二つの陰画 (講談社文庫 に 2-6)

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  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061362154

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  • 櫟夫妻が住む満寿美荘の大家さんが密室で殺された。好奇心が人一倍強い夫婦が早速捜査に乗り出してみると、アパート住人のほとんどに動機が。さらには過去大家さんに関わった人や元アパート住人にまで話が広がり、さて犯人は…?
    事件で重要な意味を持つ電話が被害者にかけられた時間の、容疑者たちの行動から小説が始まります。誰もが何かしらの悩みや不安を抱えていて、どこに今後の事件を解決するヒントがあるか…と緊張しながら読んでいると。いきなり「肉マンとアンマン、何個ずつだっけ?」というのどかな会話が。この落差に笑ってしまい、気負いも抜けてしまいます。聞き込みの途中でも、お茶菓子の取り合わせが変だの、鼻ぺちゃの自分の奥さんの方が魅力的だの、子供が足をくすぐるだの、いかにも生活感漂う描写が溢れていて。事件が解決した後のそれぞれの様子で締め括られるラストにはみんなに清々しい明るさを感じます。この雰囲気がやっぱり仁木さんの魅力です。
    仁木さんがミステリを書くときは、登場人物がその時何をしていて、何処まで知っていて…というのをカードにして分かりやすくしていた、という話がどこかに出ていました。この作品ではその方法の利点が全面に押し出されています。密室にされた理由や怪しげな人物の存在などはそれほど目新しいものではないのですが、それぞれの行動に穴がない。それだけ練ってあったからこそ一見疑わしい行動にも理由が生まれ、夫婦は犯人に気づけた。
    謎解きと小説の面白さ、それぞれを十分に堪能できました。

  • アパートの大家である高利貸しの老婆が殺された。事件の真相を探るのはアパートの住人である櫟夫婦。
    警察そっちのけで情報収集して真実に迫るのが、仁木作品にあるただの一般人というのがいい。
    そして、明らかになる真相も、一筋縄ではいかないっていうのがまたね。良

  • 軽い筆致のパスラー。本筋に無関係な、どうでもいいレベルの機械密室とか意外な動機を持つ人物とかを、あまり長くない中に盛り込んでいるので、少しごちゃつく。ただお話の持って行き方から、犯人はこの人物しかありえないと見当がついてしまう。読み物としては少し退屈だけど、正統派のパズラーはこんなもの。

  • 健介夫妻が住む「満寿美荘」の大家、木岡満寿が殺された。
    満寿が残した遺言状には姪の茅子や甥の均の名前はなく、船村瑠璃子という女性に遺産全額が渡ると記してあった。健介たちは事件解決に乗り出すが、アパートの住人たちにはそれぞれ満寿を殺す動機があって...

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著者プロフィール

1928 - 1986。小説家。ミステリーや童話を手がけ、1957年に長編デビュー作『猫は知っていた』で江戸川乱歩賞を受賞。明快で爽やかな作風で、「日本のクリスティー」と称された。1981年には「赤い猫」で日本推理作家協会賞を受賞。無類の猫好きとして知られる。

「2023年 『不思議の国の猫たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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