武器としての交渉思考 (星海社新書)

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  • 星海社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784061385153

作品紹介・あらすじ

「決断」のつぎの武器は「交渉」!

感想・レビュー・書評

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  • 久しぶりに瀧本哲史本を読む。
    もう新作が読めないのが残念だ。
    既読の本と重なるところが多いが、それでも十分ためになる。

    一見お手上げと思われるような状況での交渉例はとても知的で面白い。

    最高の実例は、セオドア・ローズベルトの大統領選挙戦で、写真の著作権を押さえ損なった状態で、何百万部ものポスターが刷り上がった状況下での、写真家との交渉例。
    「いくらで写真の使用を許してもらうか」、ではなく、「写真家の知名度アップのチャンス、いくら払えるか?」から交渉をスタートし、「大金は寄付できないが、写真で大統領選候補を支援したい」、というレターにサインさせた、というオチ。
    うーん、素晴らしい。
    アンカリングの話。

  • ガイダンスにある言葉、「合意をもたらす手段こそが交渉である」が、テーマであり、「言葉こそが、最大の武器である」が結論です。

    気になることばは、以下です。

    ・ふたりの人間がお互いに同意すれば契約が成り立つことになる。ローマ人は、この考え方を「パクタ・スント・セルヴァンダ」Pacta sunt servanda(同意は拘束する)。現在の法秩序の根本となっています。
    ・この合意を創り出す手段こそがこの本のテーマである「交渉」となります。

    ・交渉とは、前提となるルールそのものを変えていくゲームであるともいえる
    ・ロマンは長期的で抽象的でもかまわないが、ソロバンはできるだけ具体的で、短期的に結果がわかることが望ましい

    ・交渉には、意思決定権をもった相手が存在する
    ・自分がかわいそうだからどうにかしてともっていくのではなく、あなたがこうすると得しますよと提案するのが交渉
    ・相手にいかにメリットのある提案ができるかだ。「どれだけ相手の主張を聞けるか」の勝負だ。
    ・交渉においてとにかくいちばん大事なのは、「相手の利害に焦点を当てる」ということだ

    ・交渉に大切なのは、複数の選択肢をもつこと
    ・バトナとは、相手の提案に合意する以外の選択肢の中で、一番よいもの
    ・コモディティ人材とは、他にいくらでも替わりがいるということです。
    ・交渉というのは結局、情報を集めるだけの勝負である
    ・交渉というコミュニケーションがディベートに比べてやりやすいのは、相手側に直接聞いて情報を集めることができるということです。
    ・交渉のポイントは、たくさん聞いてたくさん提案すること
    ・合意できる範囲のことを、ゾーパという。ゾーパがかさならない交渉は合意に至ることはない。即刻交渉を打ち切ること
    ・交渉をするときお勧めするのは、自分のことだと思わずに、代理人として交渉を頼まれたと、マインドを切り替えてみるといい


    ・アンカーリングとは、最初の提示条件によって、相手の認識をコントロールすること
    ・交渉はスタート地点ですでにある程度の結果が決まってしまう
    ・相手が何かしらの条件を提示してきたときには、それがアンカーリングされないように、この条件の設定自体に何かおかしいところがあるのかどうかを、常に疑ってみる
    ・最初から自分が戦いやすい条件を初期にオファーすることが必要
    ・最終的に交渉の結果得られる果実は、最初に置いた目標以上にはならない
    ・最初の交渉で、自分にあまりにも有利な条件を提示して、あとから「あいつはひどい」「騙された」という噂がたったら、のちのビジネスに悪影響を及ぼす。それはビジネスを長期的に行う上で、きわめて不利益をもたらします。継続的に市場で勝ち続けるためには、あまり暴利をむさぼらないということが重要。
    ・必ず、何かしてくれたら譲歩します。自分は損をこうむるのだから、あなたも何かしらの損をこうむってください。ともっていく。
    ・相手の判断条件を理解するためにも、さまざまな条件付きの譲歩を提示することは有効。
    ・即座に受諾しないことが大切
    ・争点が複数あって、「この争点では譲歩するが、こっちの争点では譲歩しない」というように分けて考えなければならないケースがほとんど。
    ・自分の立場ではなく、相手の利害に焦点を当てる
    ・相手の利害関係を分析・理解し、それを満たしながら、さりげなく自分の要望も実現するのが賢い交渉のポイント
    ・お互いに何が大切なのか?、交渉のそもそもの目的な何なのかという争点を明確にして、交渉にのぞむこと。どれが目的で、どれが手段なのかを明確にすること。
    ・自分にとって重要度は低いが相手にとって高い争点を譲歩し、自分にとって重要度は高いが、相手にとっては低い争点を譲歩してもらうことで、お互いの目的が達成できる道を探る。
    ・直接の交渉相手だけではく、背後にいる人の利害争点にも配慮する
    ・交渉時の注意、2点
     ①沈黙に絶える
     ②相手が情報を出してこないときは、情報をだしてこないことを自体を利用する。

    ・非合理的人間6つのタイプとつきあう
     ①価値理解と共感
      交渉者が相手のその価値感にまったく共感できないときに、大きな問題となる
      合理的ではない相手と交渉するときには相手の価値観に合わせなければならない
     ②ラポール
      行為の返報性
      スモールギフトをおくる
      相手と似た境遇にあることを発見して、それを会話を糸口にする
      相手の好む話し方でつき合う
      共同作業の時間を持つ
     ③自律的決定
      自分で決めたを大切になるタイプ
      相手が自分で判断・決定するための材料を提供することに徹する
     ④重要感
      相手が自分のことを「より重く」「より大切」に扱ってくれることにこだわるタイプ
      とりあえず、相手の話を全部聞く
      ものすごく地道で相手の感情に配慮した営業努力をする
      口だけの称賛は必ずばれる
      相手の嗜好などを把握して、それを満たしてあげることで「この人は自分のことを重要だと思ってくれている」と印象付ける
      顔の表情、声のトーン、立ち振る舞いが雄弁に本心を語る
      できるだけ反応をはやめて連絡を頻繁にとることが大切
     ⑤ランク主義
      肩書を把握して対応を決めるタイプ
      ランク主義にはランクで対応
      人をレベルではなくラベルで判断する
      お前はみどころのあるやつだ、と思われたら勝ち
     ⑥動物的反応
      相手の精神的負担を軽減することを優先する
      できるかぎり交渉の時間を快適な環境にする
      相手のネガティブな感情的な反応には、こちら側はつき合わない
      一見すると自分のロジックがまったく通じない相手でも、その人の「行動原理」というものを見通すことで交渉可能になる
      自分のことではなく、「相手を分析する」ことが、合理的・非合理的な交渉を問わず極めて重要
    ・交渉メンバーが共有すべき3つの注意点
     ①アウトプット 何を達成するか
     ②ドレスコード 非言語的メッセージを与えるものすべてに気を遣う
     ③NGワード 相手に絶対に伝えてはならない機密事項や、発してはいけないワードを共有する

    ・言葉こそが最大な武器である。ふつうに使っている言葉には、すさまじいパワーが秘められており、その使い方を磨くことで、とても大きなことを成し遂げることができるものです。
    ・具体的な「成果を出す」ということにこだわる
    ・地上には最初から道があるわけではない。多くの人が歩けば、そこが道になるのだ。
    ・「他力本願」で改革を願うのは、日本人の特性のひとつ
    ・いろんな場所、いろんな組織に小さなリーダーが現れ、そのときどきで活躍していく。そういうシステムを私は、「群雄割拠型」のモデルをよんでいます。
    ・自分自身が、自分今いる場所で小さいながらも集団をつくり、そこでリーダーとなっていく。

    目次

    ガイダンス なぜ、いま「交渉」について学ぶ必要があるのか?

    1時間目 大切なのは「ロマン」と「ソロバン」
    2時間目 自分の立場ではなく、相手の「利害」に焦点を当てる
    3時間目 「バトナ」は最強の武器
    4時間目 「アンカリング」と「譲歩」を使いこなせ
    5時間目 「非合法的な人間」とどう向き合うか?
    6時間目 自分自身の「宿題」をやろう

  • 自分の立場ではなく、相手の「利害」に焦点を当てる...。合意形成や協調を進めるうえで必要なものの見方、考え方が整理された良書だなあと改めて認識。20代のときにこの本に出会っていたら変わったかなぁ...。40代で手に取った私は既に支援者側に...。未来ある若者に投資しよう!

  • 瀧本さんの著作これでほぼ読んだ。

    なんとなく交渉思考だけ内容が想像つかなくて読んでなかったけど、めちゃおもろいやんっていう。久々にお酒飲んで頭働かんし寝たいから長々とは書かん。

    言葉を磨いて、他者を引き込める力手に入れたい。

    アンデスの職人とスティーブ・ジョブスの話めっちゃすこ。。

    Do my homeworkします。

  • 王様と家来モデル。つまり、トップダウン型の組織は時代の変化に対応できない。
    束縛があって初めて自由が得られる。全員が完全な自由になると、衝突しかえって不自由になる。
    自分達で新しい仕組みやルールを作り、その合意を作り出す手段こそが、本書のテーマの交渉である。
    世の中を動かすのは若者、ただし大人(エスタブリッシュ層)のバックアップは必要。つまり、大人から投資対象と見なされる必要がある。

    常にロマン(夢やビジョン)とソロバン(時間やお金)の両方を考える。
    人を動かすためには、相手に具体的なメリットを提示する。

    交渉はコミュニケーションの一つ。
    1.指令 決断は相手
    2.ディベート 決断は第三者
    3.決断 決断は自分
    4.交渉 決断は相手と自分

    自分のことばかり主張していては交渉にならない。相手の主張を聞く。
    パイを奪い合うのではなく、パイという前提を見直したり、パイ自体を大きくしようとする努力が必要。
    交渉は利害の調整が最大のポイント。

    交渉ではまず、複数の選択肢を持つこと。目の前の選択肢とバトナ。つまり、他の選択肢の中で一番良いものと比較をしながら、交渉を行う。
    バトナがいないとコモディティになる。
    交渉が決裂したらどうなるか。をまず考える。交渉とはとどのつまり、情報を集めるだけの勝負。
    交渉のポイントはたくさん聞いて、たくさん提案する。
    交渉時は自分のことと思わずに、代理人というマインドに切り替えることも一つの手法。

    交渉は最初のアンカリングによって決まる。
    アンカリングの条件は高い目標。現実的。説明可能。
    無条件の譲歩は絶対にしない。
    譲歩する際はもったいつけることで、交渉の満足度を高めることができる。
    交渉の面倒なやり取りが仲間意識を作る。
    自分にとっては重要度は低いが、相手にとっては重要度が高い点を譲歩したり、逆に自分にとって重要度は高いが、相手にとって重要度の低い点を譲歩してもらう。といった道を探る。
    ゼロかイチの思考に陥らない。

    交渉時に沈黙に耐えることは、重要。譲歩の引き出し合いをしている時に忍耐は必要。
    情報が出してこない場合、そのこと自体を利用する。

    非合理的な人間との向き合い方。
    1.まず相手の価値観に合わせる。
    相手の価値観を変えようとは絶対に思わない。
    共通の敵を設定して、共犯関係になる。

    ラポールを築く。つまり、信頼関係を築く。
    その具体的な手法は、相手を好きになること。相手と共通点を見つけること。共同作業の時間を持つ。などがある。

    自律的決定にこだわる人には、判断材料をとにかく提示する。

    重要感にこだわる人には、本心で、丁寧に、敬意を持って、相手に接する。
    反応速度も重要である。

    ランク主義の人には、ランクで対抗する。

    相手を分析することが、交渉ではきわめて重要である。

    言葉には力がある。言葉は最大の武器である。だから、言葉を磨く。

    本書を読み、交渉の見方が少し変えることができた。









  • 相手側にいかにメリットのある提案ができるか。交渉ではくれぐれもそこを考えるようにすること。交渉というのは結局、情報を集める「だけ」の勝負なのです交渉のポイントは「たくさん聞いて、たくさん提案すること」であると、覚えておくこと。本書は前作「武器としての決断思考」に続いて二者間で行われる利害調整「交渉」について語られる。著者の言うとおり人間だけが言葉を話し、言葉によって文化を発展させてきたのである人間にとっては「言葉」こそがすべての鍵であり武器だと思う。いかにして言葉を磨くべきか。ますますモチベーションは高まるばかりだ。

  • 今年は交渉力を高めていこうと思って読んだ本の一冊目。MBAでやったNegotiationの良い復習。バトナを持つ、アンカリング、交渉の焦点を整理する、情報の隠蔽を利用するなどが特に参考になった。とても実用的な内容。

  • 客を儲けさせろ。「(自分たちが)面白いことをやっていれば、お金はあとからついてくる」ではなく、「客が儲かれば、お金はあとからついてくる」と考えるべき。」
    マッキンゼーでは、「Client interest first, money follows」


    「いまのところ、どんな高性能のコンピュータでも代替できない仕事があります。それこそが交渉です。」とな。 2012年6月に出版された本だが、2020年にはIBMによってディベートが出来るコンピュータが出て来ていたし、23年はChatGPTが盛り上がっていて、どうなんだろうと思ったけど、それでもコンピューターでは出来ないと考えていた理由として、「なぜならば交渉には「ロマン」と「ソロバン」という2つの側面があるからです。」と。。。 

  • 交渉の現場で使用される実践的な戦術がまとめられている。著者である瀧本先生が大学で行っている授業をベースにしている、大学生向けの書であるが、社会人が読むにも充分の内容。自分自身、交渉の上で使用するものもあり、納得感がある。
    息子向けに買ってはみたものの、読んでいる形跡がないので、もったいなくて読んだら、めちゃおもろかった。

  • 仕事において、声の大きい人や主張が強い人に押し切られるという自分の弱点を克服したくてこの本を手に取った。
    世の中には交渉を学問として体系的に研究する分野があることも、本を探す中で初めて知った。

    交渉は相手を言い負かす、自分の利益をもぎ取りに行くイメージがあったが、それは誤っている。双方にメリットがあって、納得した上で合意することがゴールだという。

    当たり前の話だが、自分のトークスキルの無さに自信を無くしていたのかも。こちらが冷静さを失わずに、相手の利害に焦点を当てて分析することができれば、恐れることはないのだと少し安心した。

    著者は、若者が自分の頭で考えて、世の中のために声を上げる(適切な方法で)ことを切望している。他の著作も読んでみたいと思った。

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著者プロフィール

京都大学客員准教授、エンジェル投資家、教育者。1972年生まれ。麻布高等学校、東京大学法学部を卒業後、大学院をスキップして直ちに助手に採用。専攻は民法。任期終了後は学界に残らず、マッキンゼーへ入社。3年で独立し、多額の債務を抱えていた日本交通の経営再建などを手がけながら、エンジェル投資家として極めて初期段階の企業を15年以上にわたって支援し続ける。京都大学では教育、研究、産官学連携活動に従事。「意思決定論」「起業論」「交渉論」の授業を担当し、人気NO.1若手教官として「4共30」講義室を立ち見に。各界において意思決定を先導するリーダーを育てることを目標に、選抜制の「瀧本ゼミ」を主宰。著作物やディベートの普及活動を通して、次世代への教育に力を入れていた。2019年8月10日永眠。

「2022年 『瀧本哲史クーリエ・ジャポン連載集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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