか、九龍城の丁々発止シーンとか、近年アジアの独裁者達が実名で登場したり、エグいシーンがあったりと、映像化はすごく難しいかも…。

    苦手でない方はぜひ読んで、そのなんとも異質で不思議なメメント・モリの世界に浸ってみて下さい。

  • 途轍もない世界観に圧倒されっぱなしだった。

    最後の最後まで読者の裏をかくストーリー構成は感嘆に値する。

    戦後の世界の闇を象徴する毛沢東やポル・ポトなど、史実と重ね合わせてボズが抱える深淵の闇を描くことで、ボズの存在やストーリーがより一層リアルに感じられた。

    ろくでもない世界を、小さな人間が生きなければならない儚さと脆さと、それでも力強く生きることができるということの希望をみせてもらった。

    真藤順丈の世界は本当に奥深い。これからも折に触れて読み返したい作品の一つで会うことができた。この作品を生み出した著者に、心から敬意を表したい。

  • 頭部に奇形嚢腫がある男。
    死体を体内に抱える=生きた墓だととらえ、関わる人間は死に至るという呪縛の中、生きていく。
    人間の邪悪さ醜さに巻きこまれ、体現しつつ、答えを探して生きる。ただ生き続ける。
    とにかく圧倒された。

  • 真藤順丈氏の2012年作品。
    顔の上に大きなコブ、コブの中には生きて産まれなかった双子の兄弟の死体、死体と生きている呪いか周りの人間にも死が訪れるという不幸体質を持った少年の物語。
    物語が始まった途端、怪奇なムードとグロテスクな雰囲気に引き込まれます。

    素晴らしいホラー小説だと読み進めていくと、少年が成長して青春期の物語になると様子が一変。熱く激しい青春物語になります。
    こうなると、もう、ジャンル分け不可能。
    花村萬月作品のようでもあるし、船戸与一作品のようでもあるし、ホドロフスキー映画のようでもあるし、、
    いやいや、やっぱり何者にも似ていない、圧倒的な個性のある作品です。
    グロさもヴァイオレンスさもあるし、決してハッピーエンドとは言い切れないのに、読み終わって胸が温かくなるこの感じは何でしょう。
    初めて味わう読み心地でした。

  • ものすごい作家を見つけてしまった。圧倒的な展開にただ呑みこまれ、流されていった。500ページの大作なんて今まで読んだことがなかったけれど、飽きるどころか終わりまで抜け出せなくなっていた。別の分野の4つの賞を獲ってデビューしたのは伊達ではない。普段綺麗なストーリーばかり読んでいるが、電子書籍の割引チケットがあったので、思い切って普段絶対読まない本をと思い、購入したが、大正解だった。新藤順丈さん、しばらく追いかけてみよう。 

  •  謎は謎のままでいい。
     一応解かれた謎は、あまりに心地よくないか。
     混沌混乱のままなら五つ星かも。
     けれど、瘤は本当に分かりやすく、解放されたのか。

  • 頭部に出産前に亡くなった双子を結合?内包?したまま生まれてきた男の数奇な人生
    うーん、真藤先生はこういうのも書いてたのか…

  • 頭の中に死体を持つ男の話。
    作者頑張ったなってくらいの大作。
    ただ好みは別れるかと。

  • 無駄に長くて読みにくかった。ボズにも全く魅力を感じず残念な作品

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著者プロフィール

1977年東京都生まれ。2008年『地図男』で、第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞しデビュー。同年『庵堂三兄弟の聖職』で第15回日本ホラー小説大賞、『東京ヴァンパイア・ファイナンス』で第15回電撃小説大賞銀賞、『RANK』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞をそれぞれ受賞。2018年に刊行した『宝島』で第9回山田風太郎賞、第160回直木三十五賞、第5回沖縄書店大賞を受賞。著書にはほかに『畦と銃』『墓頭』『しるしなきもの』『黄昏旅団』『夜の淵をひと廻り』『われらの世紀』などがある。


「2021年 『宝島(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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