失踪

  • Gakken
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054007970

感想・レビュー・書評

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  • 2014/1/15購入
    2020/1/1読了

  •  今回もベトナム戦争。
     「僕が戦場で死んだら」では、彼の体験が直接書かれていた。
     「カチアートを追跡して」ではカチアートという不思議な人物を使い、幻想的にベトナム戦争を表現していた。
     「ニュークリア・エイジ」では変質的に核を恐れる人物(考えてみるとまともな人間なのかも)を登場させ、彼の恐怖を通してベトナム戦争とは何かを表現していた。
     今回はベトナム戦争へ参加し、虐殺に加わり、戦後その体験を隠して生きてきた人物を登場させる。

     物語は選挙に落選したジョンが妻と人里離れた湖畔のコテージに引きこもっているところから始まる。そして、妻キャシーがボートと共に行方不明になり、その事件を中心にして物語は進んでいく。
     ベトナム戦争と行方不明の妻のことが僅かに形を変えて、繰り返し繰り返し、しつこい位に描かれている。

     小説の中にでてくる虐殺は実際にあった話で、「ソンミ事件」といわれている。有名な事件で、ニュークリア・エイジの中でも出てくる。こういう問題を数字で表すのはどうかと思うが、殺された人数についてはアメリカ軍の数字は109名、ソンミ村の記念碑に刻まれた数字は504名となっているようである。小説ではこの虐殺の場面が描かれているが、とにかく酷い。実際に見ているわけではないのに、目を覆いたくなった。

     ティム・オブライエンは様々な表現方法でベトナム戦争を書いてきた。彼は作品全てを使ってベトナム戦争を表現しようとしている。しかし、彼の視点は常にアメリカの側からのものに過ぎない。彼はアメリカ人であり、ベトナム戦争に従軍し、アメリカ人としてアメリカ人のやったことを考え、明らかにし、人々に問い掛けるしかない。それはそうなのかもしれないが、自分は、どうしてもそこにアメリカ人の傲慢さを感じてしまう。凄い人だし、偉大だと思うが、感情的な面で彼のそういう所が好きになれない。
     
     それでも彼の作品を読まずにはいられないし、彼の作品には考えさせられることが多い。

  • ベトナムに取り憑かれている物書き。
    これは今までとは作風が違う。
    しかし、そこにもベトナム。

  • 大統領選のような戦争のような。

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著者プロフィール

(Tim O'Brien)1946年ミネソタ州生まれ。マカレスター大学政治学部卒業後、1969年から1年間ベトナムで従軍。除隊後ハーヴァード大学大学院博士課程で政治学を学び、1973年に自らの体験をもとにしたノンフィクション『僕が戦場で死んだら』(中野圭二訳、白水社)を出版。『カチアートを追跡して』(生井英考訳、国書刊行会)で1979年に全米図書賞を受賞した。他の著書に、『ニュークリア・エイジ』(1985年)、『本当の戦争の話をしよう』(1990年)、『世界のすべての七月』(2002年、以上村上春樹訳、文春文庫)、『失踪』(1994年、坂口緑訳、学習研究社)などがある。

「2023年 『戦争に行った父から、愛する息子たちへ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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