ボクの彼女は発達障害―障害者カップルのドタバタ日記 (ヒューマンケアブックス)

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  • 学研プラス
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784054057067

作品紹介・あらすじ

聴覚障害の彼氏と、広汎性発達障害の彼女、二人の毎日は大騒ぎ! 発達障害の彼女との日常やさまざまなトラブルを彼氏からの目線で描いた、笑いあり涙なしのコミックエッセイ。彼女から見た「発達障害者から見た日常のイメージ」マンガは目から鱗の内容。

感想・レビュー・書評

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  • 発達障害を扱ったマンガの傑作『アスペル・カノジョ』からたどりついた本。
    『アスペル・カノジョ』の感想を検索していたら、著者のブログ記事(下記)がヒットしたのだ。

    https://kurage-official.com/2018/12/04/post-3578/

    2013年に発刊された本書は、著者もブログで言うとおり、『アスペル・カノジョ』の先行作といってよいだろう。
    話の方向性は違うので、『アスペル・カノジョ』が本書のパクリというわけではない。そもそも、あちらはフィクション、こちらはノンフィクションだ。
    しかし、発達障害によって生きづらさを抱えたヒロインを、恋人が〝理解したい。生きづらさを軽減してあげたい〟と悪戦苦闘する……という骨子は同一である。

    タイトルに「障害者カップル」とあるのは、著者も進行性難聴を抱えた聴覚障害者だから。

    「『明るい』発達障害本を目指した」と、著者は言う。
    なるほど、発達障害を扱いながらも、深刻すぎないエピソードがおもに選ばれており、クスクス・ニヤニヤ笑いながら楽しめる本になっている。

    対照的に、『アスペル・カノジョ』はヒロインが深刻なイジメと虐待を経験しており、しばしばそのことがフラッシュバックして希死念慮にとらわれるというヘビーな内容である。
    「話の方向性は違う」と書いたのは、そうした違いゆえだ。

    それでも、発達障害ゆえの生きづらさの描写にはかなりの共通性がある。
    最大の共通項は、本書の著者「くらげ」氏と、『アスペル・カノジョ』の主人公・吉井が、「発達障害の特性を理解したうえで適切な支援をしよう」とする「アセスメント」の姿勢を豊かに持っていること。

    パートナーが熱心な理解者・支援者であったことが、本書のヒロイン・「あお」さんと、『アスペル・カノジョ』のヒロイン・斎藤恵の幸運といえる。
    そのようなパートナーに恵まれないまま、一人で生きづらさを抱えている発達障害当事者も多いことだろう。

    本書は、著者のエッセイ・寺島ヒロによるコミックエッセイ(著者のエッセイのエッセンスをマンガ化したもの)・監修者の梅永雄二による解説が交互に登場する構成だ。
    そのような三段構えになっていることで、発達障害に対する理解が自然な形で深まっていく。

    発達障害入門として秀逸な一冊。

  • Twitterでフォローしている方の本だったので、アマゾンで予約して楽しみにしていた。
    くらげさんの、あおさんに対する愛情がじっくりと伝わってくるとてもよい本だと思う。
    それは、障害がどうとかいうことではなく、好きな人のことだからなんとか理解したい、仲良くしたい、うまくやっていきたい、というとても根源的な欲求が描かれていたからだと思う。

    私は診断を受けていないけれども、あおさんのこだわりはなんとなくわかるような気がするところが多い。
    同じものにこだわること、あいまいな言い方が通じないこと、化粧の意味がわからないこと、そして子どもが怖いこと。
    発達障害はとてもバリエーションが多いから、完全に同じということはない。それでも、共通するものはあるわけで、私は特に、化粧と子どもに関する項目では、「そうそう」とうなずくことが多かった。
    今では、そういうもんだと納得して、最低限の化粧をするようになったけれども、ホントのことを言えばいまだに、顔にいろいろ細工を施すことの意味はわかってない。洋服も、ひらひらした可愛い女の子の服は着られない(いろんな意味で)。
    子どもが怖い、というのは目からうろこだった。私は子どもが嫌いなのだとずっと思っていた。スーパーやファミレス、電車、劇場などで突然大声をあげたり、走り回ったりする子どもに対する強い感情は「嫌悪」だと思っていたのだが、もしかしたらあれは「恐怖」だったのか、と思いあたった。
    子供の声だけでなく、突然の大音響などは非常にドキドキする。

    この本は、発達障害を勉強するためのものではない。描かれているのはあくまでもあおさん個人の状態である。
    私がすてきだなと思ったのは、そんなあおさんを理解しようと努力しているくらげさんの姿だった。こんなに大事にされるあおさんが羨ましい。
    好きな人のことだったら、なんとか理解したいと思うし、相手を喜ばせたいと思うものだろう。そこが描かれているから、読み終わったあとにほのぼのするんだろうと思う。

    星が一つ少ないのは、もっともっといろんなエピソードを読みたかったから。読者のわがままです。

  • この本はとーってもおススメです!

    近年、コミックエッセイが大流行でたくさん出版されてますし、発達障害を扱ったものも多いのでワンノブゼムとして流されがちかもしれませんが、この本はぜひ多くの方に読んでいただきたいです。

    私は、心身障害や発達障害をテーマにした漫画、コミックエッセイを何冊も読んできましたが、この本は本当に本当にいい本だと思います。

    障害をテーマに扱った場合、マンガやコミックエッセイの方が伝わりやすいような気がします。臨場感というか、作者の方が感じたことや登場人物の心が手に取るように理解できる気がします。

    著者(原作者?)の「くらげ」さんの彼女である「あお」さんは広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)の診断を受けた方だそうですが、大人になって出会った著者から、医師に相談することを勧められるまでは、生活上の不都合は多少感じながらも、自分が発達障害とは全く思ってなかったそうです。

    例えば、
    ・熱がりながら5月中旬までは冬服を着続け、寒がりながら11月中旬までは夏服を着続ける。
    ・特定のいくつかのお店で特定のものを食事にとりがち。
    ・一度覚えた道を最短距離かどうかに関わらずずーっと使う傾向にある。
    ・買い替え時に同じタイプの服や靴を選び着用し続ける・触感に非常に敏感で、化粧だろうがリップクリームだろうが肌に塗るものはダメ。また特定の肌触りのものしか着られない。
    ・視覚過敏や聴覚過敏があり、強い光や大きな音、ひどい雑音に弱い。
    ・あいまいな表現が理解しづらい。具体的に言われれれば理解できる。
    ・オブラートに包んだ物言いができない。全てストレートに話してしまう。
    ・他人から言われたことを頑なに守ることがある。また他人の言ったことを疑えない。
    ・他人の顔の認識が下手。
    ・他人の言ったことは、一度頭の中で文字化しないとうまく理解できない。字幕などはとても分かり易い。

    彼女が単に気づかなかっただけと言えるかもしれません。アドバイスをしてくれる人が周囲にいなかっただけとも言えるかもしれません。でも、あおさんが他人に言われて診断を受けるまで特に支援を受けずに生きてきていたということは、発達障害というのは、いわゆる「定型発達」と言われる発達障害の診断が出ない多くの人と少し違うだけなのであり、何ら特別なことではないということではないでしょうか。

    私も、大きな音が苦手(自分の声は大きい癖に(笑))、暗算が苦手、寝具や衣類の肌触りがとても気になる、日焼け止めやリップクリームは無理、(あおさんとは逆に)毎日違うものを食べたがる・違う道を通りたがる、結構ストレートにものを言ってしまう。。。などいろいろな特徴があります。

    程度は違えども、誰しもクセや変わったところはあるでしょう。その特徴が強く出てしまう時に、生きづらさにつながったり、他人から見て変わってると映ってしまうだけなのだと思います。

    前からいつも言ってますが、「発達障害」というものの考え方は、ある人の特性や困りごとをよりよく理解して、他からの支援が必要なのか、どのような支援が必要なのかを見出す手段にすぎないのであって、社会から排除したり、遠ざけたりするためのレッテルでは決してありません。

    また、あおさんが診断が出たことについて、脳の働きからできないことがあるだけで、努力不足ということではない、開放された、と言っているように、他人から怠けとか努力不足だと言われてきた人の気持ちを楽にしてくれるものでもあります。

    もちろんできるのにやらない、努力しないという人や場合もあるかもしれませんが、少なくとも他人を良く見もせずに、頭から、努力が足りない奴だ、又はKYだなどと決めつけるのは良くないということでしょうね。

    私は「みんな違って、みんないい」はあまりにも安易すぎて好きになれませんが、お互いがもっとお互いをよく見て、良いところも悪いところも得意なことも不得手なこともある、という前提で補完し合う社会を目指したいですし、そこにおいて教育はさらに何を改善し、工夫すべきかをもっと勉強せねばと思います。

    ちなみに本書のところどころに出てくる、監修者である宇都宮大学の梅永雄二先生が書かれたコラムも、大事なことが簡潔に書かれていてとても参考になります。

  • ツイッターで知って、楽しみにしていた本。
    大人になってから広汎性発達障害と診断をうけたあおさんと、彼氏で人工内耳装着中のくらげさんの日常のお話。
    あおさんの日常は本当に困難なこと多くて、子どものころから大人になるまで、よくがんばってきたなと思った。

    耳が聞こえない人に、「子どもの声を『しっかり聞いて』愛情を持って」というのは難しいでしょ? というふうに、くらげさんの聴覚障害を例にあげて、発達障害での困難さを言いかえているのが分かりやすかったです。

    発達障害の人の困難さって、本当に人それぞれで、その人の困っているところが何なのかを知るのって、本当に難しい。
    学校でも、発達障害の子の困っているところを知るには、とても注意深い観察がいります。難しいです。

    今年度の中学校区の教育相談のテーマが、「発達のグレーゾーンの子の早期発見早期対応」です。小中学校で発達障害を見過ごされてきた子が、高校・大学で不適応を起こすケースが多いそうです。
    あおさんも、大変な学校生活を送ってきたのだろうなと思う。
    小学校でも、「なんか特性がありそう」というのは分かるのだけど、それをきちんと見極め、個別の支援にまでつなげていくのは簡単じゃない。
    だからこそ、教育相談の体制を整えて、特別支援にもしっかりとつなげる。ちゃんと学校がシステムを作って、困っている子たちの力になれるようにしたいです。

    ということで、隣の小学校の養護教諭の先生の分と2冊買いました。

  • 2019/04/06

  • 聴覚障害のボク、くらげさんと発達障害の彼女、あおさんの障害者カップルの日常。私にはこんなことはないけど、これは言ってそう……など似ていないけど、こんなことは言ってるかも!というところがあって、面白おかしく読みました。彼が発達障害にとても理解のある人なので、羨ましいです!

  • くらげさんと、あおさんのラブラブ日記。

    聴覚障害のあるくらげさんと、発達障害のあるあおさん、ふたりの日常がマンガとエッセイで描かれています。
    ふたりとも、お互いのことが本当に大好きなんだな、と感じました。

    言葉によるコミュニケーションが、キャッチボールではなくドッチボール、というのは言い得ているなと思いました。

    障害云々、ではなく、相手のことを大切に思うこととか、愛おしく思う気持ちとかがあたたかさとともに伝わってくる作品でした。

    お2人が末長く幸せでありますように。

  • 障害者カップルというちょっと自分とは違う観点からの発達障害者へのアプローチ。
    すごく参考になった。
    著者が世間に知られるきっかけ、本を出すことになったきっかけがツイッターというのも時代だなぁ。

  • 2019/05/20読了

  • 大人になるまで診断されてなかったというのは、苦しかったろうな。
    生きづらかったろう。
    でも、それが普通なら、辛いことすら気づかなかったかもしれないし、辛いと思っても、どうしてそうなるのか分かんなかったろう。
    私自身も訳の分からんこだわりを持ってる。
    自分自身で自分を変だと思う。
    でもなかなか診断してもらう機会はないよね。
    そんな感じでズルズル大人になっちゃったのかな。
    生きやすく生きられるようになれるといいけど。

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著者プロフィール

進行性聴覚障害者。21歳より人工内耳を装用している。彼女のあおが発達障害があるのが判明し、独学で発達障害について学びつつ、自分の障害の経験をもとにサポートしている。

「2013年 『ボクの彼女は発達障害』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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